住宅設計者の自分の家づくり 05 天井高さと居心地
前回、平面的な決定プロセスを書きましたが、同時に高さ方向の検討も進めます。
平面計画というのはどちらかというと用途の整理という側面が大きいですが、高さの計画は居心地に大きく影響してきます。
一般的な天井高さの考え方
居室の天井高さは世の中的には2.3~2.4mになっていることが多いですが、個人的な感覚としては10畳以下の部屋(主に個室)については2.2m程度がちょうどよく感じます。
先人の教えで2.1mくらいの方が落ち着いた感じになると刷り込まれてきたという事実があるものの、やはり身長によるというところで、そこまで低いと個人的には普通に手を上げただけで天井に手があたったりとちょっとストレスが溜まりそうです。
一方で部分的に、例えば書斎的な小さなスペースなどだけ1.8mくらいまで抑えると籠もる感じが出て良いものです。(建築基準法施行令で居室の天井高さは2.1m以上という規定があるため居室の場合は平均天井高さを使うなどの工夫が必要になります。)
リビング的な広い空間(12畳以上目安)においては個室の低めの天井に対比させる形で勾配天井にするか平天井でも個室より2割以上高くできるとメリハリがついて良いのではないでしょうか。
リビングでも外部に目線を飛ばせる場合などはあえて低い天井にして外部の広がりを楽しむという手法もありますが、施主にとってはなかなか心理的にハードルの高い選択になりますし、私が設計することが多い住宅密集地ではなかなか無いシチュエーションです。
1階の天井高さ設定
というわけで、今回は1階は小さめな個室が続くため天井高さを2.2mに設定しました。
一時期、廊下だけ部分的にトンネルのように天井を下げるなども検討しましたが、1フロアの狭さと玄関から寝室まで仕切りがないこともあり天井高さを上げ下げすることよりは天井が家の端から端まで続いて視線が抜けることのメリットを優先し一律同じ高さになりました。
ちなみに1階の天井が低いと階高も小さくなり、結果階段の段数も減り必要な面積も小さくなるなどのメリットもあります。
天井を低めに設定する際に特に気を付けたいのは天井面になるべく何も付けないということで、実際は天井が高くてもやはり何も無い方がきれいで良いのですが、天井が低いとその効果はより顕著です。
今回はダウンライトを使わず火災報知器や換気扇も壁の目立たないところに設置し、1階は収納部以外の天井には玄関に一つペンダントライトを吊る以外は何も付けないよう設計しました。
ペンダントライトも、付け根の部分が出てくるとうるさいので、天井から少し上げた場所に設置するようになっています。
2階の天井高さ設定
2階の天井は、1階のやや暗く落ち着いた雰囲気から階段を上った時に急に明るく開けた印象にしたく、高めの天井設定を考えていました。
最上階にリビングがある場合は、吉村順三先生の教え「懐はなるべく薄く」に従い屋根なりに必要最低限の天井懐で天井面を造るのを基本として屋根に合わせた勾配天井にすることが多く、今回もそのパターンになります。
勾配天井にする際は一番低い壁際の高さは2~2.2mとすることが多いのですが、今回は階段を上って正面にあるデッキへの出入り窓の高さで決まりました。その窓の高さはどのように決めたかというと、まずデッキは2階の床よりも30cmほど上げて窓際をベンチ的に使えるようにしようという思いがあり、ベンチから外に出る時に大抵の人が頭をぶつけずに出入りできる高さとして1.9mを開口高さとすると床からの高さが2.2mになりちょうど良い具合になりました。
続いて屋根の勾配ですが、まずは天井高さが最大になる高度斜線に沿った6寸勾配から検討を始めます。
この場合最高高さは3.667m。このくらいだと6尺の脚立で一番高いところまで手が届くので何かと安心だし柱も4mの材で間に合うので搬入も楽ですし不要なコストアップの心配もありません。
そこから徐々に勾配を緩やかにしながらプロポーションなどを検討していきましたが、今回は南面に天窓を設けることになり、冬至の南中時に太陽の角度と天井勾配が一緒になるときれいだなということで結局6寸がベストと判断しました。
同じ2階でもキッチンは天井が低い方が作業的にも落ち着くのでここは平天井にします。1階同様の2.2mでも良かったのですが、設置したいレンジフードの最小高さとタイルの半端が出ない割付から2.25mになりました。天井懐がもったいないので最初は小屋裏収納にしようかと思いましたが、不要なものを溜め込むだけになりそうなので発想を変え、小屋裏冷房というものを実験してみようと思い冷房器具を置いたりする機械室的な利用をすることにしました。
子供室は4畳に満たない狭い部屋なので2段ベッド的なものを視野に入れた部屋づくりが考えられ、そうなると実用重視で勾配天井にして少しでも高さを取っておいたほうが良いとなりリビング同様の天井高さとなりました。
階段周りの天井高さは、トレッドミルを置く階段下は2.1m、階段踊り場の読書スペースは小上がり(あくまで家具ですが)を設置した場合1.9m、小上がり上の一番低い箇所は1.2mとそれぞれお籠り感のある設定としています。
立面の高さ
内部の高さを検討するのと同時に外部の高さも考えていきますが、高度斜線や道路斜線との兼ね合いを検討すると1階の床高を地盤面から25cmまで下げないと高度斜線に引っ掛かります。これは通常(50cm前後)よりかなり低く、1階の床高が土台上端(今回は地盤面から42cm)より低いというのは配線配管等で面倒なことが多々あるのですが、そこは良く考えれば何とかなる部分でもあり、ハザードマップ上浸水の心配はまず無い場所でもあったため通常より低い床高で進めることにしました。また、この高さでも道路斜線はクリアできず、ここは天空率で逃げることになりました。
そんなこんなで決まった立面がこちらです。
次回は窓について書きます。
※この記事は2019年に自社ブログに書いた内容に加筆訂正したものです
竣工後の写真などは下記リンク先でご覧いただけます。
このシリーズをマガジンにまとめておりますので、こちらも併せて是非ごらんください。