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人生くすぶらせたって、それが何?『海に眠るダイヤモンド』最終回感想
感無量。もう、この3文字で済ませたって良いくらい。
日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』が終わった。9話と10話を1週分にまとめてくれたおかげで、やっとこさ最終回まで追いつくことができた。
ついこの間まで朝ドラの『虎に翼』にハマっていたせいで、なんだか史実を見ているような気持ちで没入してしまった。
最後の最後に、パラレルワールドみたいに登場人物たちの「もう1つの人生」を見せてくれたおかげで、やっと我に返ったのだ。
あっ、この人たちって本当にいたわけじゃないんだっけ。
でも、実際に端島はあったわけだし、きっとこの世の何処かには「こういう人たち」もいる。
だって、会えなかったんだもんね。そうだよね、会えないもんだよね……。それにしても、あの端島銀座の演出、RPGのエンディングみたいで最高だったな!
そんなことあります!?の連続だった9話
リナと一緒に小舟で逃げていたのは、鉄平だった。端島だけではなく、日本中のどこからも気が休まるような居場所を失ってしまった。そんなことある!?
「警察は何かあってからじゃないと動いてくれない、何かあってからじゃ遅いのに」とはよく言うけど、それにしたって理不尽。
だけど、ストーカー規正法ができたのだって2000年に入ってからなんだから、1960年代なんてもっと門前払いでもおかしくないのか。
事実婚状態の夫婦のもとに生まれ、無戸籍児だったことがわかった誠。ここで鉄平がリナと籍を入れることで保険証を手に入れた=だから朝子とは結婚できなかったという流れかと思いきや。進平兄ちゃん、えいこの死亡届出してなかったのか!!!!
もし、失踪届けを出していたなら一定期間が経てば死亡とみなされてしまうはず。ちなみに、失踪宣告にまつわる法律ができたのは1896年らしいので、こちらは完璧にずさんパターンです。
というわけで、浅慮な過去が浅慮な未来を救う流れで元妻えいこに成り変わったリナ。
それでも自体は収束せず、「乗りかかった船」にそのまま本格的に乗船するはめになった鉄平の未来の方は大きく変わってしまった。
赤ちゃんを直接刺すような描写にならないためにカゴ越しの演出にしたんだろうけど、それでもしんどかったもん。あんなの、見捨てられる人っているのかな。
『ライオンの隠れ家』でも、浅慮によって周囲の運命を変えてしまう人を観たばかり。
陽キャが闇落ちする反動がえげつない10話
普段は朗らかで人間が大好きで、物事をフラットに考えられるはずの人って、追い込まれるとああなる。
もちろん、命まで狙われている事態に巻き込まないための優しさだってことは百も承知の上なんだけど、男ってなんで報連相できないの!?!?
すべての事情とはいかなくても、せめて何かしらのメッセージを朝子に残すことはできなかったのか。お互いに別々の人生を歩まざるを得ない現状だけでも共有できなかったのか。
長い時間をかけて、「きっと、こういうことなんだろうな」と無理やり自分を納得させて、次々と湧いてくる疑問を飲み込んで、新しい人生のために気持ちの上書きをする作業を、なんで朝子一人にやらせるんだろう。
ていうか、そもそも鉄平にとっても当然不本意なそんなことを、なんでしなくちゃいけなくなっちゃったんだろう。あまりにも、やるせない。
初恋は実らないって言うけれど
私たち視聴者も、周りの人間も、「朝子に虎さんがいて良かった」とどれだけ思っただろう。物語としては鉄平を待ち続ける方が美しいけれど、これは一人の女性の人生のドラマでもあるから。
そして、それを人生の後期を迎えた「いづみさん」が誰より自覚していることに救われた。今の家族や、生きがいだった屋上緑化事業。今更ぜんぶをリセットしてやり直したいなんてもう思わないんだろう。
「私の人生、どがんでしたかね」そう問いかける若き日の朝子に、今のいづみさんは「朝子はね、きばって生きたわよ」と声をかけた。
その一言に、すべてが詰まっていた。
せめて、自力で「ハッピーエンド」には持ってける
コスモスの花言葉は「幼い恋心」らしい。とうとう結ばれることはなかった二人だけど、あの一面の花を見たらもう何も言えなくなった。
初恋は実らないって言うけれど、これはこれで叶ったことにしても良いのかも。だって、鉄平は別れを告げなかったんだから。
ハチクロの竹本くんを思い出した、ものすごく。
秘書サワダージの正体に驚くよりも先に、これで玲央との血の繋がりへの可能性が断たれてしまったことに愕然としたけど、代わりに家族みたいな人たちが見つかったからそれで良いのかな。
身寄りがいない人生に失望してしまうのは、実は精神面より事務手続きなんかのどうしようもなさだったりする。身元引受人になってくれる他人なんか、本当ならなかなか出逢えない。
進平兄ちゃんは生きててくれたほうが良かったし、鉄平と朝子には一緒になってほしかったけど、トゥルーエンドじゃなかったとしても、ハッピーエンドではあったはず。
逆に考えてみれば、どうしたってコントロールできない不条理な出来事以外は、自分で選ぶことができる。インスタなんていくらでも開設していいし、炎上したっていい!
このドラマが、ままならない人生をまるごと肯定してくれたような、そんな気がした。
しっかし、杉咲花かわいかったな!!!!!!!