最終回の授業へのフィードバックから

とってもとーっても遅くなってしまいましたが、第14回(最終回)にもらったフィードバックのご紹介とそれに対するコメントをお送りします。
最終回ですし、もうこれだけ遅くなってしまいましたので、フィードバックとしていただいたものはすべてここでご紹介していきたいと思います。
ですから今回はとても長くなりますがご了承ください。
それではいきましょう!

  • 研究室の話が聞けて良かった

B2のみなさんにはまだ1年以上先のことですが、B3の2月に研究室の配属調査があります。それまでにいろいろな研究室を覗きに行って、先生ばかりでなく大学院生の先輩方のお話を聴くことをお勧めします。各研究室での皆さんの experience について、インフォーマルでありながら、とても豊富で信頼できる重要源です。
もちろん2月にある修士論文発表会や、特定課題研究発表会、3Qの研究プロジェクトや1月の研究室説明会などフォーマルな情報源もお勧めします。

  • デザイン買いはマーケティング戦略では非常に重要だと、実生活から非常に理解していますが、梅室研究室では、美術的だったり図形だったり色などの総合的なデザインやUIなどの研究も行っていますか?

大昔(10年以上前)は aesthetics にも興味を持っていた時期もありましたが、最近はあまりやっていません。もっと intangibleで、かつ深い experience を与えられる interaction design に重点を置いています。

  • レモン搾りの話を聞いて、現代の人たちは便利なものを求めすぎて、本能的に感じる美しさや魅力を軽視する傾向にあるのではないかと思った。

少し前の Master Card の CF で、”Priceless” というコピーが効果的に使われていました。これはとても大きな価値であるという評価を表す一方で、それを「金額」という経済的価値にうまく換算する尺度がない、ということも意味しています。私はこれが今日の最も大きな課題だと感じていて、あなたのいう「本能的に感じる美しさや魅力」を含め、感情的な経験ってもっと重要な価値があるんだよ、と世界に伝えたい、との思いで研究をしています。

  • 一般に個性やデザインの方が実用性よりも好まれていて、僕は実用性を重視しているので、驚きました。

「一般に」は言い過ぎかもしれませんね。実用性は大切です。大抵のものは使い物にならなければ価値を認めてもらえません。ただ、時折、実用性を上回る価値をもったもの(あるいは経験)があることも事実です。

  • 技術はあるのにそれを上司に説明できないと言う理由でデザインにこだわれなかった事例を紹介していたが数値的指標と同様にユーザーエクスピリエンスも大事であることがはっきり理解できた。

ユーザエクスペリエンスについては、多くの研究者/実践者のおかげで、かなり良い尺度ができてきていると思います。

  • 今回の授業では、エコロジカルアプローチや感情について学んだ。人間は認知だけでなく感情も必要という理由でヘンテコなレモン搾りがたくさん売れたのが意外だった。あのレモン搾りを買った人はそれとは別にレモン搾りを持った上での選択をしたと思うと非合理的だけど金銭的な余裕があれば、カンバセーションスターターとして持っておくのもいいと感じた。

そうですね。あの例はちょっと金額的に高めなので「ムダ感」がより強調されていますが、私たちが日常に選択できるものの中にもあのような例はたくさんありますよ。

  • 今日は、感情について学んだ。最近取っていた文系教養の授業で、感情は、種が長らえることをサポートしているという話を聞いたことがあったので、その類似性が見えて楽しかった。(フラれると悲しい、食べられそうになると緊張し、逃げられるように心拍数が上がる、など。)

はい。特に基本感情は、生物としての人間が生き残るという観点から見るととても重要な役割を果たしていると考えられています。

  • インダストリアルデザインにとても興味があるのでレモン絞りのくだりはとても面白かった。人間は常に合理的でないことをデザインにも反映させることで効用が上がりそう。 研究室の紹介もありがとうございました😊

