飼い猫の独白
わたし、えりっこに飼われてる
"ことら”っていうメスネコよ。
この家に拾われてきてもうすぐ1年になるわ。
姉弟で拾われてね。
弟は”こてつ”っていうのよ。
弟はさ、わたしがいないと
何もできない子だったのに。
この頃はご主人に四六時中ついて回っててさ、
わたしに見向きもしないのよ。
なんだかむしゃくしゃするの。
ご主人には「思春期女子」って言われるんだけど
これってどうゆう意味かしら?
あなた知ってる?
わたしには意味が分からない
思春期女子なんだけど。
ご主人がね、よく言うの。
「ことらの気ままなとこが好きだよ。
好きなように振るまってるとこから
色んなこと学ばさせてもらってる」って。
まあね、分からなくもないわ。
わたしほど魅力的なメスはいないもの。
だってご主人も、一緒に住んでる怪獣どもも
わたしのこと抱っこしたくて仕方ないって
ウズウズした顔で近づいてくるんだもの。
ほんと迷惑際まりない。
「みぎゃっ」っていうわたしの悲鳴が
たまらなくキュンってする。とか
また意味不明なこと言ってたりするのよ。
弟のこてつは人の懐に入るのが上手くて
来客があるたびにすり寄っていくし
お腹見せて寝転ぶのよ。
プライドってもんがないのかしら。
ほーんと嫌になっちゃうわよ。
そんな時は1人になりに屋上にいくの。
陽があたってポカポカして気持ちいいのよ。
嫌なことも忘れちゃう。
イライラする毎日だけど
わたし、この家好きよ。
お腹がすくこともないし
快適に過ごせるし。
拾われるまではお腹空いてるのが常で
よく泣いてたわ。
あの日も弟と一緒に泣いてたの。
「お腹空いたー」って。
ご主人の大きい方の人が拾ってくれて。
段ボールに入れられて運ばれたの。
どこに行くんだろうって怖かった。
弟とくっついて震えてたわ。
段ボールの揺れが止まった時に
覗いてくる顔があったのよ。
それがご主人だったの。
その顔見たときにね感じたの。
「わたしたち大丈夫だ」って。
ネコのカンってすごいのよ
当たるのよ。
案の定わたしたちに甘々なご主人でね。
すっごく大事にしてくれてるわ。
普段は照れて言えないけど。
ここだけの内緒ね。
「ありがとにゃん」