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中1娘の運動会が、私の価値観を変えてくれた。



春の運動会シーズン。秋に開催されるところもあるが、娘(中1)の中学校では5月に開催される。

GW明けから練習が始まり、直前の2週間は、ほぼ毎日体操服を持って登校していた。帰ってからもぐったりしていて、練習を頑張っているんだなあと感じていた(多くを語らない娘)。

そして先日、運動会当日を迎えた。初めてなのであまり情報のない中、夫と会場に向かう。午前中だけの開催で、プログラムを見た感じシンプルな構成だ。だから、娘の出番だけ見て、あとは日陰でゆっくりしていようと思っていた(この日の最高気温30度。日差しも痛いくらい)。

ところが、いざ始まってみると、工夫満載の競技のオンパレードで、応援していて楽しくなり、気付いたらほぼ全競技立ち見していた。

ここで正直に話しておくと、私は、運動会に対して思い入れがあまりない。運動が苦手(特に足が遅い)なのが大きな要因だ。スポーツテストならまだしも、全校生徒と保護者の前でなぜ足の速さの優劣をさらされないといけないのか、と徒競走にずっと疑問を抱いて生きてきた(かといって、手をつないでみんなで仲良くゴールとかは反対派)。他の競技も、それなりに真面目に取り組んではいたと思うが、「とりあえずやりました感」、「やらされている感」が否めず、心から楽しいと感じた記憶があまりないのだ。


もちろん、自分の時とは違い、子ども達の頑張る姿は無条件に応援したくなる。でもどこか、自分の経験がチラついて、ネガティブな発想になってしまうのも事実だった。


そんな私の価値観を変えてくれたと言っても過言ではない、今回の運動会。何がどう違ったのか、書きながら振り返ってみたいと思う。




1.台風の目

これは、娘達1年生の競技。クラス対抗戦だ。台風の目は、何人かで1本の竹の棒を横に持って走り、三角コーンを回って帰ってくるリレー式の競技。

こんなやつ。

今回は、5人ずつ組になっていたが、竹の棒は8人は入る程に長い。三角コーンは2つあり、最初のコーンでは右側を中心に1回転、次のコーンでは左側を中心に2回転するようだ。しかも、ちゃんと棒の端をコーンに近付けないといけないルール。

スタートすると、走りながら中心となる右端に5人が寄っていく。そうすることで、中心で回す力が最小限になるし、走る円周も短くなり、効率が良いのだ。次のコーンに行く時には、反対の左端に寄っていくのだ。私は、もうここで「なるほど~!」と感心していた。

復路はまっすぐ走って帰るだけ。目印の線を越えたら、両端の2人以外は棒を離れる。そして、残った2人が棒をクラス全員の足元をくぐらせ(クラスのみんなは前からウェーブでジャンプ)、最後は棒を後ろの頭上から移動させて次の組へバトンタッチ。なんだか、ものすごく難しそうだ。しかも、誰か1人でも足が引っかかったら、悲惨な状況になりそう。でも、どの組もスムーズに行っていて驚いた。

娘はアンカー組の真ん中だった(この時知った)。棒の端には、長身の女の子と、見るからにがたいのいいスポーツマンの男の子。走るスピードも速い。あまり足が速くない娘は、必死に棒を持ち、くらいついて行っている。足の回転もいつになく速い。

「がんばれー!!転ぶなー!!」気付いたら、大声で叫んでいた(運動会前日、娘は転んで膝を派手に擦りむいていた)。

無事に転ぶことなく走り終えた娘。そして、チームワーク抜群だった(特にジャンプのところ)娘のクラスが1位だった(おめでとう)。

後から聞いたのだが、練習ではずっと最下位だったらしい。でも、何回も練習して、組となるメンバーやどのポジションが適任か、組の順番などもクラスみんなで話し合って調整したという。さらには、3年生が全員ジャンプのコツを伝授しに来てくれたと。作戦と練習の成果だったのか。

台風の目ってこんなに盛り上がる競技だったっけ、と思った。

2年生、3年生の学年競技もすごかった!


