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“食”と“農”を語らう「東三河FOOD DAYS」に登壇!官民連携の共創で広域につなぐ遠州・和栗プロジェクトの今を紹介

遠州・和栗プロジェクトは、2024年7月28日・29日の2日間にわたり開催された「東三河FOOD DAYS」のDAY2トークセッションに登壇した。
 
発表テーマは「遠州・和栗プロジェクトからみる 官民一体となった持続発展型のまちづくりとは」。メンバーの求心力となるコンセプトメイキングの重要性や「持続発展型」で産業を推進する意義について発表した。

「和栗を世界に」という大きな目標に向かい、地元の企業や行政機関、金融機関など23社が連携・協力している遠州・和栗プロジェクト。東三河FOOD DAYSへの登壇は、全国有数の農業地帯である東三河エリアとの大切な連携のきっかけとなった。

本記事では、地産地消の魅力に触れられる東三河FOOD DAYSの様子とあわせ、遠州・和栗プロジェクトの登壇シーンを届けたい。

▼プロジェクト概要


地域の食と農にイノベーションを呼び起こす、東三河FOOD DAYSとは?

引用:東三河FOOD DAYS公式サイト

東三河の「食と農」の魅力に関する多彩なコンテンツが集うイベント。生産者から飲食事業者、スタートアップまで多様な参加者の交流を促し、地域の食と農にイノベーションを呼び起こす。サーラグループの総合力を生かしながら、東三河および静岡県遠州地域で事業を展開する総合不動産企業の中部ガス不動産株式会社(以下、中部ガス不動産)が主催し、2024年が初開催となる。

記念すべきDAY1には能登とのコラボレーション企画が催され、食事から得られる豊かさに感謝するひと時に。ほかDAY2には、飲食店や菓子店と生産者の「マッチング会」やスタートアップと生産者との共創を促す「TOYOHASHI AGRI MEETUP(豊橋アグリミートアップ)」など、生産者と事業者が直接商談を行う機会も設けられた。

DAY1の会場となった豊橋駅前の交流拠点「emCAMPUS(エムキャンパス)」。行政機関・住居・オフィスが融合し、食・健康・学びの体験が得られる場となっている

東三河エリアは、全国有数の農業地帯だ。中核市の豊橋市を中心に8市町村で構成され、野菜、花き、畜産物など幅広い品目が生産されている。食を通じた地域活性化を図ろうと、中部ガス不動産は「東三河フードバレー構想」を主導。食や食文化を通じて社会課題の解決に取り組む「フードクリエイター」の発掘・育成に注力してきた。
 
東三河FOOD DAYSは東三河フードバレー構想とも連動しながら、さまざまなプレイヤーの創意工夫を引き出す体験型イベントとなっている。

 

「産地に通いつめ、あるべき姿を見定めるのがスタートだった」志ドリブンなプロジェクト運営について

遠州・和栗プロジェクトでは、「和栗を世界に」という大きな目標を達成するため、広域連携を大切にしている。今回、地域の垣根を超えたご縁から、東三河FOOD DAYSで私たちの活動を東三河の皆さんに伝える機会をいただいた。この日を、東三河と遠州という隣接する農業地帯同士が連携するきっかけにできたらうれしい。
 
そんな私たちが発表したテーマは「遠州・和栗プロジェクトからみる 官民一体となった持続発展型のまちづくりとは」だ。

行政機関や金融機関、民間企業のほか昨今では大学とも協力しあいながら、長く続く次世代の農業のかたちを作るために取り組んでいることをお伝えした。 

5社6名のメンバーが登壇

まず、遠州・和栗プロジェクトの現在地を共有したい。
 
遠州・和栗プロジェクトは、2022年7月に発足して以来、約2年の間に当初の9社から23社が参画する団体となった。2024年度には、5つの分科会が始動。それぞれの参画企業が解決に向け取り組むテーマを「ミッション」に掲げ、個別の施策に取り組んでいる。

予想を超えるスピードで官民連携が進んでいる背景には、いったいどのような工夫があるのだろうか?