ありがとうございます。「合理的ではない」という言い方もできますが、たとえば見ていて良い気持ちになる、他の人と話が始めやすい、といったことはみな「価値」を持っていると考えています。単に「金銭的価値」や「生産性」に換算する良い尺度を私たちがまだ持っていないだけです。その価値をきちんと顕在化できれば、じゅうぶん「合理的」とも言えると思いますし、それを目指して研究をしています。

  • エコロジカルアプローチにおいて述べられた、生物は感覚器からの情報を解釈しているわけじゃなく直感的に行動しているということは、生物らしさを感じたと共に、人間の知能の高さと他の生物の知能の高さに差があるからではないかと思いました。

「人間と他の生物の知能の高さの差」は主に人間の大脳の、進化の歴史の中で比較的新しく発達した部分の機能があるかないかではないかと思います。この部分も人間と他の生物で 0/1 (あるかないか) ではなく、さまざまな生物で人間に近いものを持つ種もいればもっと原始的な種までさまざまな段階があると言われています。例えば霊長類は人間にかなり近い脳を持っている、というのは直感的に理解できるでしょう。一方で基本感情に関係する脳は進化のもっと古い段階で獲得された機能で、実に多くの種で共通に見られると言われています。

  • 感情は無意識ではたらく、というのは確かにそうだなと感じた。基本感情は理由がなく、脳の深いところで生まれて、理由などは後付けということは、ものすごくイライラしているとき、理由がよく思い出せなかったりするのはこのせいかなと思った。

  • 感情の名前は後付けで、生理的な反応が先だと知って納得した。映画や本を読み終わった後の感動はなかなか表現できず困っていたからだ。

はい。感情(特に基本感情)は非常に高速に、瞬時に働きます。それに対してそれに対する reflection (理由づけなど)はその感情のはたらきを「上」から見ていてそれを評価しているといったプロセスと考えられ、一般的にずっと時間がかかりますし、そもそも「理由づけ」が正確でない可能性もあります。

  • 感情に関することについて、すごく面白かったです。経済学では今やってるものは基本的に人間は合理的に動くというのを条件にしていたが、実際そうではないというのが、たしかになと思いました。

はい。経済学と心理学の出会いが「行動経済学」となり、花開きました。

  • 人間を相手にする上で感情というのは切っても切り離せないことなのだと理解出来た。

  • 感情を科学することは人間の経済活動にも関わるため今後とも勉学に励んでいきたい

はい。人間が人間という生物である以上、感情は必ず働きます。そして私たちは感情は私たちの生活や仕事の上でとても重要な働きをすると考えています。それが私たちが感情の研究をしている理由の一つです。

  • 前長野の合宿で山のところをジョギングしていたとき、森から道路を覗いている熊と会いました。ゆっくりジョギングしていたのですが、会ったとたん思わずダッシュしてしまいました。このときは、会ったときに既に走っていたから、ダッシュするしかなかったのかなーと考えています。

以前「クマの前から突然走って逃げ出すのは危険」と誰かから聞いたことがありましたが、真偽のほどは自信がありません。最近は地域によっては人間の居住地の近くでも遭遇する機会が増えているようです。正しい知識を確認しておくべきですね。

  • 人間の非合理的な側面である感情の研究は個人的に興味がある分野だったので面白かったです。

やや議論のあるポイントですが、「感情」と「非合理的」は必ずしも同一ではないと考えます。「合理的」とは何かに依存しますが、多くの場合では合理性を期待損益最大化(特に経済的価値の)と捉えているように思います。しかし、例えば「自分が生き延びる確率が最大になるような選択をする」こともある意味で合理的と考えられます。そして感情(特に基本感情)が得意とするのはまさにそういった側面だったりします。

  • 安全や機能性を考える人間工学を突き詰めた先に、感情経験を伴うデザインがあるという考え方が意外だった。

  • 従来の設計は、ユーザビリティが目指したシンプルで簡単なものでしたが、それでは不十分で、ユーザーが自ら使いたいと思わせるような設計を目指すようになった話が面白かったです。使いやすさも大事ですが、同じくらい楽しさも重要であることがわかりました。

