選抜する入試と門戸を開く入試
January 27, 2021
1月も最終週となり、来週はもう2月。今週からは第2次試験の出願が始まりました。大学はせわしない時期に突入です。
ところで、本学の入試に合格するためには日本でトップクラスの学力が必要。日本の大学入試は一般的に学力主義で、受験生は自身の偏差値に応じた大学に出願し、筆記試験に勝ち抜くことで入学を果たします。
一方で、アメリカの大学入試は、大学進学適性試験であるSATやIB(国際バカロレア)といった統一試験による学力のほか、エッセイや課外活動なども総合的に審査します。ハーバード大学のケネディ・スクール(公共政策大学院)に出願した友人は、自己紹介で麻雀の優勝歴をアピールしていました。(そして、見事入学!)
このように聞くと、なんだかアメリカの大学のほうが多彩な学生を受け入れる仕組みになっているように感じますが、総合判定型の入試では、裏を返せば、受験生はオールマイティになんでもできる必要があるということ。成績優秀で、部活動ではアメフトのキャプテンを務め、ボランティア活動にも熱心で、夢は宇宙飛行士...。なかなか充実した高校生活を送っている必要がありそうです。その点、学力だけを基準にしている日本の入試は、一発逆転が利くという意味で、多様な人にチャンスが開かれているとも言えるかもしれません。
また、日本とアメリカでは、入試のほか、大学の社会的な役割も異なります。日本の大学に入学することは、一般的に競争的(competitive)ですが、アメリカでは、いわゆるエリートを輩出する競争的なトップ大学のほか、教育機会を提供して社会的正義(social justice)を実現するための大学、Land-grantと呼ばれる米国政府から歴史的に土地を付与されている地元密着型の大学など、大学によって社会で担う役割が様々です。そして、大学の役割が異なれば、入試のあり方も異なります。
たとえば、カリフォルニア州の中でも、スタンフォード大学(私立)やUCバークレー(州立)が入試を通じて学生を選抜するのに対し、サンフランシスコ州立大学では、所定の基準を満たす学生には門戸を開いています。サンフランシスコ州立大学の学部生の平均年齢は22歳。再挑戦の学生もいます。大学のオフィスのロッカーには、手描きで"Education is a Human Right(教育は人間の権利)"と描かれた絵が貼ってありました。
さて、世の中は高校も大学も受験シーズン。「ちびまる子ちゃん」の作者である、さくらももこさんが自身の高校受験を描いた作品には、こんな言葉が登場します:
“やりたいことがやれない時期は、本当の夢が見つけられる絶好のチャンスです。やりたいことがなんでもやれる時がくると、人は社会の流れや手頃な娯楽にごまかされて、なかなか夢が見にくくなるから。だから、つらい時期は夢の育成期間と思ってがんばってください” (ちびまる子ちゃん4巻「夏の色も見えない」)
いつ終わるのかよくわからないコロナの日々で、制約のある生活を過ごしている点では私たちも受験生のようなものかもしれません。今日はノー残業デーです。今日は早めに仕事に区切りをつけて、おうちで、コロナ渦を抜けだしたらやりたいことを思い浮かべる時間をとってみるのはいかがでしょうか。
*教えてみた「米国トップ校」佐藤仁(2017、角川新書)
https://www.kadokawa.co.jp/product/321705000019/
東大とアイビーリーグの比較。帯の謳い文句は「6勝4敗で東大の勝ち!?」となっていますがどう読むかは読み手次第。
*映画:マダム・イン・ニューヨーク(2014)
https://eiga.com/movie/80110/
英語が離せないことがコンプレックスだったインドの主婦が、ニューヨークの語学学校に入学。人はいつでもだれでも学べます。(主演のシュリデビはインドの黒木瞳と言われる絶世の美女)
(写真:サンフランシスコ州立大学)