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子との日々は、世界と出会い直すみたい

カンカンカンカンカン…

踏切が閉まり始めるや否や、ぐいっと自転車のペダルを踏み込み、スピードをあげて通り抜けていた。
そこに、特に感情の揺れはなく、強いて言うなら、閉まる前にくぐり抜けたい。待つのがちょっと面倒だから。それくらいの気持ちだった。

まもなく2歳を迎える息子は、電車愛に火がつき、保育園帰りには、公園で電車を眺める日々。
あの手この手で、「帰ろう」と誘っても、「バイバイ!」(=もっぱら嫌なことは「バイバイ!」の言葉に集約される)

自分のできる範囲で、子どもの望みを叶えること。
それがわたしの子育ての羅針盤で、だから出来る限り、「電車!」コールには応えたいと思って、保育園にお迎えに行って、自宅に帰り着くまでの電車タイムは定着しつつある。

とはいえ、平日は仕事を終えて、HPは20ほどまで減った状態。満員電車で最寄り駅まで戻り、駅からはオレンジ色のママチャリ(愛車)を爆走させ、保育園にお迎えへ行く。

家に辿り着いて、まずはお風呂に入り(「バイバイ!」から入るまで気持ちをもっていくまで、やや交渉が必要)ご飯の支度をして(お腹をすかせて「ごはん!」コール)食べてもらっている間に自分もかきこむ。洗濯機を回している間に、食事の片付けをし、歯を磨き、少しの時間遊んだり絵本を読んだりして、寝室へ(行くまでも繰り返し「バイバイ!」)。寝室へ行ってからも、しばらく歌ったり、おしゃべりしたり、ぬいぐるみで遊んだり…いつの間にやら、寝かされてるのはわたしやん?
そのまま眠ってしまいたい気持ちを何とか押しよけ、リビングへ戻り、洗濯を干し、保育園の支度をして…

この(結構果てしない)日常リストをこなす体力も温存しておきたいし、現実的な時間との闘いもあって、だから、保育園のお迎えと家に戻るまでの合間に、電車タイムを取れる日もあれば、取れない日もあるのが現実。

その代わり、休日は予定を詰め込むことはせず、やりたいことをやる日にしている。
そんな特に予定が入ってなかったこの日曜日のこと、冒頭のカンカンカンカンカン…だ。

「電車!」コールに応え、夕方家を出発。しばらく公園で眺めたあと、そうだ、もう少し近くから見えるスポットがあるなと思い、近くの踏切までチャリを走らせた。

最近、こどものとも0.1.2 5月号『はしるよ でんしゃ』の最後の場面、でんしゃが駅に到着すると、どうぶつたちが降りてくるところがとても気に入っていて、「キター!」と興奮気味に眺めている姿を思い出して、ひらめいた。

チャリを走らせて向かった踏切は、駅のすぐ横にあって、電車が停車すると、人が乗り降りする姿も見えるスポット。おまけに電車も黄色い。

カンカンカンカンカン…

黄色と黒のバーがおりてくると、自転車の前イスに乗る息子は、若干前のめりになった。
完全にバーがおりると、さらに前のめり。
遠くから聞こえてくるタタントトン…タタントトン…に、思わず自転車のバーを握りしめる。
そして、目の前に電車が現れた瞬間
「キター!」

そのまま電車は駅にプシューと滑り込み、ドアが開くとひとが乗り降り。
駅員さんの合図でドアが閉まり、またゆっくり滑り出すように出発すると
「バイバーイ!」(=バーイ!の音が伸びる方は、機嫌がいいとき)

と、まるで、目の前に推しのアイドルが現れた時の熱狂ぶりだった。
嵐に青春時代を捧げていた若かりし頃、コンサートが始まる前のオープニング映像で、思わず前のめりになり、5人が姿を現した瞬間、キャー!!!と大歓声をあげていた自分の姿と重なる。

休日だったし、特にそのあとの予定もなく、おまけに3連休の中日で、翌日もお休み。
心に余裕もあったわたしは、彼が「レッちゅゴー!」(=満足しました!)と言うまでこの「電車コンサート」を一緒に楽しんだ。
無料だし。笑 

踏切なんて、引っかからないに越したことはなかったものが、息子との日々では、エンターテイメントに様変わり。
何なら矢印が両方光ると、ヨシっ!とガッツポーズしてる自分がいて、ちょっと冷静になるとおかしかったけど。

大満足で家に戻ってからも、しばらくは「きいろ!」「でんしゃ!」「みた!」と何度も何度も興奮冷めやらぬ様子で報告してくれた。(わたしも一緒にいたけど!笑)

子との日々は、世界と出会い直すみたい。
まったく興味のなかった電車の世界に誘われつつある。
嬉しそうな息子を見て、わたしも幸せな気持ちになった。
わたしの子育てはこれ「が」いい。そう信じて、時間を重ねていく。

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