John Carrol がこのような発言をしたのがもう20年近く前ですね。現在では例えば User Experience などの概念がこれを引き継いで体現していると思います。

  • 人間をよく理解することは将来いろいろな分野に活用でき、重要なことだと思う。

はい。人間を相手にするところが、物理系や化学系と、私たち経営工学が対象としている経営や市場、経済などの分野の大きな違いです。ぜひ人間への理解、それ以前に人間への興味を持ってください。

  • 楽しかったです      勉強がんばります

はい。本学で、そして卒業してからもいろいろなこと(私の希望は「人間に関すること」)を勉強し続けてください。

  • 昔よりもモノを消費する傾向にある(大事に使わなくなった、インパクトがあるものとかはフワッと買ってしまいがち)という話を聞いたことがあるのを思い出しました

私はあのレモン搾りを20年以上大切にしていますよ!

  • 感情についての話は面白かった。インサイドヘッドは見たいと思った。

  • 「インサイドヘッド」という映画は、研究者から見ても、感情や記憶をうまく表現した映画であるようだ。本授業で得た知識を踏まえて、もう一度映画を見返してみたい。

  • インサイドヘッドは自分も見たことがあります!      発表された当初にみたきりなのでざっくりとしか覚えてませんが、今日の授業内容を踏まえてもう一度見ると新しい視点で見られるかなと思いました。

  • • 感情を2次元で表している際、インサイド・ヘッドのキャラクターだなとぼくは感じることができた。今回の講義を聞いて、心理学から知見を得て作られていると聞いて、もう一度映画を見たい気持ちになった。

はい。「インサイドヘッド」(Inside Out) はとても良い映画だと思います。ぜひ(もう一度)観て、感情って面白いと思っていただけると嬉しいです。

  • デザインの持つ利便性と面白さ(funny的な)のバランスが興味深い話でした。Emotional designのような、デザインと心理に関わる書籍があれば教えてください。

Norman の emotional design は是非ご一読を。もう古典ですが、とても良い本です。私たちの研究室の必読本です。
https://amzn.asia/d/9oPLl7F

  • ジョージアに旅行に行ったときに、カンツィという牛の角から作られたワイングラスを、飲みにくそうで洗いにくそうであるが、購入したことを思い出した。

現地の伝統的な会食の習慣ですね。テーブルに立てて置くことができないから乾杯したら飲み干さなくてはならないと聞きました。わざとそうしてるのかも。

  • 今回、感情の研究について学んだ。心理学の専門用語では感情が定義されており、Affectという、エモーション、ムード、フィーリングなどを含む感情全般を代表する言葉があるという。最初、感情を取り入れた経営というのはよく分からなかったが、快適で作業がしやすいオフィスなど、アフェクティブな経営は大切であることがよく分かった。

感情状態というのは目に見えて喜んでいたり怒っていたり、というばかりではありません。どのような人も、どのような状態でも、感情はある状態を持っています。そしてそれが生活はもちろん働く時にもとても重要ですよ、だから経営者はそれにきちんと気を配らなくてはなりませんよ、というのが私たちの affective management の基本的な考え方です。

  • 利便性よりもデザイン性を重視するという考えが面白かった。経営において人間をよく理解することがとても大切であることが面白かった。他の授業と毛色が大きく違って面白かったです。

利便性はもちろん大切です(たいていの場合は)。ただ、人は利便性だけでは買ってくれたり使ってくれたりしないんじゃないかな?とそういう疑問です。

  • 今回は感情科学について学び、その中でも、感情は考えることよりも先に行動を起こしてくれる存在であるということが、とても面白く感じた。特にわかりやすかった例がクマと遭遇する例だ。怖い、恐怖という感情が真っ先に起こり、それが逃げるという行為を引き起こす。クマに遭遇してから、さまざまな思考を通して逃げるという選択をするには、時間がかかり逃げ遅れるため、感情は直感的な行動に役に立つ。

直感的な行動に役立つ、というよりも、直感的、すなわち人間が無意識に瞬時に下している判断って、皆さんが予想するより「良い」判断をしていますよ、というのが Kahneman 先生の System 1 の教えるところであると理解しています。

