JOKER フォリ・ア・ドゥ(2024) ①総評
ずっと楽しみにしていたJOKERの続編を観た。宣言通りパンフレットも購入。1とはまた違うベクトルの衝撃があり、主演のホアキン・フェニックスを含め製作陣の並々ならぬ気概を感じる作品だった。前作で世界中を席巻したJOKER。さてどうやって落とし前をつけようかーそんなことを考えながら制作したのかもしれない。
一言で表すのであれば
前作はJOKERの誕生
今作はJOKERの死
あまりに書きたいことが多いため2部構成でいこうと思います。この記事では総評について書き、別記事で深掘りしていきます。いずれも結末を含むネタバレを多分に含むので、未見の方はくれぐれもご注意ください。
<あらすじ>
<総評>
世間的にはかなり賛否両論あるようだが、あくまで一作目の続編であり、アーサーをより掘り下げた作品としては申し分のない出来だったと思う。前作を踏まえてのアンサーとしては十分にその役割を果たしていた。
前作はアーサー・フレックという心優しい中年男性が、不幸の連続で社会の底辺へと転がり落ちて、JOKERという架空のキャラクターに辿り着いたところで終わった。ピエロの格好をしたJOKERはまさに道化そのもの。狂気じみた群衆から賞賛を浴びる彼は、輝きの中に一抹の不安定さを滲ませていた。
今作ではアーサーとJOKERという異なる人格の違いに焦点が置かれており、主には法廷でのやりとりを通して二人の間に境界線を引こうとしていた印象だ。そして最終的にアーサー自身によってJOKERは否定され、その瞬間にJOKERは死んだのだと思う。そもそもアーサーの願望を具現化した姿であるから、彼の承認なしでは生きていけない。
そしてもう一つ衝撃だったことは、JOKERが消えた瞬間にどこか失望した自分がいたこと。それはつまりレディー・ガガ演じるリーや、ゴッサムシティーの市民の反応と全く同じなのである。個人的にはアーサー・フレックという人物もかなり好きだと思っていたのだが、やはり声なき声を代弁してくれるJOKERを彼の中に求めていたのかもしれない。結局のところ自分もあの群衆の一人に過ぎないのではないかという思いが鑑賞後にじわじわと襲ってきて、胸が締め付けられ苦しかった。
「ミュージカルである必要性が分からない」というレビューを比較的よく見かけるが、私はむしろミュージカルで良かったと思う。前作の階段ダンスを始め、アーサーはもともと感情が高まると独特のダンスを踊る癖があった。今回はそれに歌が加わることで、より丁寧に感傷的に心境を表現している。セリフで淡々と表現するよりアーサーらしいと思うし、That's Lifeを始め印象的なBGMのイメージも非常に強い作品だったため、音楽との親和性は高いだろう。
私個人がミュージカル映画好きで抵抗がないというのもあるが、そこまで強引で突飛な設定には思えなかった。妄想癖のあるアーサーなら、ショーで歌やダンスを披露し注目される自分を想像していたとしても何ら不思議ではない。ガガの圧倒的な歌唱力も相まって感動するシーンがいくつもあった。
一作目の隣人に対してもそうだが、すぐ人を好きになってしまう単純さ(極端さ)は良くも悪くもアーサーらしい。自分を全肯定してくれるか、さもなくば全否定される(=殺害して排除する)という短絡的な思考は、アーサーが愛着障害を抱えている証拠に他ならない。他人との距離感が分からないのだろう。でもあれだけ傷つき闇に堕ちたアーサーにも、これだけ情熱的に人を愛する(愛したい)心が残っていることに素直に感動した。もちろん思慮深さには欠けるし妄想と現実の区別は曖昧なままだが、愛と憎悪、その紙一重の感情の狭間で激しく揺れ動くところがたまらなく彼らしい。
映画ラストでアーサーが他の収容者にめった刺しにされて死ぬという結末は、それこそエンターテインメントとしてのパンチはあったものの、JOKERという逃避場所を失い、死刑判決もほぼ確定していたアーサーにとってはそこまで重要なことではなかったと思う。アーサーとJOKERという人格の統合(つまりは決別)、そしてアーサーが逃げずに自分の力で苦しい現実に向き合うことができたこと。それが本作のクライマックスだったのだと思う。
繰り返しになるが、世界をさらに熱狂させるダークヒーロー映画として作ることも十分できただろうに、あえてアーサーから隠れ蓑であったJOKERを切り離すという大胆かつ冷酷な選択。監督とホアキンが出した答えはこれなのだ。そしてそれを堂々と世界に発信する気概には本当に恐れ入った。アーサーという人間を隅から隅まで余すところなく表現したいという決意を感じるし、ある一定のネガティブな批判を喰らうことは織り込み済みだったのかもしれない。
次回の記事ではより詳細な感想、考察について書きたいと思います。特にめちゃくちゃ重要な役割を果たした元同僚ゲイリーのことが書きたいので、、
皆様のコメントも是非お待ちしています。
※追記
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。