2020年1〜4月、印象に残った音楽作品
過去にどんな作品を自分が見聞きしたのかをあとで振り返りたいと思ったので、今年の1月〜4月で印象に残った&よく聴いた音楽と、その簡単な感想を記していきたいと思います。作品の順番は適当。2020年リリースじゃないものもあります。
【2020年1月】
●VaVa『Mevius』
個人的に今一番注目している&一番聴いているであろうラッパー・VaVaの最新EP。
前作『Cyver』は割とポップで遊び心があったイメージだったけど、今作『Mevius』は音的にも歌詞的にも内省的というか、“己の内面と向き合った”という印象を受ける。先行配信された「Biscuit」がアコギの弾き語りみたいな音像で、苦い恋愛体験を綴った歌だからかな。あと「自己防衛軍」という曲のタイトルにもそれが表れている気がする。
そもそも彼は強くなれない/自分に自信を持てない人たちの気持ちをちゃんと理解し、それを曲に落とし込めるアーティストだ。ファッションやルックスは派手ながら(2年くらい前は長めの髭をアンテナのようにぴーんと上にあげていたりした)、実はめちゃくちゃ繊細で、心の声に敏感。たとえば教室の隅に佇んでいる/いたような学生や大人に寄り添うリリックを書くような人なのである。
ラッパーは強気な人が多いけど、彼の作品はいつだって等身大で嘘がなく、優しい。私が彼の音楽に惹かれる理由は、たぶんそこにある。
●ずっと真夜中でいいのに。『潜潜話』
顔もプロフィールも明かさぬまま、いきなり曲だけをYouTubeでバーンと発表して、その瞬間からかなり話題になっていたグループだけど、本当にすごい楽曲ばかりだ。
今作は2019年にリリースされた、彼女たちの1stフルアルバム。聴きどころはなんといってもACAねの歌声。彼女の声はちょっとハスキーっぽいような倍音がかったもので、特に突き抜けるようなハイトーンボイスが最高に心地好い。あと歌詞で描かれた悲しみや怒りや切なさや諦観などに沿うように、ぶっきらぼうに歌ってみたり、叫びに近い発声をしてみたりと、表現が豊かだ。
それでいてバラードチックな曲だと柔らかでスイートな歌声になるし、もう本当に歌の天才。5月には幕張メッセイベントホール2daysをやる予定だったんだけど、デビューからたったの1年半でそのキャパに辿り着けたのは納得がいく。
あと歌メロも特徴的。ボカロ世代なのかな、と思わせるくらい複雑な譜割で、速いテンポの中に言葉をぎゅうぎゅう詰め込んでいく感じ。でも複雑なメロディなのになぜかキャッチーに聴こえるんだよね、特にサビが。そしてそれをするりと歌いこなすACAねはやっぱりすごいと思う。
とにかく病みつき度が高いアルバム。今後の活躍が楽しみ。
●Base Ball Bear『C3』
3人体制になってから初となる、3人の生音だけで構成されたアルバム。聴き終えて、こういう作品を待ってたんだーーー!という気持ちになった。
音源を聴いたりライブを観てて思うことなんだけど、ベボベって楽器の鳴りが他のバンドよりもかなり綺麗でクリーンな印象がある。ノイズが少ないし、音いじりが極力省かれているように感じられるし、純度が高いままリスナーに音がデリバリーされている。今作だと、「いまは僕の目を見て」とか「ポラリス」とか「風来」とかを聴くと特に思う。
それから「EIGHT BEAT詩」という冒険には感激させられた。なぜなら、サウンドがドラム+チャップマンステックだけだからだ。ベース・関根史織の新楽器であるチャップマンスティックは、ベースのような低音とギターやキーボードのようなメロディが1本で同時に演奏できるというもの。ここでのチャップマンは神秘的な雰囲気と独特のグルーヴを持ち合わせていて、すごく引き込まれる音像を作り上げている。ドラムもシャキッとしてて良い音だし、この大胆なサウンドメイクは大正解だったのではと、僭越ながらいちリスナーとして思います。
●XIIX『White White』
一聴した瞬間「今年のベスト来たのでは?」と思ったくらい衝撃を受けた作品。
UNISON SQUARE GARDEN斎藤宏介×ベーシスト須藤優によるユニット・XIIXの初作品となる今作は、ロック、ポップ、R&B、AOR、ファンク、ジャズなど多彩なジャンルに接近した一枚。ユニゾンでの斎藤の歌=バンドサウンドをバックに歌う斎藤の歌しかほとんど聴いてこなかった身としては、まず彼のボーカルの対応力に驚かされた。