  • 今まで、この工業心理学の講義のような面で心理学に触れたことがなかったから面白かった。 今日の講義内容で言うと、感情は物理的な反応だというのも興味深かった。感情と思考の違いは人間とその他の動物の差だと思っているので、感情が物理的な反応だというのは解釈一致で良かった。

以前お医者さんとお話をした時に、たとえば野生動物に突然遭遇した時に人間の体内で起こる生理現象をひとつひとつ説明してくださって、その上で「これが全てだと思うのですが、その上で、感情ってなんですか?」とおっしゃったのがとでも印象的でした。私たちが感情や感情的反応と呼んでいるのは、医学・生理学的に見れば生理的な反応に過ぎない。そう考えてると「科学的・客観的」にとらえられないと考える方がおかしく感じられるようになります。

  • 認知主義の基づく情報処理以外にも、本能的なものと客観的なものがあるのは自分の意思決定や行動話振り返っても納得する部分が多かったです。

はい。認知と感情は人間の活動の「車の両輪」、どちらも同時に働いていてどちらも大切なことをしているのです。

  • 授業フィードバックは、提出後に修正や内容の確認ができないのが不便だ。

これはT2SCHOLAの使用によるものと私の設定によるものとがあると思うので、少し研究させてください。

  • 感情についてのありとあらゆる性質を学ぶことができた。

これはちょっと言い過ぎですね。感情の授業を作ろうと思ったら軽く1年間くらいは話せますし、現在もどんどん研究が進んでいます。もしも感情に興味を持ったら、ぜひ感情の研究をしてこの分野を進めてほしいです。

  • 今回の話は先日読んだ「仕掛学」という本の内容に関連があるように感じた。長く使ってもらえるためには思わず使ってしまうような仕掛けを用意しなければならない(たとえばゴミ箱がバスケットゴールの形をしている)等、Emotionに働きかけるようなものはとても面白いと感じた。

バスケットゴールの形は、前回お話しした affordance の概念にも関連していると思います。「感情」と呼ぶか「仕掛け」と呼ぶかはそれほど本質的な問題ではなく、人間の性質を深く理解して、人間の動機や感情や満足によりそった仕事や製品を造ることが本質的な事です。新しい時代の「人間工学」であるとも思います。

  • 道具に触ってみたかった。

あ、ごめんなさい。回覧すればよかったですね。。

  • アフェクティブな組織を目指すことは、職能集団を破壊し、定量化・最適化を推し進める一方で、人間性を無視してしまった日本にこそ、必要な方法だと感じた。

はい。そしてこんにちの企業の経営者の皆さんの多くは、すでに気がついていると思いますよ。

  • 人は思っているより合理的ではなく、感情で動くと分かりました。大人になったら合理的な関係を築くことになると思っていましたが、今と同じような関係を築けることを知れてよかったです。

皆さんはこれから人生を終えるまで、実に多くの(おそらくは千とか万とかののオーダーの)人たちに出会うと思います。全ての人と同じような関係を築くことはできません。皆さんにとって「きちんと人間関係をむすぶべき人」は誰かをきちんと見極めて、その人たちと(人によって一桁の場合もあると思いますし、何百人かもしれませんが)関係を築く時には、「合理的」に過ぎない関係を構築してほしいと思います。それは仕事を一緒にする人であれ、私生活で関わる人であれ、です。

  • ただ便利なものを作るだけでは足りず、利用者が楽しめるかについても考慮に入れるべきというのは盲点だった。

世の中を見回すと、思ったよりもたくさんの「楽しめるもの」を見つけられると思いますよ。

  • 私がブランドイメージとか所有欲とかと思っていたものがアフェクティブというものだったことに感動しました。確かにApple製品は使っていて楽しいと感じさせるものがあります。

ブランドイメージがの全てが affective と同一の概念だとは思いませんが(そういうものとは違う価値のブランドもあるので)、一方で多くのハイブランドは、持っている人にとても良い気持ちを起こさせますね。その意味であなたの言ったことは正しいと思います。

