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生きるコツ1月28日「分量の記載なし~カレンの台所」

 この日は10時くらいから編集作業。内容は日曜日に撮影した料理教室で紹介したハラール料理の「ラグメン」のレシピ紹介動画だ。

中央アジアで食べられるラグメン

 普段から割と料理はするのでレシピを見るのはお手の物だ。と偉そうに書くほどのことでもないが、料理に不慣れな20代の頃は調味料、ひとつとってもこれはどんな意味があるのか?砂糖から入れないダメなのか?食ったらいっしょじゃないか?ほうれん草は丸ごと茹でちゃえばいいじゃないか!とか。

 料理を少しでも習った人ならば、ほうれん草は根元から茹でればいいとか。包丁を使うと繊維が壊れるから手でむしったほうがおいしいとか。その行為の一つ一つの意味を知ってるものだ。けど、不慣れな頃は「炒めてしまえばみないっしょ!」という炒め原理主義者なためにことさらに食材の持ち味とか個性を理解せずに料理してしまっている。

 であるがゆえにレシピに説明されてない事柄は、料理に不慣れなものにとってはかなりのハードルである。一方、当然料理をやり始めると出会うのが、分量である。具材やら調味料やら分かりやすく記されてるのがレシピというものだ。

 で、いざ編集作業前にいただいた資料でレシピを確認すると

分量の記載はまるでなしや

 作り方は実際の教室で学ぶとして分量の記載はなしか、、、。
 この時、ふと思い出したのが数年前に出版された滝沢カレンさんのレシピ本「カレンの台所」である。レシピ本としては異例の材料の分量が全く載ってない「感覚主義」のレシピ本である。

 この本は読み物として圧倒的な面白さがあり、彼女独自の世界観がこれでもかと炸裂している。改めて読みなおすとレシピをひとつの「話」としてとらえながら進行している。で、本書の魅力の一つが例え方だったり、時に擬人法だったりする。その料理が「こんな風に見えてるの?」と驚きの連発である。一部を紹介しよう。ロールキャベツを紹介するレシピでは

 本日は包まれたいよくの強い乙女なひき肉と包みたい欲が強いキャベツの男気溢れるロールキャベツを作りました。
 ラッキーな出会いをした5つ包みの話をします。

カレンの台所より

 ひと昔まえには「ロールキャベツ男子」という欲望をキャベツで隠すという言葉も耳にしたがこの場合、ひき肉は乙女になるのか!と感心してしまう。

 男気キャベツは男試しに、まずは一枚一枚丁寧にキャベツを剝がしていき、熱湯で茹でられている最中です。
 どの葉がいちばん男として強いかを、見定めていきます。
 おっきな包容力がありそうなキャベツ男には率先して先に乙女な豚肉ひき肉と一緒になる権利を与えましょう。

カレンの台所より

 カレンさんの手にかかると、「男試し」とキャベツも熱湯風呂扱いである。この辺のとらえ方が最高だ。人生はキャベツをそんな風に捉えたことなどない。時にはこんな記述もある。

 合同結婚式はロールキャベツ界では当たり前です。
 できあがった全てのロールキャベツで式場がピチピチになるまで詰め込みます。
 そうしましたら、あとは若いもの同士で煮詰まってくださいと言うように蓋をして、私たちは知らん顔です。せめて弱火でお願いします。

カレンの台所より

 ロールキャベツが敷き詰められる光景が目に浮かぶようだ。
 それが「合同結婚式」と表現するセンスに「この人は天才か!」と唸ってしまう。

 終始こんな感じなので分量というものの記載はどこにもない。
 でもこの曖昧さも家庭料理ならではでいいじゃないか。とはいえ、いざ今回の料理は粉もんだしな、、、。分量は適当に!ってわけにもさすがにいかない。ここは一応丁寧に記すスタイルで編集を。

  結局、ほぼ一日がかりで編集を。たかだか3分足らずの動画に結構な時間を費やしてしまった。ふう。ちなみにこちらのラグメンは池袋「ムーさんの蒸鍋館」、日暮里「ハラールキッチン」大塚「食遇・楼蘭(ショクグウ・ロウラン」でも味わえます。作るのが面倒な方、味わいたい方はぜひどうぞ。

 さて、今日もがんばりますかね。

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島津秀泰(放送作家・動画制作・インタビュー・文章作成)
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