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Xエックス(2022) エロ・グロ・老い

 主演のミア・ゴスをこれでもかとゴリゴリに推しているA24初の三部作ホラー第一作目。この後に「Pearl パール」「MaXXXine /マキシーン」(7/5アメリカ公開)と続く。私はパール未鑑賞だが気になっているところだ。

 ポルノ映画を撮影していた若者があたおか老夫婦に襲われる本作。ちょっと全裸監督のようなシーンもあるのだが、かといってチープな色物とはならず、怖さ、グロさ、切なさをバランスよく織り交ぜた美しくてエモい(エロい)ホラーに仕上がっている。R15で良いのかはちょっと疑問。老夫婦が身体を重ねるシーンはインパクト特大。これほどモザイクの必要性を感じたのは初めてだ。

<あらすじ>

1979年、テキサス。女優マキシーンとマネージャーのウェイン、ブロンド女優のボビー・リンと俳優ジャクソン、自主映画監督の学生RJとその恋人で録音担当のロレインら6人の男女は、新作映画「農場の娘たち」を撮影するために借りた農場を訪れる。6人を迎え入れたみすぼらしい身なりの老人ハワードは、宿泊場所となる納屋へ彼らを案内する。マキシーンは、母家の窓ガラスからこちらをじっと見つめる老婆と目が合ってしまい……。

映画.com

<感想>

 ポルノ映画の撮影のために集まった若者たち。当然撮影シーンも入るため、序盤はややアダルトなシーンが続く。それを目撃したパールおばあちゃんが発情してしまい、画面全体に不穏な空気が流れ始める。その先はテンポ良く若者が夫婦の餌食になっていくが、一人一人の殺され方が割と残酷で血飛沫の量も多いところがポイント。しっかりとホラー演出を作り込んでいるところは評価できる。主人公は始終「裸オーバーオール」だし、トップレスはもちろんのこと(死体ではあるが)ご立派な息子も登場するなど、グロ×エロの組み合わせが素晴らしい。

 パールはマキシーンの若い肌を羨ましそうに見つめ、自分もナイトドレスを着て夫を誘惑する。「心臓がもつかどうか…」と呟くヨボヨボの夫と久しぶりに身体を重ねる。夫側が戦闘モードになることがまず驚きではあるが…。マキシーンに追い詰められ「いつかお前も私のようになる」と叫ぶパール。加齢により性的な魅力、特に女性性を喪失していくことの焦りや孤独が感じ取れて切ない。歳を重ねて人間としての魅力を増していく一方で、「若さ」が持つ全能感には何をしても及ばない部分もある。決して他人事ではない。パールが一体どのような人生を送ってきたのか、ここら辺は続編でしっかり描かれているだろうから鑑賞しようと思う。予告編を見る限り若い頃から暴れていたようだ。

 他に私が思う良いところは、マキシーンたちのチームメンバーに根っからの嫌な奴がいないところ。撮影のためならパートナーをとっかえひっかえする彼らは、ガールフレンドが撮影に飛び入り参加してしまい男泣きしているRJ以外は特殊な癖を持っていそうではあるのだが、表面上は皆老人に優しく接しようとしている。若者たちの姿は輝きを失った老夫婦と対照的でありながら、彼らは彼らでアメリカンドリームを夢見てど田舎でポルノ映画を撮影しているという苦しい状況。若さ故の向こう見ずな勢いと危なっかしい言動に、どこか儚さを感じてきゅっと胸が苦しくなる。私もいつの間にか歳をとった。1979年という時代設定であるため、どのカットも古き良き時代の懐かしさと哀愁を感じさせる。芸術点が高く美しい。

 主演のマキシーンと老婆パールをどちらもミア・ゴスが演じているというのは素直に驚き。パールを演じる際の特殊メイクに9時間もかけたとか。メイクだけで定時まわっている。

 まずは2作目のパールを鑑賞して三部作しっかり見届けようと思います。こちらのXは現在Amazonプライムビデオで見放題配信中です。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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