  • 人間は合理的に行動するシステムではないので、合理性に適った、ただ使いやすさだけを求めたもの・考え方ではなく、人間的な面白さも含めるべきなので、人間についてより理解すべきだと感じた。

合理的であるという仮説が強すぎると、マーケティングなどのビジネスチャンスが減るというだけではなく、例えば「合理的判断」を前提としたシステムなどでは予想もしなかった操作、そして大事故につながることもあります。人間の非合理性についてはよく勉強してください。

  • ユーザビリティが高いからと言って売れるとは限らないということが面白かった。  マーケティングと関わりのある学問ということで、商学部でも勉強されているのか疑問に思った。

20世紀後半以降のマーケティングや消費者行動では、人々の感情的な価値評価をモデルに入れるのは常識になっています。だから当然皆さん知っていると思いますよ。

  • ものを持つ上で機能性も確かに重要であるが、デザイン性が欠けているとどうしてもテンションは上がらないものだと思った

「テンション」かどうかはわかりませんが、良いデザインはそれだけで心地よかったり満足することが多いですし、なにより使いやすかったり自分のやりたいと思ったことができたりします。それが「良いデザイン」の価値ですね。

  • 感情やアフェクティブについてのテーマでの授業だった。全く関係ないけどアフォーダンスという言葉の響きが好きで、いすで例えた説明が分かりやすかった。

ウェブデザイナーの皆さんなどではすっかりお馴染みの用語です。心理学的にはどのような概念だったか、ということを理解しておくと、理解も深まるし誤用するリスクも減ると思いますよ。

  • 前半の方の内容をもう一度学習することで理解度上げていきたいです。テストがんばります

試験はいかがでしたか?授業の前半の方も後半の方もかなり横断的に巻き込んで考える問題を作ったつもりです。

  • 先日僕の祖父が亡くなりました。祖父は会社経営をしていました。(中略) 祖父は会社のアルバイトの方とも距離が近く、パートさんの息子にも気をかける程でした。そのため、祖父の葬式には多くの関係者の方々が来てくださり、皆んな口を合わせて「本当に素晴らしい人だった」と言ってくださりました。

私の大学院の授業で社会関係資本(Social Capital)という概念を勉強します。乱暴なくらいに簡単に言ってしまえば、人々の間に良い関係があることがいろいろなことをおこなうポテンシャル(「資本」)になるという考え方です。御祖父様はきっとその考え方を身をもって実践されていたのだと思います。授業のスライドでもちらっと書いたかと思いますが、過去の「名経営者」と呼ばれた人たちは、アフェクティブがどうのこうのとか社会関係資本がどうのこうのとかわざわざ名前をつけなくても、きちんとそこが大事だという事を知っていたのだと思います。

  • iPodを作れなかった企業の話が印象に残った。技術があったとしても、そこまでこだわって売り上げが出なかったことを考えるとコストを下げる方が良いという判断をしてしまうのはもったいないと思う

その「もったいないと思う」価値を、経営層が損益と同等にきちんと比較する知見を持っているかどうかが分かれ目なのだと思います。もちろん今現在、その価値をお金の価値に換算するよい方法がないことが一つの原因なのですが、「それでもそれはとても重要な価値のある事なのですよ」と大声で言い続ける。それが私たちの研究室の mission だと思っています。

  • 人間に関することについて学ぶとなると感情というものは切っても切れないものであると感じたし、そこについて考えて研究してみるのも面白いかもしれないと思った。

はい。興味があったらぜひ勉強してみてください。それはすなわちあなたの目の前にいる人間たちをより深く理解することになりますから。

  • 合理性だけでなく楽しさや見た目を考慮した製品の話はとても共感できた。実際、利便性だけを追求するときは最低限のコストで、見た目などを追求するときは多少高くても買おうと思う。合理性で動くときは支払う額も合理的に考えるので、利益率を上げるなら感情的な付加価値は重要だと思う。

