「となりのトトロ」「風立ちぬ」に見る、かつての国民病~39回定期演奏会の聴き処~
今回は演奏の聞き所というよりも「となりのトトロ」をより深く理解するための時代背景についてのお話です。
トトロにおける、草壁家。お母さんがいない中でも子供達が落ち込んだりしないよう、お父さんが明るく振る舞っていて素敵だなと思う次第です。
作中では明らかにされませんが…
トトロのお母さんが患っていたのは、かつて日本の国民病とされた肺結核(※)と言われています。
※所沢市に「八国山緑地」があり、隣接する新山手病院は作中に登場する「七国山病院」のモデルとされています。
同じスタジオジブリの作品で戦前~戦中を舞台とする「風立ちぬ」があります。ヒロインである菜穂子は肺結核を患いますが、当時は有効な治療薬はなく、人里離れた療養所で安静にする以外の処置はありません。置き手紙を残し、主人公の二郎のもとを去る菜穂子の姿はあまりに切ない。
昭和20年代後半~、結核の治療薬が普及し始める
戦後になって、日本では結核の治療薬の輸入が切望されましたが、当時まだ開発されて間もない新薬を輸入することは、困難を極めます。昭和20年代の後半になってから、現在の理研が治療薬の製造を開始し、そこから予防接種も相まって、日本国内の結核患者数は激減しました。
昭和30年代を舞台とするトトロにおいて、風立ちぬに見られるような悲壮感を感じないのは、戦中、戦後の時代背景の違いというのもそうですが、当時の医療の進歩も少なからず影響しているのではと思います。
大学の考古学研究室に籍を置く、いわば都会のインテリである草壁家のお父さんは、結核は治療薬によって治るものであると、正確に理解していたものと思われます。しかるべき治療を施せばお母さんも退院できると、子供たちに言い聞かせていたでしょう。
もっとも、これはお母さんがいない寂しさの前には無力で、お母さんにトウモロコシを届けようとしたメイは迷子になってしまう訳ですが…。
見返すごとに、気付きがある
それがジブリの作品の魅力だと思います。
コンサートで演奏をお聴きいただくのもそうですが、となりのトトロに限らず、ジブリの作品を見返して頂くことで、何か気づくことがあるかもしれません。
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アンサンブルSAKURA第39回定期演奏会
日時:2023/3/19(日)13:30開場14:00開演
会場:浅草公会堂
指揮:高石治
曲目:
ビゼー/カルメン組曲
久石譲/オーケストラストーリーズ組曲「となりのトトロ」ほか
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