2.全員リレー

その名の通り、クラス全員でバトンを繋ぐリレー。クラス対抗戦。1クラスは40人。でも40人でリレーするのではなくて、10人ずつチームに分け、4回対戦する。

この競技での工夫は大きく2つ。1つは、バトンパスゾーンを上手く利用し、足の速い走者はなるべく長い距離を走り(パスゾーンの始まりでバトンを受け取り、次のパスゾーンギリギリまで走る)、足の遅い走者は短い距離になるように(さっきとは逆)順番を決めること。これだけで、全体のタイムは圧倒的に速くなる。

それと、もう1つはチーム構成。4チームのバランスを同じようにするか、確実に勝てるチームを作るか。それを、クラス全員で話し合って決めたとう。練習でやってみて、他のクラスとの兼ね合いも考えて調整したようだ。

実際は、バトンを落としてしまったり、転んでしまい、思うような順位にいかない場面もあったが、それも含めての結果。

応援していて感じたのは、足が速かろうが遅かろうが、誰も置いてけぼりになっていない、ということ(単に私がそういう目線で見てしまうからかもしれないが)。「とにかく自分の役割を果たすんだ」という意気込みを、全員から感じたし、クラスごとに作戦が違っていて感心した。

これは、各学年であり、大いに盛り上がっていた。ちなみに、徒競走はプログラムになかった。


3.応援団演舞

応援団というと、学ラン姿の選抜メンバーが「三三七拍子~」とかやるものを想像していたのだが、この学校は全然違った。全校生徒が参加するのだ。

学校全体では、クラスが縦割りで団に分かれている。例えば1年1組、2年1組、3年1組は青団、という感じ。

団ごとに場内に出てきて、ダンスと応援団の演舞を組み合わせて披露し、最後の決めポーズの後は応援席まで走って戻る。そして全員が座って団長が手を上げるところまでが競技。審査員の評価点に加え、競技間のタイム(設定時間ピッタリだと加点)、練習中の忘れ物がなかったかなども加点の対象だという。

どの団も素晴らしかった。娘達の団もよくまとまっていたし、とても楽しそうにMrs. GREEN APPLEの『青と夏』を踊っていた。練習期間中、初めはバラバラでどうしようもなかったらしいのだけれど、練習風景を撮影した動画を3年が見せてフィードバックしてくれたり、クラスでもどうしたら揃うかなどを話し合って練習したそうだ。

その結果が見事に表れた当日の演舞。短い期間によくここまで仕上げたなあと感心した。


4.綱引き

これも、縦割りの団対抗戦。団を2つの組に分け、他の団と対戦した合計点で競う。1回が60人対60人の綱引きなので、かなり迫力がある。縄もこれまで見たものの中ではだいぶ長い気がした。

基本的には3年生から並んでいたが、体格の良い子は1年生でも前の方に配置されていた。

そして、見ていたら、娘達の団はなぜか「よいしょ、よいしょ」などの掛け声がない。後から聞いたのだが、掛け声を掛けて引いたら、リズムに合わせて力が緩む瞬間があるので、敢えて掛け声は掛けずに、ひたすら引っ張り続ける作戦だったそう。これまた、目からウロコ。その甲斐あってか、この団は全勝していた。

他にも団ごとに作戦が様々で、軍手を着ける団、ジャージを着る団(なんと、相手が引っ張るのに重さを増やすため、という理論だったとか)など。そうやって学年を越えて話し合い、実践し、団結する姿がすごいなと思った。


5.結果発表&表彰式

閉会式で、3年生の体育委員長が結果を発表する。真っ黒に日焼けした、いかにもスポーツマンの男の子。

スタンドマイクの前に立つや否や、

「みなさ~ん!今日は本当にお疲れ様でしたあー!!」

と、大きな声で、その場のやや緊張した空気を一気に明るくした。完全に陽キャで、名物MCのようだ。

体育委員長は続ける。

「何はともあれ、練習から頑張ったことを十分に発揮した、素晴らしい1日だったと思います!!」

じーん。


この言葉に全てが集約されている。

そして、学年別クラスの順位(競技部門)、応援団演舞の順位、団別総合順位をそれぞれ発表。その発表の仕方も、

「1位は~、…(3秒くらいの間)〇〇団!!」

といった感じで、いちいち間を作って盛り上げてくれ、「わー!!」という歓声と拍手が沸き起こる。本当に盛り上げ上手。飛び跳ねて喜ぶ生徒も(かわいい)。

なんと、娘達の団は、応援団演舞、団別総合で優勝した。保護者席からも拍手と喜びの声が上がっていた。私もとても嬉しかった。保護者も団の一員になったような気分だったのかもしれない。

