一瞬で永遠の希望。映画『スウィング・キッズ』
映画『スウィング・キッズ』を観た。
必ず観ると決めていたけれど、今のこのタイミングにした。8月は歴史や戦争について考えることが多くなる。ネタバレ及び内容がつらい方はここでUターン推奨。
私の知らないこと
この映画の舞台は、朝鮮戦争時代の巨済(コジェ)捕虜収容所。収容所のイメージアップのために寄せ集められた、国籍も年齢も異なるタップダンスチーム(スウィング・キッズ)の話だ。
この映画自体は実話ではないが、共産主義か、資本主義かで捕虜が分かれ、暴動や殺戮もあったという歴史を背景にしている。
まず、私は何も知らないな、というのが第一の感想。日本のことでさえ知らないのに、世界のことはもっと知らない。でも大きな流れの中で動いてきて、根底はつながっている。知らないことが恥ずかしい。でも、何も知ろうとしないよりは映画をきっかけとして、知りたい。
素晴らしい俳優陣
ダンスシーンが圧巻だった。特にロ・ギスを演じたEXOのD.O.。彼から目が離せなかった。ジャクソン役のジャレッド・グライムスはダンサーで俳優ということだけど、彼に引けを取らないスキルがあると素人目にもわかった。
ダンスチームの他のメンバーも、舞台上で輝いていた。メイキングの動画を見ると、タップダンスを猛特訓している様子が収められている。その努力のおかげで、どのシーンも素晴らしい。
それにしても『椿の花咲く頃』や『サイコだけど大丈夫』で大好きになったオ・ジョンセさんの出ている作品には間違いがなくて驚く。
一瞬で永遠の希望
ダンスシーンとそれ以外のシーンの切り替え方が絶妙で、誰かが踊る度に心が躍った。あまりにのめり込みすぎて、そこが収容所であるということを忘れてしまった。
ダンスをしている間だけは、希望に満ちあふれているように見えた。それぞれの現実から外へ出て、その瞬間を生きているように見えた。だけど、これはどうしても戦争中の話だ。生き別れた妻を探したり、両親を亡くし兄弟たちを養ったり、栄養失調になっている現実は変わらないし、暴力はすぐ近くにあった。
人間は、どうしていがみ合うのだろう。どうして人間が作った思想で人をわけるのだろう。ロ・ギスがジャクソンに向けた言葉、"I want to just dance." というセリフが頭から離れない。踊る。その一瞬が、彼らの希望だった。思想や言語を飛び越えて、自由を渇望した彼らの永遠だった。