「感情的な付加価値」を金額に換算する方法はまだ難しいと思っています。もちろん世の中のいくつかの企業、特にハイブランドの企業などはそれをとてもうまくやっていますが、一方で「こうやればよい」という誰でも使える方法はまだ完成していないと思います。でもあなたのいう通り、とても重要な問題なので挑戦し甲斐があります。もしかすると私たちの研究室がある間には解決しないかもしれませんが、挑戦し甲斐があると思います。

  • 感情という実体のないものについて少しイメージが掴めた。

授業の中でも触れましたが、私たちが「感情」と呼んでいるものは生理的、物理的な現象として客観的に捉えることができます。少なくとも現象としては。メカニズムはまだまだ調べることがたくさんありますね。

  • 人の感情を利用して購買意欲をかき立てるような商品はすでにあるが、まだ色々な可能性を秘めているはずである。また、人手不足が問題となっている中、働き手が離れていくのを防ぐために、客だけでなく従業員側も気持ち良くなるような工夫が必要だと思った。

とても重要な視点だと思います。「お客さんに良い気持ちになってほしい」という発想は比較的広くみられますが、それを実現するのに従業員が犠牲になるのではサステイナブルではない、それは目指すべき未来ではないと思います。ぜひそのような仕事、働き方を実現する経営者になってください。

  • 感情は物理現象であると言える事象は本能的な部分に限られた話なのではないかと疑問に思った。一方同じ状況下でも悲しみを感じる人やそうでない人がいるように、物理現象であるとの断定は講義をきいても思い切れなかった。

まず「感情を感じている」という現象と、「なぜその感情を感じるにいたったのか」というメカニズムの部分を分けて考えるべきです。
現象はかなり客観的に観測可能と言えると思います。
一方メカニズムの部分について。「本能的な部分」というのは「基本感情」と呼ばれている感情のことだと思うのですが、ここは「生き物」としてメカニズムが身体の中に組み込まれている( hard-wire されている)ので理解しやすいということだと思います。「一方同じ状況下でも悲しみを感じる人やそうでない人がいる」というのは「高次の感情」に相当すると思いますが、これは個人の記憶や価値観に影響を受ける(software が関係する)、脳でいうと新皮質が司る部分ですので、そのメカニズムは簡単には説明できません。

  • 今後社会人になるにあたり、人と関わる事がとても多くなるので、合理的ではないことも重視しながら、人間を理解して生きていこうと思った。

  • 大学生になってコミュニティが増加して、バイトという形ではあるものの、「仕事」をする機会ができたこともあり、世の中の仕事は私たちが思っているより人間を相手にしているということに深く共感しました。

はい。無人島か独房に1人隔離されて生成したソースコードだけをネットで送る、という仕事もあり得るとは思いますが、それほど極端な仕事をする人はほとんどいないでしょう。それに、人間は複数人が一緒に仕事をした時に、より大きな、よりおもしろい仕事ができるものだと思います。ぜひ人と一緒に仕事をしてほしいし、一緒に仕事をする人間というものをよく理解して、よい関係を作ってください。

  • 今回の授業は、先生の研究室の研究の内容の紹介が特に印象に残りました。      これまで学習した認知機能や認知主義に関連が深い内容に思えて、とても興味深かったです。実際に研究室選択をする際に参考にしたいとおもいます。少し調べてみると、梅室研究室では学生の中で麻雀が好きなチームがあるようで、自分も麻雀が好きなのでもし入ったらこのチームに入ろうかな、と考えました。

はい。この授業の話題とは関係ないのですが、私の研究室には「チーム活動」というものがあります。研究テーマとは関係なく、同じような興味や趣味を持った人たちが集まって一緒に活動する「サークル活動」のようなものです。多くの企業さんでも同じような活動をされていますよね?理由は多分明らかだと思いますが、一緒に協力して研究を行なっていく質の良い人間関係を醸成すること、専門用語で言えば社会関係資本を高めることです。どんなチームがあるかは毎学期変わるので、あなたが研究室に来た時に麻雀チームがあるかどうかはわかりませんが、よかったら仲間に声をかけて作ってください、麻雀チーム。

