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連想読書

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読みながら次の一冊が連想せられ落ち着きのない本読み軌跡
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2022年10月 童話・中華街・懐石

読み始めるや次の一冊が想起され、手あたり次第に読み散らす連想読書 自分が料理下手だとついに観念したのは、けっこぉ最近のこと。 それまでは、まーまー人並み、あるいはやや小優っくらいに思っていた。どう勘違いしたらそないな自己認識ができたのか。 世間を知らぬということは、恐ろしく、時々おもしろい。 料理の本は好きで、たくさん読んだ。というか買った。 なんとのー、それらの本を買うことで自分が素敵な料理上手になったよーな錯覚をしていたのかもしれない。 夢を買った、といえば美しいが、

2022年9月 犬・新宿・犬

読みながら次へ次へと思いが走り、一冊も精読できぬ連想読書 町田康『私の文学史』 NHKカルチャー青山教室にて4回に渡ったこの講座を受けていた約3ヶ月間、夢中だった。 霧中、でもいい。 前のめりで、つんのめって、倒れぬよう自然つま先立ちになって、延々つっ走るような気持ちで通い詰めた。 やや悪夢寄りの夢の中、全力で走っているのに自分の腿がまるで二隻の航空母艦のような重たさ愚鈍さでちーとも前に進まなかったり、ポップな幽体離脱のごとく身体が浮いては沈みを繰り返すような、自分の精

2022年8月 疏水・送り火・文楽

読みながら次の本が想起され片時も落ち着かぬ連想読書 森見登美彦「水神」 『きつねのはなし』所収。 先月に読んだ西東三鬼『神戸・続神戸』新潮文庫の解説が森見さんで。 このお人の名前聞ーたらきっとこの短編集が脳内に浮かびますねわ。 所収の4話(きつねのはなし、果実の中の龍、魔、水神)いずれもたまらぬ奇譚ぶりですけど、とりわけ「水神」が好み。 琵琶湖疏水開削工事に従事した高祖父。 ともすれば崩れる土留め、容赦のない出水。 土と水のあわいを人力で開いていく工程のどこかで遭遇して

2022年7月 毒・もぐら・神戸

読み始めるや次の本が想起され片時も落ち着かぬ連想読書 鈴木創士『ザ・中島らも』 月初に思った。 「鈴木創士、始めます」 そぉどっか。やっとくりゃす。 まずは訳書じゃないエセー(エッセイのフランス語読み)や小説などから遡って読もうと思い立つも、懐かしさに引っ張られてこちらを手に取ったんが発端。 某作家の作品中に友人「S」として何度も登場したお人の側から読む、人生の真夏。 そう来たら、やっぱりあれ再読せんならん… 中島らも『バンド・オブ・ザ・ナイト』 同じ時間、磁場?を生