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伯母セイコと銭湯【ユーモアエッセイ】

★4分ほどで読めます★

 

 母の姉、伯母セイコは、とても陽気な人である。

 親戚一同集結の中、扇子を片手に真顔で、出し抜けな日本舞踊を披露する。
 とりたてて上手いとも言い難くいが、チャンチャラチャンなどと口ずさみながら長らく踊るへんちくりんな光景に、私たち親族は大笑いだ。

 

 伯母セイコは関東在住だが、皆が集結する実家は東北地方にある。
 そのため、お盆帰省の際は、旦那さんが運転手となり大型自家用車で7時間もかけて家族全員で来るか、子供達だけ連れて新幹線で来るかのどちらかだった。

 自家用車ならともかく、伯母セイコはいつも、新幹線では来るに値しない洋服を着て登場する。
 パッションピンクやスパンコールだらけのコーディネートに、登山並みの大きいリュックを背負い、両手にも大量の荷物を抱え、お盆で大混雑している新幹線や東北本線を乗り継いでくるのだ。


 伯母セイコよりも早く集結した親戚たちは、必ず言うセリフがあった。

「セイコおばちゃん、今日はどんな格好でくるのかな?」フフフフ。


 ポピュラリティーな人である。
 確実に期待を裏切らない衣装を、堂々と着こなしてやってくるのだ。

「どこで服買ってるの!?」と毎度のごとく笑われ、質問攻めにあっていたほどだ。








 これから語ることは、40年以上も前の話になる。
 そんな伯母セイコが、花咲く若かりしころ銭湯に通っていたらしい。

 ある日、さぁどこに腰掛けようかと、体を洗う場所を探してうろちょろとしていたとき、全員がジロジロと初めて外人を見るような目を向けてくるから「あら、どうしたのかしらん?」と不思議に思ったセイコ。

 やっと風呂椅子に腰掛けて、目前の鏡を見た自分がブラジャーをつけたままだったことに気づき、慌てて脱衣所へ戻ったのだとケタケタ笑いながら、懐古なる小話しを陽気に語っていたそうだ。


 伯母の語り口調は、愉快で人を惹きつける質がある。
 しかし自ら笑いを取ろうと大袈裟に話すのではなく、そう、どこか芸人の友近さんと似ている。
 友近さんよりも二回りほど年上であるが、昔を回想してみると、突飛な言動がそっくりかもしれないと思った。

 

 さらに伯母セイコの面白いところは、髪型だ。
 
 言葉で伝えるのは難しいが、前髪含めて頭頂部のみチリチリパーマ。それ以外の髪は綺麗なストレート。
 だからなんと言うか、落ち武者の頭頂部にチリチリパーマの毛の塊が乗ってしまったバージョンである。

 想像がつきにくいかもしれないが、たとえ運が良くなると言われても決して真似はしたくないヘアーなのだった。

 これもまた洋服と同じく、「美容師さんに何て言ってその髪型にしてもらうの!?」といつも突っ込まれていた。

 伯母セイコは「素敵でしょこの髪型。楽なのよ」とケタケタ笑うだけだった。

 絵が描くことができたら伯母セイコの髪型を披露できるのだけど、なにせ私は絵が下手くそなもので、きっと、そっちの方が気になってしまいかねないので描くのは断念した。
(もし、上手く描けたらUPしようかと思います!)



 伯母セイコは、とても気前が良く人気者で、70歳を過ぎた今でも現役で保育の仕事をしています。
 動いていないとストレスが溜まるタイプのようです。

 家でボーッとやり過ごしていている姪の私とは大違いで尊敬するし、羨ましい。見習うところがたくさんある。

 もう何年も会っていないけれど、あの髪型はご健在なのだろうか?


最後までお読みいただきありがとうございます💖
またきねて💖



🌺他にもユーモアエッセイもあります🌺


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