遠州エリア8市1町の代表が一堂に会したWAGURIディナー&フォーラムの様子

1つには、「和栗を世界へ」を全員の目標とし、「地域間競争」ではなく「地域間共創」を目指してきたことが挙げられる。そして、コンセプトに掲げた「持続発展型」のキーワードが、プロジェクトの求心力となりメンバーの志を束ねている。

このコンセプトを早期に見出せたのは、始動前から産地に足しげく通い現場の声を聴いてきたことが大きい。プロジェクトの立ち上げを担った春華堂の間宮専務取締役は、和栗をとりまく課題の本質について触れる。

「和栗の現状を勉強させていただこうと、全国の産地を訪問しました。そこで学んだのは『一者独走のもろさ』と呼べるものです。たとえば一社だけで農産品の復興を行うとしましょう。その一社が方向転換や事業撤退をすると、とたんに生産者は出口を失ってしまいます。

産業の出口となる農産品の買い取り先が一社に偏る場合も、生産量増加に対応しきれず供給過多に。結果として市場単価を押し下げてしまいます。そうした例が実際にあると聞き、私たちは『持続可能』の一歩先にある『持続発展型』の事業体を目指すべきではないか、と考えるようになりました。

『持続発展型』とは、持続可能性を担保することはもちろん、産業上の課題を解決しながら未来にプラスの価値をもたらす在り方です。遠州・和栗プロジェクトは、産官学金が連携し出口も含めて地域が一丸となることで、和栗と地域の発展を長く支えていけるようなプラットフォームでありたいと考えています」

掛川市の石川副市長は、次のように官民連携で社会課題の解決に取り組む意義を語る。

遠州・和栗プロジェクトは、まさに共創の場です。参画団体・企業がそれぞれの魅力や強みを生かし、和栗の課題解決にチャレンジしています。バックグラウンドも業種も異なる人たちが協力しあい、大きな課題を解決しようとする在り方が、同じ志を持つ人の共感を呼ぶのかもしれません。

行政で働く若手職員にとっては、思い切った施策や進行スピードに感じられる場面もあるようです。ですが『大きな目標を達成するには、ここまでやるべきなんだ』と視座を高めるきっかけになっているようです」

持続的かつ発展型でなければ「次世代に続く産業をつくれない」という危機感

産地を訪問する中で、もう1つ気付いたことがある。それは、遠州・和栗の課題に向き合うことには、日本の農業の根本課題に向き合う側面もあるということだ。農作業の負担や後継者不足といった課題は、どの産地にも共通しているためだ。遠州・和栗プロジェクトから生まれたソリューションで、他の農産品や地域の課題を解決できるかもしれない。

2023年11月に開催した植樹祭には、遠州エリアの技術力が集結した

JA掛川市で和栗の和栗の生産支援・販売に携わってきた吉政さんは、遠州・和栗プロジェクトの意義と成果について次のように話す。

「資材の高騰や気候変動など、生産者を取り巻く環境は厳しさを増しています。そんな中、業種の垣根を超えて地域の団体・企業が和栗の課題に向き合ってくれる。その志が遠州・和栗の生産者みなさんのやる気に火をつけてくれました。和栗の栽培を再開したり、新植に取り組んだりする方が増えています。

私たちも、遠州・和栗プロジェクトで官民連携の大切さを学びました。静岡経済連を通じてJA掛川市から遠州エリアのJAグループに呼びかけ、協力体制をつくりはじめています

ただし、これまでの道のりにおいて順調なことばかりではなかった。とくに「なぜ、本業と直接的には関係ない和栗の課題解決に携わるのか?」という質問は、多くのメンバーが一度は聞かれていることだろう。

遠鉄百貨店の中村常務取締役は、参画理由を次のように明かす。

「弊社も経営戦略に『地域共創』を掲げている1社ですが、自社内だけで具体的な施策を描くことには苦労もありました。そんな中、遠州・和栗プロジェクトのように、向き合う課題が明確で、自社の強みを生かしたミッションを見出していける機会には参画する意義を感じました」

