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映画『オッペンハイマー』完全ガイド(2)

「完全ガイドとか風呂敷を広げ過ぎたぁ」と思ってるじぃじです。


鑑賞時に買ったパンフレットを見て…

映画鑑賞の際に買ったパンフレットを見たら「CHRONOLOGY」が掲載されていたので、例によって Excel に打ち込んでみました。

Jロバート・オッペンハイマーの年表

この年表で、オッペンハイマーの人生が俯瞰できるのですが…
ひと目見て感じたのは典型的な大学教授のキャリアを全うした人なんだなぁってことでした。仕事柄じぃじには大学関係の友人が多いのですが、現在を生きる彼らの中にもオッペンハイマーとよく似たキャリアを辿っている人が多いのです。彼らは若い時期は学業に集中しているので、一般よりも早婚か晩婚の両極端に別れることが多いですし、少し羽目を外した青春時代を送る場合もある😛 が、30代後半になると自身の人生が定まってきます。

もっともオッペンハイマーの世代のアカデミアたちは、人生で最も精力的に活動できる40歳前後の数年間を軍事関連に費やさざるえなかった。これはオッペンハイマーと同様に今日では国家の英雄と称えられている、アラン・チューリング(エニグマ暗号の解読に成功した天才数学者)などと共通しています。ご本人にとって、人生の悲劇とは第2次世界大戦だったのではないでしょうかねぇ。もっとも、オッペンハイマーの場合は成功者のキャリアですし、その後は、成功者故の悲劇ですので…正しく時代に翻弄された人生だったのでしょう。

映画『オッペンハイマー』を鑑賞する際には

ここは書きすぎるとネタバレになってしまうのでサラッと…

映画では1954年のオッペンハイマー聴聞会がメインストーリーになっていまして、その過程でオッペンハイマーが自身の過去を振り返る形で、ケンブリッジ大学やゲッチンゲン大学の留学、カリフォルニアでの青春時代、そしてマンハッタン計画へのと話が飛びます。クリストファー・ノーラン作品らしい展開ですね。
オッペンハイマー失脚後のルイス・ストローズの商務長官の承認審問は1959年の出来事です。最後のエンリコ・フェルミ賞授与によるオッペンハイマーの(不完全な)名誉回復は、妻のキティの憎悪を演出する意図があったのだと思いますが、アイゼンハワー政権からケネディ政権へと移行する過程の事情がわかってないと混乱してしまうかも?
ここに書いたこと程度は理解しておいた方が鑑賞時に迷子にならないように思います。

もし第2次世界大戦がなければ?

最後に、もしオッペンハイマーがマンハッタン計画を率いることがなかったら?というじぃじの空想もしておきます。

年表にもあるようにオッペンハイマーは1938年にブラックホールを予言する研究成果を発表しています。Wikipedia の記述を引用しておくと…

1939年、ロバート・オッペンハイマーとその指導大学院生であったハートランド・スナイダーが、アインシュタインが成功を収めることになった流儀を真似て一つの思考実験を行った。二人は、大質量の星が燃え尽き、突然自重で潰れる時に何が起きるのか自らに問いかけてみたのである。当時、太陽のような軽い星の場合は地球サイズで鉄の密度にまで収縮することが分かっており、より重い星はさらに収縮が進み直径10マイル(16km)程度のボールに収縮すると、フリッツ・ツビッキーとウォルター・バーデが仮説を立てていた。オッペンハイマーらは、当時の物理学界を賑わせていた中性子星存在の議論の中で、恒星の崩壊後にできる中性子星の質量には上限があり、超新星爆発の後に生成される中性子の核の質量がその上限よりも重い場合、中性子星の段階に留まることなくさらに崩壊する重力崩壊現象を予言した。しかしオッペンハイマーは、ここまで研究を進めたところで原子爆弾開発を目的とするマンハッタン計画の責任者としてロスアラモス研究所の所長に任命され、ブラックホール研究からは遠のくことになった。

Wikipedia ー ブラックホール

つまりオッペンハイマーは、アインシュタインが相対性理論を発見した方法を真似て、星の終焉を思考実験を試みた結果、重力崩壊が発生しブラックホールができることを予想したようです。彼が亡くなった1967年、ジョスリン・ベル・バーネルパルサーの発見で、この予想は正しいことが証明されました。ちなみに、この発見により1974年にアントニー・ヒューイッシュらはノーベル物理学賞を受賞しています。

もしオッペンハイマーがスモーカーではなく、もう少し長く生きておれば、彼らと共にノーベル賞を受け取っていたのかも知れないし、今は天体物理学者の草分けとして人々の記憶に残っていたのかも知れませんね。

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