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ある涼しい夏の朝


久しぶりに朝早く目が覚めた。

今日はめずらしく、まだ涼しい。なんとも気持ち良い風が部屋の中に吹き込んだ。 

よし、散歩にいこう。

服を着替えて、キャップを被って、メガネを装着。
すっぴん+メガネ+キャップ
この装備だと、おそらく誰にも気付かれないだろう。

私が住む町は田舎なので、
「誰々が散歩しているらしい」など、日々の動向は筒抜けなのである。

別に散歩していることが知られても、何も困ることはないし、
「誰も君のことなんて見ていないよ」
と声が聞こえてくるが、
なんとなく恥ずかしいと思うのは、この自意識過剰な性格のせいだろう。



朝の散歩をするのは久しぶりだ。

暖かい日差しを背中に感じながら、まだ寝ぼけている街を歩くのは、とても気持ちが良い。

ああ、いい風。

どこかでシャッターを上げる音がする。

今日もまた新しい1日が始まったんだなあ。


あまりの気持ちよさに、ニヤニヤしながら(周りに誰もいないし)歩いていると、

全身にまとわりつく不快な感覚。もしかして。

…これはアイツだわ。


蜘蛛の巣だわ。まじかよ、こんなとこに張ってるんかい。え、ちょっと待って、取れないし、なんかまた新しい蜘蛛の巣が引っ付いてきてるんですけど。これ、終わりあります???

さっきまで、「しっかり腕を振ってウォーキングしている人(半ニヤケ)」だったのに、
いつのまにか「ただ蜘蛛の巣を取りながら歩く人(少々キレ気味)」になっていた。


なんとなく気分が盛り下がってきたくらいで、折り返し地点に来たので、蜘蛛の巣を取り払い、ストレッチを行う。

ちょっと座って、本でも読もうかしら。
朝に散歩して、読書をするだなんて、意識高い系OLのモーニングルーティンみたいじゃない??今のわたしいい感じじゃない??



いや、あかん。集中できひん。内容が入ってこない。なんかまだ蜘蛛の巣がまとわりついている感じがする。はよ家帰ってシャワー浴びたい。
もう頭の中が、蜘蛛の巣・シャワー・蜘蛛の巣・シャワー…
本を開いて1ページで断念。

帰ろう。


帰り道は、数十分前の私が犠牲となったおかげで、何も気にせずスイスイ歩くことができた。

家が近づいてきた。
あっちの公園まで行こうかな、と思いかけたが、いやいや、何を考えているんだ私は。
私にはシャワーが待っているじゃないか。いや、私がシャワーを待っているのか?(どういうこと?)


無事にシャワーを浴びることができ、きれいさっぱり。
さて、朝ごはんにするか。


今日はとても良い1日のスタートが切れた気がする。
遅寝遅起きが日課であるわたしにしては、意識が高すぎる朝だった。これで地域のラジオ体操に参加していたら、完璧だったのではないだろうか。

否、そもそもすっぴんで出歩いた時点で意識高い系とはいえないか。

意識高い系OLのモーニングルーティンを実行できる日はまだ遠い。


そういえば、まだ背中の方がモゾモゾするような。シャワーを浴びても、未だまとわりつく感覚。恐ろしき、蜘蛛の巣。

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