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海外でよく聞く『バウンダリー』とは: 心を守るためのセルフケア
カナダに数年住んで気づいたのは、海外では日本よりも圧倒的にセルフケアが重要視されていること。
セラピーやカウンセリングなどを利用している知人友人も知る限りでは数人はいます(そしてカウンセリングを受けることは自分自身の心身健康のためであって、弱い・恥ずかしいこととは認識されていない印象です)。
そしてセルフケア関連でよく聞く一つに
Boundary (バウンダリー)
と言う単語があります。
意味は「境界(線)」。
ではこの単語がセルフケアでどのように使われているのか。
それはまさに「自分と他人との境界線を引く」、です。
健康な人間関係には、相手への思いやりが重要なんてのは小学生でもわかりますよね。
例えば、待ち合わせに遅れそうだったら早めに連絡をいれる(相手の時間を尊重する)。
少し一人にさせて欲しいと言われたら、そっとしておく。
NOと言われたらそれ以上食い下がらない。
逆に相手への思いやりのない言動とはどんなものでしょうか。
例えば、相手がコンプレックスに感じていることで笑いをとったり攻撃したりする。
気の許せる近しい友人でないのにプライベートなことを根掘り葉掘りする。
今ここで話したくないと言っているのにも関わらず、一方的にその話題の会話を進める、など。
ではこの「バウンダリー:自分と他人の境界線」を引かないとどうなるか。
これにも英単語で表現があり、それは『Doormat:ドアマット』(玄関マットのように踏みつけられる人と言う意味)です。
例えば平気で遅刻されたり、プライベートなことにまで口出しされたり、自分の体調やメンタルを犠牲にしてまで相手の欲求に応えることになったり。
何度も何度も踏まれてボロボロになってしまう可能性があります。
この境界線を分かりやすい例えるなら
「自分の庭とそれを囲う塀」でしょうか。
庭にあるものはなんでもいいです。
愛情を込めて育ててきた花が植えてあるガーデン、
静かに読書とコーヒーを楽しむためのベンチとその空間、
毎日大切に世話をしてきた野菜畑など。
そこに平気でドカドカと入ってくる人がいたら、さらに花や野菜を踏み潰していかれたら嫌な気持ちになりますよね。
だからフェンスが、「ここからは許可なしで入ってこないでください」の役割を果たします。
では自分の境界線はどうやって引けばいいのか。
これはそれぞれが感じ方も、育ってきた環境も、多くの経験が異なるので必ずしも全員に当てはまるものはないのですが、
自分を見つめる時間を作ることが一つの方法かと思います。
これは自分にとって触れられたくない話題だったり、
人種・歴史関連でたとえ冗談であっても許せないことだったり。
そしてこのバウンダリーも時間が経つにつれて変わってきたり、
相手によって変わることもあります。
言わなくても分かることではありますが、
自分の境界線を尊重して欲しいのであれば、相手の境界線ももちろん尊重する必要があります。
自分には思いやりを持って接して欲しいのに、相手への思いやりはないということはあってはいけません。
このバウンダリーの難しいところは、先ほど触れたように人それぞれ違うから、自分は問題ないと思って発した言葉が相手にとっては不快だったり、逆に相手の言動で嫌な気持ちになることだってあります。
だからこそ、コミュニケーションが必要になってきます。
「今のその言い方で傷ついてしまったから、次からは〇〇して欲しい」、
「電車の遅れで遅刻したのはしょうがないから、次からはメッセージ一通送って欲しい」。
逆に自分が知らずに相手の線を踏んでしまったら、素直に謝って次回から気をつければいいのです。
このバウンダリー(境界線)を引くのは、自分の感情、身体、時間を守ることであって、正直現代社会を生きていく上では必要な行為だと思っています。
ダメなものはダメと言う。
嫌なことは嫌と言う。
NOはNO。
もし人間関係で疲れてしまっている、自分のためにできるセルフケアを探していたら、この境界線をひくを試してみてもいいかもしれません。