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神が描くは曲線で(2022) 2時間半の尺も気にならない良作サスペンス

 スペイン産のサスペンス映画。Netflixオリジナル作品だ。2時間半という長尺には怯んでしまうが、ネット上の評価が高かったため鑑賞してみた。

 サスペンスとしてのクオリティが高く、さまざまな伏線やトリックが巧妙な映像を通して表現されていた。最後の最後まで真相が分からず、ラストを観ても最終的な解釈は観客に委ねられる。サスペンス好きなら楽しめるだろう。こんな尺だけど2回観たくなる不思議。

〈あらすじ〉

パラノイアを患っているとして、精神科病院に入院することになった私立探偵。彼女の目的は、ある患者が謎の死を遂げた事件の真相を探り出すことだった。

Netflix

〈感想〉

※以下ネタバレを含みます※

あらすじを読んでまず感じること。

シャッターアイランド…?

 その直感はあながち間違いではない。レオ様は捜査官として精神病院に潜入したが、今作の主人公アリスは患者を装って精神病院に潜入する私立探偵だ。この病院では一年前に患者が不審死を遂げている。アリスはその捜査を頼まれ、妄想癖のある精神疾患患者を装って病院に入院する。

 この時点でアリスの正体と動機を知っているのは、捜査を依頼した被害者の父親(デルオルモ)と病院の院長、アリスの夫、そして私たち視聴者だけだ。他の病院関係者や患者たちはアリスを本当の患者だと思って接する。

 アリスは非常に頭の回転が早い女性で、医師との面談は軽々とクリアする。どこが病気なの?と思われそうなくらい普通に振る舞うのだ。ある日、休暇で留守にしていた院長が病院に戻ってきてアリスと対面する。早速調査の進捗状況を説明するアリス。すると院長は驚きの言葉を発する。

「君とやり取りをしたことはない」と。

 ここから物語の様相は一変する。え?アリスの言動がおかしいの?という疑念が我々視聴者の中に湧き上がる。通常ならここで映画が終わっても良さそうだが、さらに二転三転するのがこの作品の憎いところ。依頼を受けて潜入捜査をしているというアリスの主張は理路整然としており、実際にそれを裏付ける証拠も出てくる。すると今度は院長に疑念の目が向くわけだ。アリスの夫とグルになってアリスをこの病院に送り込み、アリスの財産を狙ったのではないかと。実際にアリスの夫は20倍も多く入院費を支払っており(院長に妻を幽閉してもらうため)、そのまま行方をくらましているのだ。

 他の医療スタッフや患者たちもアリスの味方になっていく。

 圧倒的に劣勢となった院長は全員に責められながら病院を去ることになるが、ラストシーンでまたも事態が一変する。アリスが依頼者だと思っていた人物は、院長の知り合いの精神科医だったのだ。「今度は何をしでかした?」と語りかける男。アリスは困惑した表情でカメラ目線となり映画は終了。それでもなお、この捜査依頼も含めて全部嘘でアリスは被害者という可能性も残る。

 結局アリスは健常なのか異常なのか。どちらともとれる絶妙な構成であり、決断は視聴者に委ねられる。

 この映画、実はかなり冒頭から巧みなミスリードが仕掛けられており、我々はすでに騙されていることが終盤で明らかになる。時系列がごちゃごちゃになりやすいのと、やや複雑なプロットのため考察サイトを熟読したいタイプの作品だ。最後まで誰を信じれば良いのか分からない不安感と推理しながら観るワクワク感は楽しい。あとは、アリスに協力してくれる医療スタッフや個性的な患者さんたちが皆良い人で癒される。

 秋の夜長に謎解きミステリー映画はいかがでしょう。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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