たとえばムーディーな「Fantome」では艶やかな声やファルセットを多用してサウンドに寄り添っているし、ベースのみが鳴る「曙空をみつけて」では声を張らず、息にそっとメロディを乗せるくらいの感覚で優しく柔らかく歌い上げている。いずれもユニゾンでは聴けないような歌声だし、彼のボーカルの新たな一面が現れているなと思う。
そして須藤によるサウンドアレンジも絶品。個人的に一番好きなのは「Light & Shadow」だ。弦楽器を指で弾くピッツィカート風の音はくっきりしながらとても幻想的で、一瞬でリスナーの耳を虜にする。また宇宙を想起するようなラストの壮大なストリングスアレンジにも度肝を抜かれ、しばし呆然としてしまった。このように聴き手の心を奪い恍惚とさせる音が、今作には詰まっている。
まだライブ自体を観れていないのだけれど、ホールとか劇場で体験してみたいなぁ。と勝手に思う今日この頃。
●角銅真実『oar』
ceroのサポートコーラス&パーカションetcも務めている角銅真実。私はそこで彼女のことを知り、そしてその歌声の素晴らしさに鳥肌を立てていた。
吐息まじりに発せられるしっとりとしたチェストボイスと、小鳥のさえずりのように明朗で愛らしいファルセット。静寂に溶け込んでいく囁きのような歌唱法もひっくるめて、本当に唯一無二のボーカルだと思う。
そんな彼女は今作でメジャーデビュー。前作『Ya Chaika』は楽器をいきなりガラガラガッシャーンと鳴らすようなアレンジがあったり、全体的にボーカルよりもサウンドの方が音圧が高かったりしたけれど、今作『oar』は彼女の歌声がメインに据えられている。彼女の息遣いに合わせて、アンビエントなサウンドもゆっくり動き出す、といった感じだ。
個人的には今作『oar』の方が好み。渋みのある弦楽器やアコギ(チェンバロも使われているのかな?)の鳴りも、味わい深くてしみじみする。
●欅坂46『真っ白なものは汚したくなる』
2017年リリースですが。このアルバムを聴いて、率直に「欅坂46って良い曲ばっかりじゃん!泣」と大感激してしまいました。
まずいいなと思ったのは、Aメロにポエトリーリーディング(例:「世界には愛しかない」)やラップのノリでリリックを繰り出す(例:「エキセントリック」)手法などを用いて、掴みをしっかりさせていること。頭の10〜30秒を聴いただけでリスナーが「めっちゃかっこいいじゃん!」と食いつくような、インパクト大のボーカルが序盤から待ち受けている曲がいくつかある。
それから、彼女たちの歌も魅力のひとつだ。浮遊感のあるメロディを甘美なユニゾンでなぞる「二人セゾン」、チェストボイスでの合唱で温かみと包容力を表現した「渋谷川」、サビのファルセットが別れそうなカップルの切なさを痛切に感じさせる「沈黙した恋人よ」。どの曲の歌も美しくてさまざまな表情を持っていて、ストレートに心を打たれる。
「サイマジョ」や「不協和音」など、批判や皮肉を描いたシリアスな歌が欅坂46のイメージだという人が多いかもしれないけど(私もついこの間まではそうだった)、実は美麗で爽快な楽曲もたくさん持っているグループなんだということがわかった。これからもじっくりと聴き込んでいきたい一枚。
【2020年2月】
●cero『Fdf』
冒頭からゲームかおもちゃの武器みたいな音が流れて「もしかしてcero、ついにゲームミュージックまで始めたのか?!」と勝手に驚いていたら、アフリカっぽいカウベルの音が流れてきて「あっ、いつものceroだ……」となった作品(笑)。デジタルな音からアナログな音に瞬時にスイッチするこの縦横無尽さがceroだなと思う。
今作はとにかく重なり合いが素晴らしい。バンド+管楽器による土着的な音像の上に、UFOがふらふら現れたみたいな揺らめくシンセサイザーの音が鳴ったり、髙城晶平のメインボーカルに分厚いコーラスがついて、さらにそこに溌剌とした女声の合いの手が加わって……という、オールスターが集合してそれぞれが思う存分に己の力を発揮している感じ。
3分半くらいの曲だけど、技が詰め込まれすぎて面食らいます。そんで何度もリピート再生したくなる、魅惑の曲です。
