純潔ここにあり
「最近立川くんとはうまくいってるの?」
そう聞くとA子はしずかにうなずいた。
恋愛関係の質問をすると濁った表情をする子だったからその時はびっくりした。
「それならよかった」
と私は相槌を打つ。
A子は器用に羊羹を食べている。
細い指にはうすい赤色のマニキュアが塗られている。
「でも何か心境の変化があったの?この前に会ったときはもう2度と会わないって言ってたじゃない」
「そうね」
A子は曖昧に肯定する。
それ以上は何も喋らなかった。
ウェイトレスがロイヤルミルクティーを運んできた。
私はそれに口をつける。
窓の外に青い小鳥が見えた。
一瞬視線をやり、すぐにA子に戻す。
ほぼ同時にA子は手元のハンカチーフから窓の外へと顔を上げた。
ふと窓の外を覗いた横顔があまりに清らかで清廉としていて、女ながらどきどきとした感情に襲われる。
そのまま小鳥に視線をやりながらA子は言った。
「美しい感情が汚く見えてしまう季節は終わったの」
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