“自分の人生含めて治療”。いしわた鍼灸院が施術で大切にしていること
東洋医学あるいは漢方医学の一分野として中国に起源を持つ“鍼灸”。症状に適したツボにステンレスの細い針を刺入したり艾を置いて燃焼させたりすることで、身体に刺激を与え、体調改善に導く治療法である。実は肩こりや腰痛だけでなく、不妊や自律神経失調症などにも効果があるとされている。今回は、そんな鍼灸治療を行っている“いしわた鍼灸院”を紹介する。
人形町という街で営む、都会のオアシス
いしわた鍼灸院は人形町駅を降りてすぐという好立地。院内は広すぎず、狭すぎず、アットホームで落ち着く雰囲気だ。スタッフは院長の石綿さんただ一人。今年で開業して5年目になると言う。
「この鍼灸院のコンセプトは、“本来のありのままの自分を取り戻す”。やっぱり現代人って、日々の仕事や家事などでどうしてもストレスが溜まって、心と身体のバランスを崩しがちだと思うんです。当院では、身体の凝りだけでなく心も、両面からサポートしたいと思っています。だから治療では何よりも“会話”を大事にしていますね。実際に鍼灸治療を行う前に、患者様がお悩みの症状について話を伺うカウンセリングを行っているんですが、それだけで良くなって帰る患者様もいるんですよ」
一人一人の話を徹底的に聞いた上で、それぞれに合ったオーダーメイド治療を行うことがこの鍼灸院の特徴の一つだと言う。
「当たり前ですが人間の身体って一人一人違いますし、症状も人それぞれなので、100人いたら100通りの治療法があると思っています。同じ患者様でも日によって治療法を変えることもありますね。あともう一つの特徴は、深層への刺激が得意なので、頑固な凝りや症状の根本的な原因にアプローチすることができていると思います」
幅広い患者と日々接する上で特に意識していることはないと言う。元々人にすごく興味があるのと、サラリーマン時代の経験から、どんな人とでも自然にコミュニケーションがとれるとのことだった。
脱サラして鍼灸の道へ
「新卒では不動産業界の会社に就職したんですが、約2年半勤めた後、脱サラして鍼灸の専門学校に通い始めました。3年後国家資格を取得してからは、まず訪問専門の鍼灸マッサージ院で2年位働いて。その後出張型の個人治療院を開業したのですが、見事に失敗しました。鍼灸マッサージ院は地元の神奈川エリアで行っていたんですが、結婚した都合もあって東京で開業したんです。東京には知り合いがおらず、一から営業をかけて回ったのですが、全く駄目で。お恥ずかしい話、収入が0になったんですよ。仕方なく半年で廃業して、浅草橋の森の治療院に就職しました。そこでありがたいことに指名数No.1を獲得することができました。自信がついたのと、森の治療院の院長のサポートもあり、再び独立してこの院を開業しました」
息つく暇もないほど波瀾万丈な仕事人生を送る石綿さん。そもそも鍼灸の道を志したきっかけは何だったのか。
「新卒で入社した不動産業界の会社ではかなり多忙な毎日を送っていました。残業やクレーム対応などで疲弊し、鬱のような症状も出ていましたし、どうにかこの環境から逃げ出したいと思いながら仕事していましたね。僕と同じように多忙な毎日を送っていた会社員の父が、僕が大学生の時に心身ともに体調を崩して急死してしまったこともあり、自分の人生このままでいいのか?と悩んでいました」
このままでは自分も父と同じような人生を歩んでしまうのではないか、そんな漠然とした不安に襲われたという石綿さん。今後のことを考える中で、治療家への興味を思い出したと言う。
「学生時代は野球をやっていたんですが、高校最後の夏に骨折してしまって。その時に治療家が本気で寄り添ってサポートしてくれる姿に感銘を受けました。その経験もあって、治療の世界に進んでみたいという気持ちが元々あったんです。営業として働いていると、会社の売上のために自分が良いと思っていないものまでお客様に勧めなければいけないことがあり、ずっと自分の仕事に疑問を持っていました。“治療家として本当に困っている人や悩んでいる人の役に立ちたい”という思いが強くなり、鍼灸師をやっている学生時代の先輩に話を聞きに行ったんです。そこで鍼灸や東洋医学の魅力にすっかりハマってしまい、今に至ります」
ひたすらに目の前の患者と向き合う日々
人形町という街の特性もあり、患者はバリバリ働いている会社員の方が多いと言う。
「本当に治療を通じてしか出会えない人がたくさんいて。皆さんの話を聞く中で人生観を学ばせていただいているなと感じています」
様々な患者と1対1でしっかり向き合っているからこそ、それぞれの人生のストーリーを身近に考えられると言う石綿さん。仕事をしていて嬉しいと感じるのは、やはり患者からの言葉だと言う。
「患者様から、“今までできなかったことが鍼灸のおかげでできるようになった”というような言葉をいただけると存在意義を感じますね。ある方が、“今まで腰痛が酷くて遠出ができなかったけど、先生のおかげで旅行できるようになった!”と旅先から連絡してきてくれたことがあったんです。本当に嬉しかったですね。でも嬉しいことがあっても、極端に一喜一憂しないように、できるだけ平常心でいることを心がけています。逆に、“すごく良くなりました!また来ます!”と言っていたのに、次回予約の際に連絡なしでキャンセル…なんてことがよくあります(笑)そんな時は“きっとあの方は症状が良くなったんだ”と前向きに捉えて切り替えるようにしています」
他にもたくさん辛いことがあったんですが忘れちゃいました、と笑う石綿さんに、今までの波瀾万丈な人生の中で、どうやって辛いことを乗り越えて来たのか聞いてみた。
「よく“時間が解決する”と言いますけど、本当にそうだと思っていて。僕も辛いことがあった時は時の流れに身を任せるしかないと思っています。実は僕、この院の開業1年目に前の奥さんと離婚することになったんです。当時はメンタルがボロボロになってしまい、やる気も無くなってしまって。そこで変な話なんですけど、開業1年目はもう諦めようと思ったんです。無理せずに、1日1日を乗り切ろう、ただただ目の前の患者様に向き合いながら、やる気のある自分が戻って来るのを待とうと思いました。そうしているうちに、やっぱり時が解決してくれて、2年目からは本来の自分に戻れたなと感じています」
仕事でもプライベートでも挫折や失敗を繰り返してきたという石綿さんだが、色々な経験をしていた方が患者の話にも共感できるし、平坦な人生より深みが出て良いと言う。“僕の人生含めて治療”と石綿さんは語った。
患者のビジネスパートナーであり続けたい
「以前患者様から、“先生のことはビジネスパートナーだと思っています”って言ってもらえたことがあったんです。体調が悪くなっても、いしわた鍼灸院の治療を受ければ改善して仕事のパフォーマンスも上がると言っていただけて、とても嬉しかったですね。僕は患者様の心の拠り所でありたいと思っていて、心身のバランスを崩した時や、本来の自分じゃなくなっているなと感じた時は、ぜひ相談してほしいです。そして日頃から自分の身体と向き合って、労わる気持ちを持ってほしいなと思います」
日々多忙な生活を送る中で、つい無理をしたり、自分を騙して疲れたりしていないだろうか。本来の自分を見失っていると感じた時は、ぜひいしわた鍼灸院に足を運んでみてほしい。
▼今回取材させていただいた場所はこちら
いしわた鍼灸院
〒103-0013
東京都中央区日本橋人形町1-8-6 サカエビル2F
03-6264-8976
http://ishiwata-shinkyuin.com/
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