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栗スイーツは高くなきゃおかしい
先日、夫が栗を貰って帰ってきた。
夫がビニール袋を手に提げて帰ってくると、やり〜と思う。
わたしは何か貰えるのなら、基本なんでも嬉しい。中でも食べ物。特にお菓子だと、なお嬉しい。
今回の貰い物は栗だった。秋の味覚!袋を見てみると「わ!栗だ!」と思わざるを得ないフォルムに嬉しくなったが、すぐさま思った。
どうやって調理しよう……。
祖父母の家に住んでいるとき、母が栗を剥いている姿を見てきた。
その、なんと大変で、時間の掛かることか!!!
「〇〇も手伝って〜」
声を掛けられたわたしは、面倒くさいを押しのけて2,3個栗を剥いてみるが、取り掛かったそばからやめたくて仕方がなくなった。包丁さばきが下手なのもあるが、少しずつ渋皮を剥く作業が手間で手間で、大変すぎるのだ。最後には面倒くささのほうが勝って、部屋から逃げてしまった。
そんなわたしが、大量の栗をさばく…?
成し遂げられる確信がないまま栗を数えると、40個はある。
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40個…。不安だ。
目を閉じてみても、わたしが40個の栗を剥き終えているビジョンが全く見えない。大抵のことは想像できるのに、どうしたものか。とりあえず、クックパッドやクラシルで栗の剥き方を調査する。今回は初めてだし、簡単な準備のものからやってみよう。ボールに栗を入れ、ひと晩水につけて置く方法を選ぶ。冷蔵庫の扉を開けるたび、(明日は栗剥きか…)と思った。
栗剥き当日。びっくりするぐらい、やる気が出ない。栗の底を切り始めたそばから、やめたくなっている。これはやばい。挫折しそう。目の前の栗たちが、無言の圧を加えてくる。わたしが剥かないと、栗たちが悲しい最期をむかえてしまう。面倒くさい面倒くさい頑張る。面倒くさいやめたい頑張る。ユーチューブを少し見て休憩。スマホをいじって休憩。何度も休みながら、ぼちぼちと栗を剥いていく。
外側の分厚い皮である鬼皮は、ある程度まで剥くと、スポッとひとまとまりで剥がれる瞬間がある。それは爽快で、剥いていて楽しいと思えた唯一だった。渋皮は、まさに修行、鍛錬のゾーン。1個剥いて残りの栗を見てはため息、3個剥いては残りの栗を数えていった。
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12時10分。やっと半分の量を剥くことができた。午前10時ころから始めて、約2時間。栗の実はボコボコとした歪な形になっていた。
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見ていると、ちっちゃいジャガイモみたいに見えてくる。わたしは、ジャガイモの皮を剥くのもうまくない。皮と一緒に実まで剥いてしまうから、ジャガイモが少し小さくなってしまうのだ。栗も同じか。悲しい気づきだが、栗を剥いたからこその発見でもある。
栗を半分に切り、第一陣の米を炊く。
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69分後。イチから作った栗ごはんが完成した。
や、やったーーー!!!
少量食べてみる。栗はちょっとパサついていたけれど、あの甘さが感じられて満足だ。心もホクホク。
よーし。この調子で残りの栗も剥くぞ!
ユーチューブを少し見て休憩。スマホをいじって休憩。何度も休みながら、ぼちぼちと栗を剥いていった。
晩ごはん用の栗も無事に準備できて、わたしはやり切った気持ちでいっぱいだった。今日ばかりは、自分で自分を褒めてあげたい。自信を持って言える。「頑張ったな!」
栗を剥くのって、こんなに労力がいるのか。時間が掛かるし、肩も凝るし、気持ちがめげないようにメンタルを維持し続けるのが大変だ。
ファミレス、カフェ、回転寿司、スーパー。広告やチラシ、お店などで、ハロウィンパッケージや秋限定のお菓子をよく見る。手軽に楽しめる秋の味覚。簡単に手に入れて、秒で食べ終えているけれど、もう少し感謝して食べなくちゃいけないんじゃないか。もしそれが、人の手でイチから栗を剥いて作られているとしたら、尚更かも。当たり前に売られている栗スイーツ、高くなきゃおかしいよ。自分でやってみると、身に沁みてわかる。
栗剥きの前日。わたしがやる気をなくしていたら、夫が「俺がやるよー」と口走っていた。家にはもう一袋、栗がある。果たして夫は、この鍛錬に耐えられるだろうか。
次男だけど、やり遂げられるのかな。見守るのも、おもしろそうだ。
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