●BIM『NOT BUSY』
前作もそうでしたけど、BIMの作品ってすごく聴きやすくて自然と再生回数が伸びるんですよね。それは適度に肩の力が抜けている楽曲が多いからかもしれないけど(それは今作のタイトルにも表れてる)。
でもただ脱力しているのではなくて、抜けている中でも大事なことはきちんと言葉にしているのが彼の音楽だと思う。今作でいうと「Runnin' feat. kZm, SIRUP」とかがそう。ゆるめのBPMとフロウをベースに、kZmとBIMの本音がヴァースとして展開。下の世代に対する焦燥感や“俺そんなお前に 憧れて”というラッパー2人の胸の内が明かされ、最終的にSIRUPの“次の街まで/We still running 止まるな”という鼓舞に辿り着く。テンポやフロウはゆるいけど、それぞれのアーティストが抱える葛藤や友情を垣間見ることができる、グッとくるナンバーだ。
ラストの「WANTED」も、“さぁ 歩いてく しょーもない未来へ”とカジュアルな言葉ながらも前向き。まぁなんでもいいからとりあえず進んでみよう、というラフなポジティブシンキングが今作に通底しているテーマかもしれない。
●THE KEBABS『THE KEBABS』
今作のリリースが発表された時、「デビュー作がライブアルバムだとーー!!??」……ってかなりの衝撃を受けました(笑)。でもその後ハルカミライとの対バンを観て(思えばこれが外出自粛前最後のライブだった)、なるほど、これくらいの爆発力だったらライブ盤でデビューしてもおかしくないわ……と一人で勝手に納得。そして今作を聴いて、うん、やっぱり間違ってない、と確信しました。
このアルバムを聴いて一番に思ったのは、これまでリリースされた音源(スタジオ録音されたもの)よりも圧倒的に音が鋭くて迫力があるな、ということ。ギターには歪みがかかっていて切れ味があるし、ベースは低音を弾むように奏でているし、ドラムにはパンクロックのそれみたいなパンチ力がある。またボーカルの佐々木亮介は、ややよれ気味に歌ったり、歌詞をその場で変えたりしながら、持ち前のしゃがれ声を存分に響かせていく。それぞれが思いっきり音を鳴らしたり歌ったりしていて、誰も遠慮や自重や制御をしてない。だからスタジオで録られたものよりもエッジィでパワフルな音像になったんだと思う。
バンド隊がガシガシ演奏して、トドメに佐々木が咆哮し倒す。THE KEBABSはそういうバンドだから、綺麗にパッケージングされたものよりも、荒さがあったり、アドリブが入ったり、観客の歓声や合唱が聴こえたりするライブ音源の方が生き生きして聴こえるのかもしれない。まぁ毎回ライブ音源でアルバムを制作するのは難しいだろうけど、これからもちょくちょくこういう形でリリースしていってほしいなぁ。こっちの方が、彼らの魅力がちゃんと表れている気がするから。
●Nozinja『Nozinja Lodge』
5年前の作品だけど、tofubeatsが率いるレーベル・HIHATTが配信している『THREE THE HARDWARE』という番組(詳細は【2020年3月】の欄に掲載した過去記事にて)を観ていたら、突如として「シャンガーン・エレクトロ」というワードが飛び出し、“そんなジャンルあるの?!”と思って聴き始めた。Nozinjaはこの分野の先駆者と言われている。
ジャングルっぽい高速ビートの上で、さまざまな音色の電子音などが飛び交うのがシャンガーン・エレクトロ、ひいてはこのアルバムの特徴だ。こんなにテンポ速くてどうやって踊るの?!と初めて聴いた時はびっくりしたけれど、聴いている内にだんだんこのビートが癖になってきて、気づけば小刻みに頭を揺らしている自分がいた。
また今作に惹かれる理由は、曲の所々に入れられる音のユニークさにもある。「Baby Do U Feel Me」には「にゃっ」という猫の鳴き声みたいな可愛い音が入るし、「Tsekeleke」にはめっちゃピッチを上げたボイスサンプルによる合いの手みたいなのが入るし、「N'wanga I Jesu」には「ピィ…ピィ…」という気の抜けた笛の音が入る。超速いテンポでかっこいいサウンドが展開されている中、そんな音がしれっと鳴り出すもんだから、はじめはそのシュールさにちょっと吹き出してしまった。でも今となっては大好物だ。シャンガーン・エレクトロ、引き続き掘り下げていきたい。
