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イノセンツ(2023)やっと本当の姉妹になれたのかもしれない映画
兼ねてから面白いと聞いていた作品。アマプラで見放題になっていたのでやっと鑑賞に至った。これはまたすごい着眼点だ。子供ならではの無垢な残虐さに超能力を組み合わせたサイキックスリラー。北欧映画特有の映像の美しさや無駄のない演出も作風と良く合っていた気がする。
〈あらすじ〉
ノルウェー郊外の住宅団地。夏休みに友人同士になった4人の子どもたちが、親たちの目の届かないところで隠れた力に目覚める。子どもたちは近所の庭や遊び場で新しい力を試すが、やがてその無邪気な遊びが影を落とし、奇妙なことが起こりはじめる。
〈感想〉
※結末には触れません※
もう少し詳細なあらすじから。
主人公は4人の子供たち。
9歳の少女イーダと姉のアナ。アナは重度の発達障害があり言葉を話すことができない。新しく団地に引っ越してきた姉妹は、近くに住むベン、アイシャと仲良くなる。ベンは物に触れずに動かすことができ、アイシャはアナとテレパシーのようなもので繋がり互いの思考を共有することができる。
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最初は仲良く遊んでいた4人だが、ベンの能力が次第に力を増し、やがて暴走し始める。邪魔な人間を排除するようになったベンは、自分を邪険にしていた母親、いちゃもんをつけられた友人などを次々と手にかけていく。最初は物を動かすだけだったのが、いつの間にか人間も思い通りに操れるようになっていた。
映画冒頭ではベンの能力を面白がっていたイーダだが、明らかに度を越した行動をとるベンに恐怖心を抱くようになる。そこで姉のアナ、友人のアイシャとともにベンの暴走を止めるために力を合わせていく。
ざっとあらすじを説明するとこんな感じ。
一見するとベンがただの悪者のように見えるが、ベンの家庭はほぼネグレクト状態であり、母親に対する複雑な思いを抱いていたことが窺える。実際母親を殺害した後も「ママ、、」と言って泣き崩れるシーンがあり、ベンも心の中で葛藤していたと想像できる。
イーダも映画冒頭ではどちらかというとベンよりな、やや意地悪な少女として描かれている。両親は姉のアナの世話にかかりっきり、アナは何をしても表情すら変えないため、思いきり太ももをつねる描写もある。しかしアイシャの能力を通じてアナにも感情があり頭の中では色々と思考していることを知り、初めて姉妹として心を通わせるようになる(←この過程が激アツです)
アイシャの家庭も母子家庭であり、本人は白斑と思われる持病を患っている。
イーダ以外の子供たちにサイキック能力があることはさておき、それぞれの子供たちが抱えている問題や障害がとても巧妙に描かれており、残酷でリアルな世界観に惹きつけられる。ベンの暴走は容赦なく「次は一体何をするんだろう」という恐怖心も去ることながら、それを止めようと身体を張って奮闘する子供たちの姿に胸が熱くなる。
繰り返しになるが、最初は言葉も話せなかったアナが、アイシャの優しい導きにより少しずつ自己表現ができるようになり、両親や妹と心を通わせていく姿が本当に胸熱だ。子役たちの演技は非の打ち所がない。
姉妹の両親含め周囲の大人たちは、子供たちの静かなバトルには一切気付かないまま映画は終了する。しかしこの4人以外の子供たちは何となく察しているような描写があり、この映画は子供たちの純粋無垢な恐ろしさを描くとともに、大人たちの無関心を批判しているようにも感じられる。
文章にするとなかなか良さが伝わらないこちらの作品。グロ描写はマイルドなので気になった方はぜひご鑑賞ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。