そして、私は見逃さなかった。なんと、校長先生が涙されていたのだ。きっと、生徒を練習の時から近くで見守ってこられ、感動も一入ひとしおだったのだろう。素敵な涙だなあと思って拝見した。

その後、各団の団長、副団長が前に出てきて、校長先生から賞状と優勝カップ、優勝旗(総合優勝)を受け取る。

なんと、優勝した応援団の団長(女の子)が泣いている。色々と大変な中、頑張ったんだろうなあ(3年生は始業式の日から準備に入るとか)。他の団長や副団長も、「やり切ったんだ」というような晴れ晴れした顔をしていた。

その光景に胸を打たれ、目が潤みっぱなしだった私(多分、砂埃のせいではないはず)。


6.校歌斉唱


感動はここで終わりではなかった。校歌斉唱となり、前に出た指揮担当の3年生の女の子がこう言ったのだ。

肩を組んでもいいですよ。みんなで楽しく歌いましょう!

?!

「校歌を楽しく歌った」経験が私にはなかったので、正直驚いた。

そして、生徒が本当にみんなで肩を組んでいく。数人のグループもあれば、クラスみんなで輪になっているところもある。

伴奏なしのアカペラ。指揮だけで歌い始める。

この中学校は昔から合唱が有名らしいのだが、なんと校歌も女子と男子でパート分けされている。入学式で3年生が披露してくれた校歌のハーモニーが素晴らし過ぎて、鳥肌が立ったことは記憶に新しい。

そして今日。この青空の下、思春期真っ盛りの中学生が、みんなで肩を組んで大きな声でハモりながら校歌を歌う光景とは。そのピュアさに胸がキュンとなる。

アオハル…。

さらに追い打ちをかけるように、観客席からも聞こえてくるハーモニー。なんだ、なんだと思ったら、遊びに来ていた卒業生(高校生)達も肩を組んで歌っている。よく見たら、保護者にも歌っている人がいる。

ーーふわぁ〜!

驚きと感動で何とも言えない声が出た。なんという母校愛。


7.解団式

運動会が終わり、団の解散の時。何をするんだろうと気になって、夫としばらく遠くから見ていた。

団ごとに集まり、円となった。まずはみんなで結果を味わう。3年生の団長、副団長、2年生、1年生のまとめ役も輪の中心に出て1人ずつ挨拶。遠くてはっきりとは聞き取れなかったが、感謝の言葉などかと。都度都度起こる、拍手と笑い声。担任の先生方も挨拶。団の色のアイテムを身につけた先生方が、本当に熱い


そして最後にわちゃわちゃ記念撮影をして、解散となった。とにかく、先輩、後輩問わず仲が良い。平成初期の上下関係重視でピリついた校風で育った私には、驚きでしかなかった。




といったところ。振り返りすぎて、ありえないくらい長くなってしまった…。

私は、こんなにも生徒が主体で動けるものかと感心しっぱなしだった。「楽しいこと」と「ちゃんとやること」のメリハリもはっきりしている。1年生に関しては、ついこの間まで小学生だったことを考えると、驚きでしかない。

ルールはあっても、不必要(と私が感じる)な厳しさは感じない。戦いはあっても、相手にはきちんとリスペクト。先生にやらされている感はもちろん全くなく、なんなら先生も生徒と同じ目線で熱くなってキラキラしている。生徒を信頼していることが伝わってくる。

もしかして、私はこの時代に産まれていたら、色々しっくりきたのではなかろうか。そんなことまで頭をよぎった。とにかく、時代の流れと、素晴らしい校風に圧倒されたのだった。


ということで、最終的に私が思ったこと。

こんな運動会なら、ぜひ参加してみたい。

ほんとに心から。


ここまで思わせてくれた生徒や先生方に、感謝。この学校に出会えて良かったなあ。

その日の夜、夫が撮影した映像を見ていた娘に、「ママの声が一番うるさい。」と言われてしまうほどに私が興奮した証拠がばっちり残されていた。ちょっと恥ずかしい。

娘はものすごく疲れていたけれど、「過去一(今までで一番)楽しかった~♩」と言っていたので、きっと大変だったとは思うが充実していたんだろう。


これからの中学校生活が、さらに楽しみになる1日だった。



***



最後の最後までお読みいただきありがとうございました。


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