【2020年3月】
●tofubeats『TBEP』&サニーデイ・サービス『いいね!』
この2作品については以下の記事で書いたので割愛しますが、ほぼ毎日聴いてたなっていうくらいリピートしまくりました。5月の今でもよく聴いてます。
●Dua Lipa『FUTURE NOSTALGIA』
Dua Lipa、待望のセカンドアルバム。今作はタイトルにも表れているように、“懐かしいサウンド(80年代とかその辺りの音楽を参照したとのこと)で未来的な音楽を制作する”という指針で作り上げられた作品だ。
だからか、前作『Dua Lipa』とは音の感触がだいぶ違うように思う。前作にはバラードがけっこう収録されていたし、夢見心地でスイートなサウンドも多用されていたし、彼女がハスキーな低音ボイスで誘惑するミディアムテンポのラブソングが多かった。しかし今作は、ダンスミュージック、ディスコ、パワーポップなど、ハイテンポでアグレッシブな楽曲ばかりが収められている。
たとえば先行配信された「DON'T START NOW」は、ヴァースの大部分がベース&ドラムだけで構成されていてグルーヴの良さが際立った曲だし(音が骨太なのがまたいい)、「PHYSICAL」は無機質なシンセ音とダンサブルなビートの中で、Dua Lipaが気持ちいいほどに吠えまくっているナンバーだ。今作は色気よりもパワフルさや音楽的快楽をフィーチャーした作品なんだと思う。
しかし、変わったのはサウンドだけではない。リリックもまた然りだ。それを顕著に示しているのが、アルバムのラストを飾る「BOYS WILL BE BOYS」。この曲の詞は、彼女が少女時代に感じた男性の言動に対する恐怖や、“なんで私たち女性は恐れながら行動しなくちゃいけないの?”、“子どもたちも見ているし、このままで良いわけない”という思いをもとに綴られたもの。サビで繰り返し歌われる“boys will be boys/But girls will be women”というフレーズには、“少年はいつまでも少年のままだよね、少女は大人の女性になっていくのに(意訳)”というシニカルな意味が込められている。
Dua Lipaは今日まで、女性やマイノリティーの人たちを鼓舞して勇気付けるような行動を見せてきた。MVにレインボーフラッグを登場させたり、ゲイバーでライブをしたり、グラミー賞受賞のスピーチの際、レコーディング・ アカデミーの会長の女性アーティストに対する問題発言に、見事な“お返し”をしてみせたり。でもその姿勢というか、彼女が感じている“女性の生きにくさ”がここまで音楽や歌詞にはっきり表れたことは今までなかったと思う。勇気と使命感を持って、このような楽曲を発信してくれた彼女には称賛を送りたい。きっと『FUTURE NOSTALGIA』というアルバム名の“FUTURE”の部分は、この曲が暗示する“女性がより生きやすくなる未来”を意味しているんだろう。
*グラミー賞を受賞した時のスピーチについては以下。
【2020年4月】
●Shohei Takagi Parallela Botanica『Triptych』
またcero関連の作品ですが。無意識に再生ボタンに手が伸びていたし、もう呼吸をするように聴いていた気がする。
ceroのボーカル・髙城晶平によるソロプロジェクトの1stアルバム。今作はceroよりもちょっとダークでスモーキーで幻想的な、穏やかなソウルミュージックって感じがする。またリバーブが至るところに施されているのと、髙城の歌が静かに語りかけるものなので、どうしたって夢見心地な気分になってしまう。
あと彼もインタビューで言っていたけれど、全編にわたってローファイで録音されているのが味だな〜、と思う。まるで昔の映画を見ているかのような、ロマンチックでちょっと現実離れした雰囲気を醸していて、大いに心酔できる。今の日本でこういう音楽を作るのって、いやそもそも作ろうと思うのって、きっと髙城さんくらいしかいないんじゃないだろうか。
●くるり『thaw』
ツアーが中止になってしまった代わりに、なんと準備期間1ヶ月ほどで急遽リリースされた新アルバム。未発表曲を中心に収録。
