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巡りめぐる星に生まれて

高校の卒業式の日。
最後のホームルームで、大好きだった担任の先生が私たちにあるお願いをしました。

「これから君たちは少しずつ大人になって、もしかしたらパートナーができたり、子供が生まれたり、もちろん家族と今まで通り暮らしたり、一人で生きていくことを選ぶ人もいるでしょう。どんな場所でどうやって生きていくとしても、1年の中に訪れるイベントを大切にしてください。誕生日の日には、どんなに細やかでも良いのでお祝いをしてください」

先生は続けます。

「この国でもし生き続けるなら、たくさんのイベントがあります。完璧にやろうとしなくても良い。もしかすると何かのイベントを忘れてた!なんてこともあるかも知れない。たまにはそんな年だってあるでしょう。でも忘れていたことに気がついて欲しい。そしてまた次の年には、その季節を祝って欲しいのです。大人になると、大切なことを日常のなかに忘れてきてしまう事があります。走るように過ぎ去る日常でも、祝うことを覚えていればちゃんとに季節が巡っていることを感じられますから」

私はクラスメイトの小さな泣き声と鼻をすする音と一緒に、先生のこの願いを絶対に忘れまいと噛み締めていました。

思い返すと高2・高3と担任だったその先生は、とてもユニークな先生でいつも私たちを喜ばせてくれました。
ハロウィンには段ボールいっぱいのお菓子つかみ取り、暑い季節の文化祭準備中にはアイスの差し入れ、11月11日にはみんなで写真を撮れるようにとポッキー、クリスマスにはケーキのプレゼントなど…まだまだあります。

定年間近、普通の公立高校の男性の先生にとって、ほぼ女子クラスだった私たち(コース選択の都合上女子30人+男子2人構成)の支持率獲得には、胃袋を掴むのが早いと思われているのかな、と当時は笑っていましたが(実際に掴まれていたし)、先生の本当の願いはそこでは無かったのかも知れないと大人になった今思います。

先生が言っていた、季節のイベントを祝う楽しさはもちろん、その2年間で存分に味わわせてもらいましたし、大好きな友人と美味しいものを食べて交換しあったり、美味しいものを食べる友人の笑顔を見る楽しさも十二分に体験していました。


春が来て、夏が来て、秋になって、冬が来て、また春になる。
単純な巡りのなかに、きらっと光るお祝いをスパイスのように抱きしめて、今日も、春を待っています。



☆今週のサムネイルは、去年のクリスマスに友人から届いた贈り物の写真にしました。






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