工業心理学

東京工業大学工学院経営工学系の授業科目「工業心理学」です。 毎回の授業の最後に学生さんからいただいたフィードバック、そしてそれに対する教員(梅室博行)の回答を中心に公開していきます。

工業心理学

東京工業大学工学院経営工学系の授業科目「工業心理学」です。 毎回の授業の最後に学生さんからいただいたフィードバック、そしてそれに対する教員(梅室博行)の回答を中心に公開していきます。

最近の記事

第12回(2024.11.21)の授業のフィードバックから

こんにちは。 この授業のメインパートである認知主義は前回で一旦終わり。今回は、認知主義を始め心理学の諸理論を検証してきた心理学実験とはどんなものなのか、をお話ししました。 実験の時に暗幕をするとあったが、逆に暗幕をすることによって暗幕があるなと感じて普段とは違う結果が出てしまうこともあるのではないかと疑問に思った。心理学実験は人間を対象にしているので、こういったことを同じにするのがとても難しいなと感じた。 また、研究室で実験をする時の謝礼は誰が出すのか気になった。

    • 第11回(2024.11.18)の授業のフィードバックから

      こんにちは。 今年のこの授業も講義ができるのは今回のあと残り3回になりました。 今回は認知プロセスの最後、行動選択の2回目です。 前回 Hick-Hyman の法則のお話をして、人間を「情報処理速度一定の情報処理プロセス」と見る考え方について述べました。 今回は、その後おこったその考え方からの乖離、すなわち「それでは説明できない」人間の様々な性質について、特に S-C compatibility について扱いました。 それでは今回のフィードバックの中からご紹介します。 前回

      • 第10回(2024.11.14)の授業のフィードバックから

        こんにちは。 認知プロセスを辿る旅も終盤。今回と次回は行動選択についてのお話です。 今回はまず simple reaction time (SRT) と choice reaction time (CRT) を紹介した後に、なぜ20世紀の認知心理学者たちがこれに着目して研究していたかを説明し、Hick-Hyman の法則を紹介しました。 今回のフィードバックからです。 キーボードを叩くだけの簡単な作業で人間の情報処理速度を測れるなんて感動した 自分の反応速度を測ることがで

        • 第9回(2024.11.11)の授業のフィードバックから

          こんにちは。今年の工業心理学も後半に入りました。今日は認知の段階の3回目で、意思決定の話をしました。意思決定(decision making)は実はそれだけで一つの授業が作れるくらいいろいろな研究がなされていて、1回で話すのはとても難しいのですが、認知を中心とする認知プロセスの各段階がどんな役割をはたしているのか、という観点を中心にお話をしました。(それでも結構詰め込みすぎなんだけど…) 今回いただいたフィードバックからご紹介します。 行動経済学に少し興味がわいたので、余裕

          第8回(2024.11.07)の授業のフィードバックから

          こんにちは。早いもので今年のこの授業も折り返し地点を過ぎました。 今回はワーキングメモリー(作業記憶, 作動記憶ともいう)の保持時間、そして容量の限界を体感してもらうために、簡素化した Brown-Peterson Paradigm のミニ実験をやってもらいました。 今回も授業にいただいたフィードバックからご紹介しましょう。 アルファベット5文字を覚える時に語呂合わせで覚えたことがあり、割と簡単に思い出すことができました。 今思えば、これも語呂という1つのチャンク

          第8回(2024.11.07)の授業のフィードバックから

          第7回(2024.10.31)の授業のフィードバックから

          こんにちは。つい先日この授業が始まったかと思ったら早いもので第7回。次回はもう折り返しです。 今回は認知プロセスの中でもど真ん中、認知の段階の第1回目。認知の段階の大きな特徴の一つは作業記憶 (ワーキングメモリ; working memory)を使うことです。よって今回は作業記憶とそれに合い対する長期記憶(long term memory) の違いから、作業記憶のコンポーネントについての話をしました。 言語的、空間的なコードにおいて異なるコードは情報同士が干渉しないが、同じ

          第7回(2024.10.31)の授業のフィードバックから

          第6回(2024.10.28)授業へのフィードバックから

          こんにちは。ちょっと遅くなりましたが、第6回の授業にもらったフィードバックをご紹介しましょう。 第6回は、第5回で紹介した「注意」の概念が産業などでどのような応用となるか、視覚サンプリング (visual sampling) を題材にお話をしました。 それではさっそくいくつかご紹介しましょう。 あ、その前に。 フィードバックは出欠も兼ねているので名前と学籍番号は記録されていますから、自分の名前をあらためてフィードバックの中に書かなくてもいいですよ。 今回の内容では無いが選

          第6回(2024.10.28)授業へのフィードバックから

          第5回(2024.10.24)授業へのフィードバックから

          こんにちは。第5回の授業が終わりました。遅くなりましたが授業にいただいたフィードバックをご紹介していきます。 第5回と第6回は、注意(attention)について扱います。今回第5回は注意の古典的研究である両耳分離聴を学生諸君に経験してもらって、注意の種類(選択的注意、焦点的注意、分割的注意)のお話をしました。 注意を分割してリソースを振り分けることが出来るということだが、どのくらいの業務であればマルチタスクは可能なのか疑問に思った。 その「マルチタスク」全体で要求される

