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2022年7月 毒・もぐら・神戸

読み始めるや次の本が想起され片時も落ち着かぬ連想読書

鈴木創士『ザ・中島らも

月初に思った。
「鈴木創士、始めます」
そぉどっか。やっとくりゃす。
まずは訳書じゃないエセー(エッセイのフランス語読み)や小説などから遡って読もうと思い立つも、懐かしさに引っ張られてこちらを手に取ったんが発端。
某作家の作品中に友人「S」として何度も登場したお人の側から読む、人生の真夏。
そう来たら、やっぱりあれ再読せんならん…

中島らも『バンド・オブ・ザ・ナイト

同じ時間、磁場?を生きた両氏を読む。
人はいつかその物事の両面を知る。
これがわたしの今生で知り得たひとつの真理のようなもの。
そやけど左手に鈴木創士(Kindle)、右手に中島らも(文庫)。
こない即時に如実に両面見ぃ見ぃでけて、よろしのん?
あんまりいちどきにおもしろい思いしたら冥加に悪い気ぃする。
とか思いつつフーテン二人を両脇に飲むお酒を想像。
ああ怖。ああ楽し。
でもちょっと待って、あの話ってこっちじゃなくてあっちだったん?
ヘロヘロの二人を措いて、次の一冊へ…

中島らも『アマニタ・パンセリナ

時折かられるむやみな変化を求む心のまま、著名作家の本はすっくり売り払ったりもする。読みたくなったらまた買えばいい。
そうして今回は文庫で買い戻してみたけど、表紙のイメージはやっぱり単行本の真紫色のあれやんか。
あの毒々しい、マンドラゴラの花ってこんな色?と思わすあの真紫色やんか。
いや待てよ、これより毒々しい表紙の毒の本があったよぉな…

チチ松村 中山泰『毒のある本

らもチチ茸はいまも洞窟の、そない奥やのーて結構手前で妖しく光を放つ。
らもチチの魔境へまた踏み込みそうになる自分を面舵いっぱい、あるいはヘヤーピンカーブ膝付くほどの角度でぎゃっぎゃっぎゃっと軌道修正す。なんでや。
チチ松村→といへばサングラス→ほしたら、もぐら?と、こじつけるわけではないけれど…

鈴木創士『もぐら草子

当初読もうと思ってたもの。
よかった、こっちゃの世界に帰ってこられた。あぶなかった。
知ってる単語はほとんど出てこないにも関わらず惹かれるこのかんじは、あれだ。
10代の頃、少し年嵩の知人たちに混ぜてもらって過ごした時間を思い出す。
頭上を飛び交うアカデミックなよーなむっちゃ思慮深いよーな信じられんくらいおもしろいよーな会話にうっとり浸って、いま世界中のドアーがこちらに向かって開いていると錯覚する高揚を楽しんだ。
神戸も素敵な街なのでしょうね…

西東三鬼『神戸・続神戸

『もぐら草子』で一挙に知ったたくさんの文学作品から、神戸について書かれたこちらを選ぶ。
西東三鬼は俳人だからか、文章の“剪定”が効いている。って知ったふうに言ふな。
大胆に切り落とされても、いやそれだからこそ凝縮と速度を感じさせる文章に乗っかって、ひと息に読む。

作者の神戸での同棲相手の波子が終戦時に天皇の放送を聴いた際、
「波子は悲しみの涙というものを絶対に流さないで、それに堪え得る女だから、この時も嘔吐しただけで、泣かなかった」
という場面が一番好き。
そういや悲しい辛いに限らず、あらゆる感情の間隙を縫って吐き気が最初に来るって、ある。あれはどのような身体反応なのだろう。
そんな精神の強靭な波子が物語の舞台であるトーアロードに面したホテルに住まう猫らを一堂に集めて終日蚤取りをするっていうのも最高にファンタジー。
波子になりたい。
神戸~泣いてどうなるのか~…

稲垣足穂『タルホ神戸年代記

この中の「神戸漫談」が読みたくて。
でもどこからの連想だった?これの前に読んでた西東三鬼?それともその前の鈴木創士?
忘れた。
おっ、早くも連想読書のコンセプトを土台から覆す忘却。

稲垣足穂はその幻想的なイメージにあこがれて読み始めて『A感覚とV感覚』あたりでばっきり鯖折りにされたまま今日に至る。
キラキラしいとこだけ拾い読みしたらええんにゃ、ってね、うちもよーやく適当な大人になりましてん。おほきに。
他人の地所に入り込んでしみじみ土遊びしていたちょっと頭の足りひん幼少期の自分に降り注いでいた太陽の色までもうっかり思い出されてしまうようなタルホさんの濃やかな記憶と描写。に、酔う。

7月はこんな体たらく。
2階から目薬さしつつ、報告は以上です。
少しでも目玉の鮮度が戻りますよーに。
目やみ地蔵さんお参りせんならんし、ほなまた…


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