ここには「やっぱりくるりっていいなぁ」って思える優しい曲もあれば、闇寄りなハードロックナンバーや変拍子が炸裂したインスト曲もあって、とにかくくるりの音楽のバリエーション&アイディアの豊かさに感激させられる。個人的には『図鑑』や『THE PIER』を初めて聴いたときを思い出すくらいの衝撃を受けた。
また、私的には「ippo」が一番好き。途中で岸田さんが〇〇節みたいな俗謡的な歌い方をするところがあって、そこがツボだったりする(“そりゃ一度や二度なら”の「や」の部分。母音を伸ばした時に声がちょっと揺らぐ)。岸田さんが時々見せるこういう日本的な歌い方、すごく惹かれてしまうんだよなぁ。血が騒ぐのかな。
あと「人間通」は必聴。ぶっとぶので。笑
●5lack『この景色も越へて』
なんで彼の作品にすごく惹かれるんだろう?とずっと考えていたんだけど、今作を聴いたら答えが出てきた。誰かを敵に回すかもしれないほどの鋭い本音や強気な発言を、ハイレベルなフロウで繰り出しているからだ。
たとえば「俺の成り立ち」。5lackお得意の延々ライミングの中で、“才能ねえラッパーはやめちまえ ラッパー増えすぎ2018 雑魚にかまってる暇はねえな”っていうやばいラインが出てくる(リリックは確認できていないので間違っているかもしれません)。
韻を踏んで踏んで踏みまくれること自体もすごいのに、そこでギラっと光るナイフみたいなパンチラインを出されたらそりゃ圧倒されますわな、って話。虚勢張ってないし、むしろ説得力ありまくりだから惹かれるんだ、って納得した。
…でもこんなにアグレッシブなのに、恋愛になったとたん急に奥手になっちゃうんですよね、5lackさん。「フレンズ」でのモジモジ具合がかわいすぎて、正直ちょっとにやけてしまいました。笑
●パソコン音楽クラブ『Night Flow』
「reiji no machi」のMVを見て「これはアルバムごと聴かないといけないやつだ…」と思い、即聴いた作品。CDショップ大賞にも入賞してましたね。
「reiji no machi」みたいなノスタルジックな音色、絶対みんな好きだと思う。
あと全体的に、寂しい夜に沁みるテクノポップが揃っている印象。ノリが良いけど情緒の要素も含まれているみたいな曲が多くて、ああ、こういう音楽を聴くために孤独っていうもんはあるんだなぁ…的なことを思ってしまったりする。笑 つまり独りが寂しくなくなって、むしろ嗜めるようになるアルバムなのだ。
インスト曲も、クラブでかけたら客が歓声を上げて爆踊りし出しそうな「Air Waves」がある一方で、一人の夜に、もしくは午前3時くらいのクラブで、踊り疲れて意識がぼんやりとしている時に聴きたいような、心の奥へ奥へと引き寄せられるイメージの「Motion of sphere」もある。“開放”と”内省”がセットになっているのが、彼らの音楽の特色のひとつなのかもしれない。
●坂本美雨 with CANTUS『Sing with me Ⅱ』
2016年リリース。坂本美雨作品の入り口として今作を選んだんだけど、もう、歌が尊すぎて、初めて聴いた時から完全に打ちのめされております。
このアルバムには聖歌隊のCANTUSが参加。優しくて透き通るような声を持つ坂本と、ファルセットを駆使し神聖さすら感じるコーラスを放つCANTUSの組み合わせは、まさに“美”そのもの。今作の再生ボタンを押すだけで空気が一変し、まるで教会に瞬間移動してしまったかのような感覚になる。
すべての楽曲が賛美歌のような尊さと美しさに満ちているわけだけど、それは声量やサウンドが必要最小限まで抑えられているから成り立つんだろう。“子守唄”が今作のテーマであるように、坂本の歌は“歌う”というよりも会話程度の声量で“歌いかける”ものだし、CANTUSの合唱も重厚というよりかは、ベールのようにうっすら敷かれているイメージ。また楽器もリズム系は一切使われておらず、ピアノやアコギやフルートがぽろぽろと鳴らされている程度だ。静寂の中に淡い美しさが立ち昇っていくような、そんな穏やかな音像なのである。
家で静かに聴くのがおすすめ。これからやってくる雨の季節にも良いかも。
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