結晶成長は原子の長旅
私たちの身の回りには雪や氷だけでなく、鉄やコインのような金属やPCやスマホに使われる半導体は結晶でできています。
結晶の表面について、詳しく見たことがある人はいるでしょうか?
意外と少ないと思います。
当然、結晶は私たちの身近にあるので、まじまじと見れば表面は見れるかもしれません。しかし、ここで紹介する結晶の表面とは目では見えないぐらい小さなナノの世界です。
どうしてナノの世界が重要なのか?たぶん多くの人は興味もわかないようなことでしょう。しかし、結晶の表面は我々が想像するよりももっとユニークな形が潜んでいるのです。
結晶の表面
結晶の表面というと一番小さなスケールでは原子が並んでいるところです。
原子は規則正しく並んでいるんですが、実はそこには平らな広い領域(テラス)と階段状になっているステップと呼ばれるところがあります。
また特に原子が取り込まれるところはキンクと呼ばれます。
おそらく多くの方々は結晶は平らな滑らかな表面を持っていると思われるかもしれません。
しかし実際は上に挙げたようなテラス、ステップ、キンクという領域がそれぞれ存在し、階段や小さな壁のようなものがたくさんあるんですね。
結晶成長と結晶の表面
一般的な結晶の成長は表面から始まります。つまり結晶表面の構造は結晶が成長する(大きくなる)のにとても重要です。
ここでは結晶表面にたどり着いた原子がどうやって結晶内に取り込まれていくのか簡単に紹介してみたいと思います。(ここでは例として気相成長・溶液成長について)
①バルク拡散→原子の吸着
気体中・溶液中に漂っている原子が結晶表面にたどり着きます。この時、たいてい平らなテラスの上に付着します
②表面拡散
テラスに付着した原子はより安定なところを目指して結晶表面の動き出します。テラスにたどり着いたからといって終わりではないんですね。
③ステップに吸着
テラスの上を漂っていた原子は階段状のステップにぶつかると居心地が良いのでステップに取り込まれます。ステップ(原子からすると壁)にくっつくと壁に沿って動き始めます。
④キンクに吸着
さらに原子は居心地のよいところを探します。すると2つの壁があるキンクを見つけます。原子は最も居心地の良いキンクにたどり着くとくっついて落ち着きます。こうして原子の長旅は終わります。
実際には、環境に応じて結晶表面での様々な挙動を示します。すなわち、上に挙げただけではないんですね。とはいえ、上に挙げたものが結構有名な例の1つだと思っても大丈夫です。
プロの先生たちは結晶の表面を見るだけでどうやって結晶が成長したのか推測することができます。まるで犯罪現場を見ただけで犯人がわかってしまう凄腕刑事みたいで、ほんとすごい能力です。
最後に
今回は普段触れることのない結晶の表面について紹介してみました。知らないと気にかけることもないようなことですが、知ってるとちょっと面白いお話ではないでしょうか?
まあ、こんなことが学術領域以外で取り上げられることもないので、ニッチな内容になってしまうんですけどね。
結晶について研究したいという大学生ぐらいの人がこの記事を見たら頭の片隅に置いてもらえると、いつか役に立つことがあるかもしれないですね。
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