静岡新聞・静岡放送の大見さんは、プラットフォームの強みについて次のように語る。

「社是に『不偏不党』を掲げるメディアの性格柄、遠州・和栗プロジェクトに対してどこまで貢献できるだろうと悩みました。ただ、そうした課題は参画メンバーに共通していて、腹を割って相談できる環境があります。

メンバー同士で志をともにしているからこそ、自社の強みを生かし弱みは補完できることも多くあります。たとえば私の所属する広報部会では、各社が自主的に遠州・和栗プロジェクトに関するプレスリリースを発表しています。参加企業の数だけメディアとの接点があり、広報の機会が得られている。ありがたいことです」

また、スムーズな共創を叶えるポイントについて中村さんは、「楽しめる環境があることも大事」だと説明する。

「ホストである掛川市の皆さんも明るく出迎えてくれますので、真面目な会議ながらも参画する楽しみがあります。こうした『楽しい雰囲気』をキープしていくことも、地域共創・官民連携には欠かせない要素の1つかと思います」

事務局ミーティングの冒頭には、春華堂の若手社員がアイスブレイクの「栗トーク」を披露。試作中の新商品を参画メンバーで試食する「栗ブレイク」も欠かさない。植樹祭やWAGURIディナー&フォーラムなど、すべてのイベントを手づくりで企画・運営していることも、メンバー同士の絆を深めるポイントだ。

この日も、春華堂の販売チームが出展・応援に駆け付けた

大見さんは「遠州・和栗プロジェクトに参画する中で、自社のアイデンティティを見つめなおし、自社にできることを自然と考えるようになった」と語る。

さいごに、間宮から改めて遠州・和栗プロジェクトの役割を伝えた。

「官民連携で新しいことにチャレンジする背景には、企業個別の事情があります。地元での企業認知度を高めたい、技術力の転用先を探したいなど、ニーズや課題はさまざまですが、和栗を起点とする社会課題の解決に向かう中で個社のやりたいことも叶えていけるのが遠州・和栗プロジェクトだと考えています」

2期目の後半に突入した遠州・和栗プロジェクト。いよいよ和栗を世界に届け、日本の農業のすばらしさをグローバルに伝えていきたい。今後の施策が大きく分けて2つある。

1つ目が、遠州エリアにおける和栗の生産能力の見える化だ。栗の植樹数や栽培面積など、生産者に紐付く情報を一元化し、毎年の収量予測に役立てつつ生産支援の拡充にもつなげる。デジタルの力も取り入れながら、より強固な生産体制を築いていく。

2つ目が、2025年2月に予定している和栗協議会の発足だ。和栗の栽培に関する研究開発や技術開発、資金的な援助も含め、事業をよりスピーディに進めるための体制を整える。

純粋な志は、同じ志を持つ人同士をつなぎ、長い時間をかけて結晶となる。その結晶が放つ光が強ければ強いほど、より遠くへと届いていく。東三河FOOD DAYSでの登壇が、より多くの志をつなぐきっかけになったらと願う。

東三河FOOD DAYSでも進む官民連携、多彩なプレイヤーが集いコンテンツを提供

地域の暮らしに寄り添う中部ガス不動産は、早くから官民連携のまちづくりを進めてきた。東三河FOOD DAYSでは愛知県や豊橋市ほか地域の生産者、スポンサーから多くの協力を集め、多彩なコンテンツが展開されていた。

「次世代フードクリエイター」による新規事業のピッチでは、フードロス削減と高付加価値な畜産を両立する有限会社環境テクシスが大賞を受賞。食品廃棄物を飼料として再利用する「エコフィード」の事業プランを発表した。

商品開発アイデアソンでは、一般参加者による柔軟なチーム編成で地域の特産品を生かした新商品・新メニューを考案した。優勝チームは、ワイン製造の過程で取り除かれる未熟なブドウの実「ヴェルジュ」を生かした新感覚のサワーを発表。

