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離婚成立!やったね!!~民謡に乗せて妻を追い出すチャイコフスキー~

大音量で始まります

交響曲第4番の第4楽章は、いきなり大音量で始まります。

第3楽章は静かに終わるので、演奏会で寝ている人はこの楽章の頭で飛び起きます。8月のアンサンブルSAKURAの演奏会も、隣の人が寝ていたら、予め起こしておいて頂けると幸いです。

冒頭にひとしきり大音量をならした後、古くから伝わるロシアの民謡「白樺は野に立てり」のメロディが木管楽器によって演奏されます。
そして、冒頭のファンファーレがそのままの形で登場しますが、ホルンを皮切りに雰囲気が一転、まるで勝利を勝ち取るかのような底抜けに明るいラストに向けて、オーケストラは音量もテンポもどんどん上げていきます。


喜びを爆発させるチャイコフスキー

この作品がチャイコフスキーの離婚をベースに作られたとすると、第4楽章は離婚が成立し、辛く苦しい結婚生活から解放された喜びを表現していると言えそうです。もっとも、チャイコフスキーとアントニーナとの離婚は法的には成立せず、生涯を通じて別居という形で決着し、経済的な援助は続けたようですが…。
とはいえ、過干渉な元妻や険悪な義理実家にも顔を出す必要がなくなり、しがらみから解放された喜びはひとしおだったと思われます。

3楽章で夢に浮かんできた楽しげな人々の様子を見て、周囲はそんなに他人のことを気にしてないと、いい意味で吹っ切れたチャイコフスキー。離婚をしたことによる世間体のことなど気にもせず、人目も憚らずガッツポーズを決める姿が浮かんできます。

民謡の調べに乗せて妻を追い出す

冒頭の爆発の後に続く「白樺は野に立てり」というロシア民謡は古くから伝わるもので、実に様々な歌詞がつけられています。

動画の短い版のものは、シラカバの木からバラライカという楽器を作り自宅で演奏するという、ロシアの田舎を思わせる素朴な歌です。
しかし、長い(40番近くまであるそう)版となると、楽器を演奏した後に、この民謡の主人公である若い女性が、白髪混じりの年老いた夫を追い出し、意中の若い男を家に連れ込むという不倫の内容になっています。年老いた夫への雑な扱いと、意中の男への丁寧な扱いの落差が凄まじく、思わず吹き出してしまいそうな内容です。経済的な事情か何かがあって一緒になったであろうこの夫婦は、普段からうまくいっておらず、妻の側が不倫に走ったのでしょう。

チャイコフスキーは、この長い版の内容を恐らくは知った上で、第4楽章に大胆に引用します。夫婦が不仲なことや、妻が夫を追い出す等々、チャイコフスキーの身の上と重なる部分が多々あるのがこの民謡です。初演当初から、特にチャイコフスキーの身近な人の中にはチャイコフスキーの離婚(別居)との関連を感じた人もいたかもしれません。
離婚(別居)した上で、さらに追い討ちをかけるように、暗に妻を貶めるかのような歌を引用する辺り、チャイコフスキーの性格の悪さ、執念深さを感じずにはいられません。

離婚は認めない!慰謝料を払え!と喚く妻を張り倒し、人生の主権を回復するチャイコフスキー

第4楽章の途中で、この曲の第一楽章の冒頭に出てきた運命の動機、このnoteでは離婚を切り出された妻の怒り狂う姿となっていますが、それが同じ姿で登場します。

しかし、旅先のイタリアで気力体力を回復し、以前とは段違いにパワーアップして帰ってきたチャイコフスキー。この運命の動機、もとい妻からの怒りに任せたヒステリックな罵倒に対し、強烈な反撃を一度のみならず、二度も喰らわせます。往復ビンタです。フィジカルもメンタルも強くなったチャイコフスキーを前に、この運命の動機(怒り狂う妻)は急速に力を失い、最後は静まり返ります。

はじめは強大な力を持った敵役が、主人公に破れ力を失って終わるのは、チャイコフスキーのバレエ音楽の典型的なストーリーです。この交響曲第4番も、そのストーリーに見事に沿っています。

離婚成立!やったね!!


運命の動機、荒ぶる妻を制したチャイコフスキーは、冒頭を上回る勢いで喜びを爆発させます。

弦楽器はトレモロで激しく弓を動かし、管楽器は総力を上げて咆哮するなか、打楽器が凄まじい勢力となって加勢します。
しまいにはンバルの連打という、とんでもない荒業を繰り出す始末です。

曲は一層盛り上がり、最後はオーケストラ全員が「ファ」の音を強烈な音量で鳴らして終わります。

離婚、別居という人生の危機を乗り越えたチャイコフスキーは、この曲を足掛かりにして次々に名曲を作ります。イタリア奇想曲、弦楽セレナーデ、序曲1812年、ピアノ三重奏曲「ある偉大な芸術家の思い出に」等々。今日でもよく聴かれる作品たちばかりです。次なる番号付きの交響曲(5番)に向けて、試行錯誤しながら作曲の技術を磨き続け、以前にも増して仕事に邁進していくのでした。

歳を取った我々だからこそ共感できる曲

アンサンブルSAKURAは、割と団員の年齢層が高めです。人間、生きていると、身近な人の家庭でチャイコフスキーのような離婚があったり、離婚に限らずとも色々なご家庭の苦労を見聞きし、時には団員自身もそうした苦労を経験することもあります。

そんな我々だからこそ、チャイコフスキーの家庭内での苦悩を深く理解し、共感した上で演奏に取り組めるのではないかと、この交響曲に取り組みながら考えてしまいます。

一筋縄にはいかない大変な作品ですが、限られた時間のなかでよく練習をし、この作品の持つ「引きの強さ」をしっかりと出せるようがんばります。ぜひ、8/18はIMAホールへお越しください!!


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アンサンブルSAKURA第41回定期演奏会≪オーケストラの休日≫
日時:2024/08/18(日)13:00開場14:00開演
会場:IMAホール(都営大江戸線光ケ丘駅前)
指揮:高石治
入場料:1,000円(当日券あります)

曲目:
軽騎兵序曲/スッペ
パノラマ(眠れる森の美女)/チャイコフスキー
葦笛の踊り(クルミ割り人形)/チャイコフスキー
情景(白鳥の湖)/チャイコフスキー
威風堂々第1番/エルガー
「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲/マスカーニ
禿山の一夜/ムソルグスキー
交響曲第4番/チャイコフスキー

公式HP
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公式note(毎月第2,4日曜の練習日更新、演奏会前は毎週日曜更新)
https://note.com/ensemblesakura

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