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住宅設計者の自分の家づくり 01 土地決定まで

事情により突然、全く予定していなかった家を建てることになりました。
人生はどうなるかわかりませんね。
折角の機会ですので、住宅設計を生業とする者が自分の家を建てるまでを可能な限り詳らかに記録していきたいと思います。

元々、仮に家を建てるなら子どもが巣立った後に自然が豊かな場所に小さな大人用の家をなどと夢想していたのですが、現実はまだ子どもは2歳。
当然、大人用の家どころではなく、子供といかに楽しく過ごしていける家になるかが主眼となり、今までぼんやりと思い描いていた「いつかの自分の家」像を叩き壊すところから家づくりが始まりました。

また、自宅と言っても施主が妻と考え、あまり「設計者の自邸」などと思わず普段よりもちょっと施主に遠慮がないプロジェクトくらいな感覚で、最初は割と気負わずにスタートしました。

土地を決めるまでのプロセス

さて、家を建てるには土地がいるわけですが、土地を探し始めて決めるまでの期間は1ヶ月程度でした。
多分平均よりはだいぶ短いと思いますが、これにはいくつか理由がありますが大きな理由としては

・エリアをかなり絞っていた(住んでいる場所の近く)
・必要な面積が明確にわかっていた(延床25坪前後)
・予算に(かなり)限りがあった

の3点になります。

まず、エリアについては長年住んでいた地域を離れるつもりがなく、近所で探そうとなりました。
土地を買うときに近所で探すメリットは

・土地勘があるので、坪単価に対する直感的な印象が持ちやすい
・探し回るのが楽
・家を建てる最中の様子が見やすい
・引っ越しも楽

などがあります。
特に「直感的な印象」は、同じ地域内でも通り一本違うだけで個人により価値観が変わってくるので「家を建てるならあの地域」とか「子供の学区が」などと思って探していても一見では判断が難しい場合が多いです。
これからの人生に対して数千万円の投資を行うことを考えると、できることなら住みたい地域に1年以上住んでから物件を探すことをお勧めします。

面積については、自分たちが生活するにあたって最低どのくらいの延床面積が必要かというのは見えていた(当時住んでいたマンションが70平米で特に問題がなかったのでプラス15平米前後あれば階段など考えても余裕)ということと、これまでの設計経験で実際の土地を見たときに単に建ぺい率、容積率で決まる面積ではなく実際に自分にとって快適な範囲で建てられるであろう面積というのがおおよそわかるという点があります。
後者は敷地図や周囲の写真だけではわからず、その場に立って周囲の動きや音なども含めて感じて初めて分かるものなので、ここでも「住んでるところの近く」というのは効いてきます。
ただ、この感覚は設計を重ねて身についたものなので、一般の方はできれば設計依頼予定の設計者に見てもらうのがベターかと思います。

最後の予算については、少なければ少ないほど候補が減るので多くを見る必要がないということと、予算内で条件がある程度揃った土地が次に出てくる可能性が少ないということで「もっと良い土地があるかも」と悩む必要がなかったのが良かったです。(ポジティブ)
あと1000万円予算が多かったら逆に悩んで決めにくくなってしまっていたかもしれません。

上記3点以外で土地選びで重視したポイントとしては

・静かに暮らせそうか(子ども以外の騒音はなるべく避けたい)
・窓の外の植物を見ながら暮らせそうか(揺れる葉を眺めたい)
・2階建てにできるか(3階になると準耐火建築物になり建設単価が上がりさらに設計の自由度が減るため)
・周囲の建物が建て替えになったとき問題なさそうか
・他の地域から遊びに来る人が少ない

の5点でした。

実際に探す際には会社で使える不動産業者専用のREINSは使わず、誰でも見れるサイトと足だけで探しました。
これは、私は不動産担当ではないのでREINSに不慣れで、不動産担当に調べてもらうという手もありましたが、性格的に自分で見つけたいというのがあり、地図上に候補が表示されるタイプのサイトだと見た瞬間に日々の生活のイメージが浮かぶので探しやすかったというのがあります。
ひょっとすると掘り出し物を逃す可能性もありますが、そこは縁と割り切りました。
この時点で金額と面積と地域だけで候補は10件以下に絞られ、実際に見た土地は3~4箇所程度でした。

土地の決定

結果、こちらの草が刈られている部分の土地(敷地図の青部分)が見つかりました。



行き止まりの西側2項道路(私道)に面したセットバック後約77平米強の東西に長い整形地です。
残念ながら周囲の自然はほぼ0ですが、行き止まりなのであまり関係のない人が通らない静かな場所というのはかなり良いです。
建ぺい率が60%、容積率が160%なので2階建てでも90平米強まで建てられるので、必要面積としてもじゅうぶんで、40%分で外部の植栽スペースもまかなえます。
用途地域は中高層住居専用地域ですが高度地区が1種(東京都は6寸勾配斜線)と厳しいため、今は空き地の南側(草ボーボー部分)に斜線目いっぱいで建っても2階の日照はある程度確保されるというのが2階建てで済ませたい身分としてはありがたいです。
間口が6m以上あるので、建物もそれほど無理な形にする必要がなく、東西に長く、上記のように南からの日照は2階については将来的にも確保できることから計画はしやすい形状です。
また、私道部分について自家用車を入れないという協定があり、これが多くの人にとってはネックになったため少し相場より安かったのですが、うちは車を買う気がないのでむしろ好都合というの縁を感じました。
私道だからかわかりませんが、Googleストリートビューでも見られないというのもちょっと嬉しいポイントです。
防災関係では、ハザードマップなどでも特に問題はありませんでした。
また、契約前に地盤調査を行う了解を得ることができて、木造の2階建てには全く問題ないことがわかったのも良かったです。
ちょっとしたことですが、お隣の土地が少し早く購入され、近い時期に住み始める人がいるとわかっているというのも安心感の一つではありました。

もちろん、西日が厳しく当たるとか、2面が集合住宅に面しているなど欠点と考えられる点もあることはありましたが、致命的なものはなく、全ては設計次第で大丈夫だろうという思いでここに決めました。

この土地でどのような家を設計するか、次回からプランニングに入ります。

※この記事は2019年に自社ブログに書いた内容に加筆訂正したものです
竣工後の写真などは下記リンク先でご覧いただけます。


このシリーズをマガジンにまとめておりますので、こちらも併せて是非ごらんください。


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