東三河が全国シェアの約50パーセントを占めるウズラの卵については、ころんと可愛らしい見た目に着目したカフェメニューの企画が誕生。地元愛にあふれる「住みます芸人」もチームに溶け込み、東三河の食と農の魅力をたっぷりと伝えた。

アイデアソンで評価を得たメニューは、愛知県東三河総局のバックアップにより、商品試作およびお披露目の機会を得られる。このように出口を見据えた新商品開発ができるのは、農商工連携の進む東三河ならではだという。

日曜日の開催となったDAY1には、野菜すくいやアユのつかみどり、かつお節削りなどの屋台が軒を連ねた。「子どもたちに東三河の豊かな恵みに触れられる機会を」と、主催者と参加者がともに考案した体験型コンテンツだ。

地元食材の新価値を発掘し、新たな事業プランを考えるハッカソンにも多数の参加者が知恵を寄せあい、2日間にわたり東三河の農業の未来について考えを巡らせた。地域の飲食・事業者や新進気鋭のスタートアップと東三河の生産者とをつなぐミートアップも盛り上がりを見せた。


この日限りの特別なお子さまランチ

「CLUB RED(※)」に名を連ねる能登の名シェフは、東三河の食材を使ったメニューを考案。親子で楽しめるお子さまランチには、順番待ちの行列ができた。夜の交流会では一夜限りの特別ディナーが提供され、地元の食材が参加者同士の交流に華を添えた。

(※)CLUB RED|株式会社ぐるなびが主催する、日本最大級の料理人コンペティション「RED U-35」において優秀な成績をおさめた若手料理人と歴代の審査員が集うコミュニティ

生まれ故郷の石川県七尾市で日本料理「一本杉川嶋」を営む川嶋亨シェフは、令和6年能登半島地震の被災により休業を余儀なくされる中、3カ月間という月日をかけこの日のメニューを考案した。

「東三河の食材は可能性にあふれていて、メニューの構想から試作までいくつものアイデアが生まれました。素材の活力を味わっていただけるよう、テーマは『五味五感』です。五味(甘味・酸味・塩味・苦味・うま味)の調和を五感で楽しむことで、今日の集いが素敵なひと時になるようにとの想いを込めました」と、川嶋シェフ。

ランチでの担当メニュー:あいち鴨のハンバーグ、糀屋三左衛門の甘酒プリン キャラメルソース、能登 岩モズクの味噌汁。川嶋シェフみずから田植えや稲刈りに赴くという能登産コシヒカリも絶品。

フランスと東京の名店で修業し、石川県羽咋市の食に魅了されて移住。「la clochette(ラ・クロシェット)」を創業した橋田祐亮シェフは、東三河の食材に対する想いを次のように語ってくれた。
 
「はじめて東三河の食材に触れたとき、実にたくさんの旬の食材があることに感動しました。“地方料理の集合体”といわれるフレンチで、素材のポテンシャルを引き出した料理を届けられたらと思いました。みなさんの交流とこれからの発展に、今日の一皿が少しでもお力になれていたらうれしいです」

ランチでの担当メニュー:塩麹ドレッシングのサラダ、おざわファーム玉蜀黍とヒゲナガエビの春巻、プレミアムRASサーモンのポキ、SFIDA製トマトの冷静ナポリタン

1人ひとりの志から始まる広域連携、地域と産業の未来に向けて

東三河FOOD DAYSは、地域の未来を想う多彩なプレイヤーによる特別な2日間となった。その成功の背景には、地域の暮らしに寄り添い、官民連携によるまちづくりを進めてきた中部ガス不動産の存在がある。
 
新たな食文化を創造し、地元食材の価値を高める東三河フードバレー構想の取り組みもまた、多くの共感を集め連携の輪を広げている。そうした想いある地域・企業との連携を大切に、私たち遠州・和栗プロジェクトも農業の新たな未来を切り拓いていこう。
 
持続発展型の事業推進に向けた今後の広域連携の動きにも、ぜひ注目いただけたらうれしい。

▼プロジェクト概要

遠州・和栗プロジェクトに関する取材依頼は、以下の春華堂・広報室まで
e-mail:press@shunkado.co.jp

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