  • 今回の授業では感情について学びました。affectとemotionの違いや、先生の研究内容がとても興味深かったです。

ありがとうございます。今のB2の学生さんは、あと1年ちょっと後に、どの研究室に入ろうかと決めるとおももいます。いろいろな先生の授業を聞いて、いろいろな先生と直接話して、そしていろいろな研究室の学生室を訪問して大学院生の皆さんの生の声を聞いてください。
また、2月には特定課題研究や修士論文研究の発表会もあります。いろいろな研究室が取り組んでいる最先端の研究の内容を、たった1日か2日で集中して知ることができるという、とてもお得なイベントです。4Qの期末試験後になりますが、おすすめですので是非聴きに行ってください。カレンダーは系のHPのイベントカレンダーをご参照あれ。
https://educ.titech.ac.jp/iee/event_information/2024/

  • 感情品質と感情の関係について製品やサービスなどの刺激が人間の感情に影響を与える関係性が原因と結果に綺麗に分かれており人間の体における反応として自分の中に落とし込めた。

原因と結果に分けて考えると理解しやすいし、アプローチも取りやすいのであのようなモデルを提案したのですが、ただお分かりかと思いますが、実際には相互の影響などもありそれほど単純ではないのです…

  • 研究の専門分野に携わる内容により、今まで講義中に言われてきた、講義の内容は研究をする上で当たり前に知っておかなければならないことなのだと再度実感しました。      

はい。B4で研究室に入ると「教育機関・東京工業大学」のメンバーの一員として迎えられ、一緒に研究をやっていきます。B1からB3までに習うことはそれまでに知っていてほしいことを授業の形で勉強してもらっているんだよ、と私は考えています。

  • 研究内容に感情に関する部分で、パーソナリティによる思考や感情の起こり方において、その個人がどのような環境下で育ってきたのかなどを考慮するのは難しいのかが気になりました。

とても鋭い疑問ですね。「非認知能力」の回でもちょっと触れましたが、人間の心理は、人間であれば生まれてきたらみなそうなる、という共通部分だけではなく、遺伝的(生得的)あるいは育ち方(後天的)な部分によって大きな個人差が存在します。それでも生物としてどの範囲が「共通」と見做せるのか、個人差が存在するとしてどの程度の「分布」があるのか、そのようなことを考えなくてはなりません。ですから、その通り、「難しい」です。だからこそ挑戦し甲斐のある分野なのですが。

  • 認知主義をある程度学んだうえで認知で説明できない分野を知ったことで心理学の世界の広大さを感じ、より心理学に興味がわいた。

認知主義は、人間を理解する上で、そして多くの製品やシステムを安全に使いやすくつくる上でとても大きな役割を果たしました。ただし、授業の中でも触れたように、人間にはもう一つ大きな車輪があります。感情です。だから私たちの研究室はそこに強く惹かれるのです。

  • なんだかんだ興味深い話がたくさんあって受講して良かったと感じました。

ありがとうございます。私も今年も授業をやっていてとても楽しかったです。


というわけで今年の授業もなんとか終わりました。
最後にも書きましたが、今年もこの授業をやっていて本当に楽しくて、あっという間に終わってしまった、というのが実感です。今年初めてやったいくつかの試みもありましたし。

反省点としては、このフィードバックへのお返事が滞りがちになってしまったことですね。Twitter と違って書き方に制約(140字など)がないからやりやすいかな、と思っていたのですが、制約がない分もっともっといろいろ書きたくなっって、書き終わるまではあげられないし… みたいになってしましました。という反省もありますが、やはりこの、皆さんからのフィードバックは本当に勉強になりますし、自分が勉強しなくれは、というモチベーションにもなりますので、これからも続けたい。来年は書きたいという気持ちと、もっとタイムリーに公開できるようにという縛りとのトレードオフをもっと考えたいと思います。

今年もとても楽しく授業ができました。皆さんどうもありがとう。

良いお年をお迎えください!

梅室博行

いいなと思ったら応援しよう!