少女が人生を知っていく映画『はちどり』
ひとりで映画祭りをしている。一気に見ているドラマもないので時間があるのだ。
今回は韓国映画『はちどり』をアマプラで見た。たいっへん良かった。最近では一番のお気に入りかもしれない。何が私に刺さったのか、まとめてみたい。ネタバレを絶対回避したい方はご注意を。
好き度:★★★★★
好きなポイント
美しい
映像は一見地味にも見える。よくある集合住宅の一般家庭。学校。しかしその外の世界の切り取り方は瑞々しく、美しい。フォーカスが人から切り替わりすーっとアップになるが、その対象はドアだったり葉っぱだったり、必ずしも人ではない。
音も美しい。背景にも最低限の音しかしない。余計なものがなく、会話や呼吸に集中できる。
答えは示さない
このカットはどういう意味なんだ?と考えることが多かった。たとえば子どもたちからも敬語を使われていて、家では一番権力があるように見える父親の涙。それこそウニの戸惑いを表現しているのかもしれない。
普通ならカットされそうなシーンが入っていて、逆に入りそうなセリフがない。独特の間がある。
人生を知っていく
『82年生まれ、キム・ジヨン』で見たような女性への抑圧がこの映画でも見られた。兄のために妹が学業を諦めて働くことや、家庭内の暴力が当たり前のこととして存在している。静かに語られた「殴られないで」という言葉が耳に残った。
単に大人になるという言葉では語りきれない物語だ。この年齢に特有の簡単にくっついたり離れたりする友情や恋だけでなく、人生で起こりうる様々なことを少女は知っていく。初めて慕った人が急にいなくなる。開発のために家を追い出される住民の存在。大橋の崩落。
私たちは、紙一重のところで生きていく。遠くに行ったり近くなったりしながら、出来事を飲み込んでいく。