          第5回(2024.10.24)授業へのフィードバックから

          第4回(2024.10.21)授業へのフィードバックから

          前回の第3回では、信号検出理論(Signal Detection Theory; SDT)を勉強しましたが、実は積み残しがありました。反応バイアスβの話はしたのですが、感度d'の話はしていませんでした。第4回は前回の続きで、信号検出理論のもう一つの柱となる概念である感度について勉強し、信号検出理論の応用であるReceiver Operating Characteristic (ROC) の紹介、そして産業上の応用として品質管理などでみられるビジランスタスクのパフォーマンスを反

          第4回(2024.10.21)授業へのフィードバックから

          第3回(2024.10.10)授業へのフィードバックから

          2024年度も第3回の授業が終わりました。今回は人間の「知覚」に関連する話題として信号検出理論(Signal Detection Theory; SDT)を紹介しました。 今回もたくさんの深いフィードバックをいただきましたので、皆さんに共有したいなと感じたものを紹介していきます。 信号検出を数学に落とし込むのはとても面白いと感じました。しかし、それぞれのデータを明確に数値化するのが難しいのではないかと思いました。 信号検出理論そのものは綺麗な数学なのですが、人間に応用した

          第3回(2024.10.10)授業へのフィードバックから

          第2回(2024.10.07)授業へのフィードバックから

          2024年度工業心理学の第2回の授業が昨日終わりました。今回も「濃い」フィードバックをたくさんもらいましたが、その中のいくつかをご紹介していきたいと思います。 本編に入る前に。T2SCHOLA(本学の学習支援システム)のFeedback Form は皆さんが入力してくれたコメントを、名前や学籍番号と一緒に記録するように設定してありますので、名前とか学籍番号とかをフィードバックの中に書かなくても結構ですよ。 今回は、認知主義のパートの第1回ということで、認知プロセスの概観を

          第2回(2024.10.07)授業へのフィードバックから

          第1回(2024.10.03)授業へのフィードバックから

          昨日今学期の第1回の授業が終わりました。今年も沢山のフィードバックをいただきました。人数が多いので読むのも大変でしたが、とても楽しんで読みました。 その中からいくつかご紹介してみたいと思います。 今回の授業では、心理学が科学的な学問として成立するまでの道のり(あるいは成立させるための歴史上の多くの研究者の努力)についてお話をしました。 心理学と科学の定義や関連性についての話が面白かった。 心理学の面白さがわかった気がした 科学か科学的ではない物の違いがわかった 科学

          第1回(2024.10.03)授業へのフィードバックから

          2024年度開幕!

          今年も第3Qがはじまりました。いよいよ明日から「工業心理学2024」も開幕です。 今年もいただいた面白い授業フィードバックを(全部は無理かもしれないけど少しだけでも)ご紹介してお答えしていきたいと思います。

          2024年度開幕!

          最終回の授業へのフィードバックから

          とってもとーっても遅くなってしまいましたが、第14回(最終回)にもらったフィードバックのご紹介とそれに対するコメントをお送りします。 最終回ですし、もうこれだけ遅くなってしまいましたので、フィードバックとしていただいたものはすべてここでご紹介していきたいと思います。 ですから今回はとても長くなりますがご了承ください。 それではいきましょう! 研究室の話が聞けて良かった B2のみなさんにはまだ1年以上先のことですが、B3の2月に研究室の配属調査があります。それまでにいろいろ

          最終回の授業へのフィードバックから

          第13回 (11月20日)の授業へのフィードバックから

          第13回の授業へのフィードバックからご紹介します。 まずはこれまで勉強してきた認知主義の限界について議論しました。 航空機の入力で、三次元、四次元の微分の入力があるという話がありましたが、あまりイメージがつかなかったので、具体例を聞きたいです。 私も飛行機の操縦はできないので、具体的なイメージで伝えることはできないです… 次に、認知主義では説明しきれない人間の特性の話題として、いわゆる「非認知主義」について簡単な紹介をしました。 非認知能力の中で、アビリティとスキル

          第13回 (11月20日)の授業へのフィードバックから

          第12回(11月16日)の授業へのフィードバックから

          こんにちは。大変遅くなりましたが、第12回の授業へのフィードバックのご紹介です。 今回は認知主義の話をはなれ、そのような心理学的知見をもたらしてきた数々の実験について考えました。すなわち「心理学実験」とはどのようなものなのかについての講義です。 心理学実験の流れや注意点がわかった 心理学実験において、部屋の温度湿度まで詳しく管理するのかと感じました。化学実験なら直接的な影響がでるのは想像がつきやすいが 心理学実験は人を対象に行うので、予備実験や許可を取ったりと事前の準備

          第12回(11月16日)の授業へのフィードバックから