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【未来の医療】とっても強いらせんの骨

これまでいくつか骨に関する最新研究を紹介してきましたが、人工的に骨を作る研究は現在進行形で行われています。

中でも、体に良く馴染み、なおかつ強い骨の代わりになる材料というのはとっても重宝されます。

それもそのはず、単なるケガだけでなく、高齢化が進み骨の重要性はより一層際立っていきますからね。

今回は、そんな人工的な骨になりうる材料を紹介していきたいと思います。

特に面白いのは、らせんを巻くラメラ構造という想像が難しい構造が非常に強い強度を持っているということが分かったという点です。それでは科学の発展を見ていきましょう。


らせんラメラ構造

名前だけ聞くとさっぱりわからないですよね。私も”らせんラメラ??”何それ??ってなります。

百聞は一見に如かずというわけではないですが、言葉で表すよりも見た方が速いと思います。

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参考文献より引用

ラメラというと層状のものが積み重なったようなものを指す言葉ですが、確かに層状の構造が入り組んでいる様子がわかります。

一般的なラメラ構造とは異なるな、という印象を受けましたが、これはラメラがらせんを持っているからでしょうか?何とも言えない構造ですよね。

細かいことは置いておいて、論文ではらせんラメラと呼ばれているので、ここではそう呼んでいこうと思います。

骨を補助する強度

らせんラメラ構造と”直交”構造を比較してみます。直交構造というのは比較的想像しやすい形をしていますね。

画像2

参考文献より引用


リング状の部品が円柱上に積み重なっているイメージです。このわかりやすい構造と、最初に紹介した”わかりにくい”らせんラメラ構造を比較してみようという話です。


その結果は一目瞭然で、わかりやすい直交構造よりも、らせんラメラ構造は非常に強いことがわかりました。具体的には引っ張っても伸びにくく、圧縮してもつぶれにくく、破損したときにひずみも小さいといった優れものだったようです。

これはねじれた形状を持つらせんラメラ構造の方が、衝撃のエネルギーを上手に分散することができるからだそうです。

さらに、もう少しいろいろと調べていくと、このらせんラメラ構造は座屈しにくいという特徴も兼ね備えていることがわかりました。

座屈というのは、棒状のものに圧縮の力を加えていったとき、とある限界を超えると突然たわむことを言います。

座屈

ちょっと語弊はありますが、イメージとしては定規に力を加えたときにぐにゃっと曲がる感じですかね。


座屈2

参考文献より引用(左:らせんラメラ構造、右:直交構造)

こちらを見ると、らせんラメラではまっすぐつぶれているのに対して、いたって普通な”直交”構造では思いっきり曲がってしまっているのがわかります。


最後に

科学の発展は素晴らしいもので、シンプルイズベストというのもありですが、少々わかりにくい複雑な形を計算科学や実際の実験から求めていくというのも現代科学の醍醐味ですね。

以前、紹介したカイロウドウケツという深海の生き物なんかも、とっても複雑な構造でユニークな特徴を持っているという良い例でしたね。

今後も、より面白い構造なんかが発見されて私たちの生活に応用されることでしょう。

参考文献

Biomimetic Rotated Lamellar Plywood Motifs by Additive
Manufacturing of Metal Alloy Scaffolds for Bone Tissue Engineering

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