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PIGGY ピギー(2023)リベンジものでもホラーでもない良作
インパクトのある主人公の風貌が目を惹き、ずっと気になっていた作品。気づいたらアマプラで見放題になっていたので鑑賞。宣伝文句のようなリベンジものやホラーではなく、虐められる少女の葛藤を描いた良作スリラーだった。
〈あらすじ〉
スペインの田舎町で暮らす10代の少女サラは、クラスメイトから執拗ないじめを受けていた。ある日、あまりの暑さに耐えきれず1人で地元のプールへ出かけた彼女は、そこで怪しげな男と、3人のいじめっ子たちに遭遇する。その帰り道、サラは血まみれになったいじめっ子たちが男の車で拉致されるところを目撃。警察や親に真実を打ち明けて捜査に協力するべきか、それとも沈黙を貫いて自分を守るべきか、決断を迫られるが……。
〈感想〉
※以下ネタバレを含むのでご注意下さい※
主人公はサムネにあげた少女サラ。友人からは体型のことで馬鹿にされ、酷いイジメを受けている。ある日、1人でプールに入っているところを同級生たちに目撃され、散々揶揄われたあげく着替えやタオルを盗まれてしまう。水着のままとぼとぼ帰宅していると、先ほどまで自分を苛めていた女子が、流血した状態で見知らぬ男の運転する車に乗せられていた。必死にサラに助けを求めるいじめっ子。サラはその場では何もせず、通報もせずに帰宅した。その後、唯一の目撃者として良心の葛藤に悩まされることとなる。
映画のポスターは血まみれのサラの姿が印象的で、てっきりサラが覚醒していじめっ子たちに復讐していくストーリーかと錯覚するが全然そんなことはない。サラは自分が目撃した内容を家族も含めて誰にも打ち明けることができず、悶々と日々を過ごしていく。
その場ですぐに助けを呼ばなかったことがバレれば自分の立場が危うくなるし、いっそこのままいじめっ子達が殺されてしまえばいいという気持ちも少なからずあったように思う。
誘拐犯については深い掘り下げがないのだが、あまり言葉を発さない暴力的な男である一方、なぜかサラにだけは異様に優しく接してくれる。思春期真っ只中であるサラは、悪い男だと分かっていながら心を惹かれ、妄想しながら夜な夜な自分を慰める。犯人の動機などについてもう少し知りたい気持ちもあったが、このよく分からない感じがミステリアスで良いのかもしれない。
サラの母親は娘思いではあるが自分の考えを押しつけるタイプで、あまりサラの話を聞いてくれない。娘が一連の事件に関して何か知っていることを察しながらも、娘を庇い警察に嘘をついてしまう。
女優さんの演技力も相まって、ティーンが抱える異性や家族との問題を丁寧に繊細に描いていると感じた。映画終盤、犯人と一騎打ちとなったサラは恐怖をこらえて必死に男と戦う。誘拐された女子たちは一人が遺体で見つかり、あとの2人は縛られて天井から吊るされている。叫んで命乞いするも「早く助けなさいよ!サラ!」という感じで、この期に及んでまだ上から目線だ。私なら絶対見殺しにしていたと思うがサラは二人を解放する。
最後はいじめっ子と仲良しの陽キャイケメンと出くわし、バイクの荷台に乗せてもらって帰る。そっと男子の背中に体を委ねるサラ。そのまま映画は終了する。このラストシーンもすごく切なくて哀愁があって最高だった。きっとサラはこのイケメンに選んでもらえることもないし、助けた女子たちも変わることはないだろう。正義を貫いたって報われない。でも誰かの命を救ったという行為が、いつか未来のサラを救ってくれるだろう。というかそう信じたい。
奇をてらった映画に見せかけて中身はしっかり作り込まれたこちらの作品。グロ要素も控えめなので興味を持った方は是非ご鑑賞ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。