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小説「solec」

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#理化学研究所

(小説)solec 1-1「プロローグ」

(小説)solec 1-1「プロローグ」

一面の草原は絶えることを知らない。

どこまでも、どこまでも、うんざりするほど。

巨大な大陸と無限の空の間のわずかな隙間を疾走する2040トンの鋼鉄の塊。燦然と輝く太陽に照らされる一直線の糸は、地平線へ聳える。

平坦な大地と南の山脈。重厚な青空。無機質な潤沢。

雲はまばらに線路を横断するように北から南へ流れる。

地球の大気の循環、天球を巡る太陽や惑星、それらは100年も1000年も前、人類

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(小説)solec 2-1「理化学研究所」

(小説)solec 2-1「理化学研究所」

 喪失したカグツチ2をオレンブルクで見送ったのち、室長らのグループはさらなる素粒子研究で成功した。室長は言った「お前ももう立派な研究者だ。どうだ。東に行ってみる気はあるかね」
そんなこと考えたことがなかった。ソレクで生まれ、育ってきた私にその外側で、しかも第4段階での着任なんて。。。室長との連絡はそれが最後だった。
そんなときだ。人事省人事局から日本へ行くよう招待されたのは。
私はもうソレクには必

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(小説)solec 2-2「ふくろうさん」

(小説)solec 2-2「ふくろうさん」

「もしかして、やたらとこの街をうろつくのが気に障りました?」

「その通りです。安藤さんはこの街が初めてのようですね。まったく、これだから・・・。どうせソレクの温室育ちなのでしょう。まぁここでは私も安藤さんと同じ立場の人間ではありますが、自分の街が土足で踏みにじられる気分は最悪ですねぇ。」ふくろうさんは気違いらしい。

「どういうつもりですか?」私は怒るべきか?

「安藤さんは怒っている。私がふざ

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(小説)solec 2-4「嘔吐」

(小説)solec 2-4「嘔吐」

 安藤水子は白装束の男に地下へ連れて行かれた。同伴していたジャックとニコラは玄関内での乱闘でやられてしまった。誘拐?目的がわからない。もうじき基地の人間が私の救出にくるだろう。そうなったらこの人たちの命はない。このふくろうさん=白装束の男は一体何を考えているのだろう。恐怖というよりは好奇心が働いている。なぜだろう、なぜ「私」なのだろう。

「これから見せることの全ては君の想像を遥かに超える。だが君

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(小説)solec 2-5「※※※」

(小説)solec 2-5「※※※」

 「よし!降りるぞ!」第三資料棟からほど遠いテニスコートなら降りられる。

「待て!ブライアン!」

「なんだ?操縦士!?」

ガンッ。ヘリが急上昇する、ブライアンは振り落とされないよう必死にしがみつく。その瞬間、今降りようとしていたテニスコートが吹き飛ぶ!ヘリは巻き込まれるが、なんとか体勢を保つ。このパイロットは強運の持ち主だろうか?

「おいおいソレク軍のレーダーは節穴か?第三資料棟が狙いじゃ

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(小説)solec 2-6「悪」

(小説)solec 2-6「悪」

 「最後まで、最後まで見てもらうよ!全部シナリオ通りさ。生命工学、神経科学、神経システム科学、暴力科学なんてのもあるんだぜ。一番辛い実験対象は、「自殺」だったかな。ねえ聞いてる?誰でもいいから聞いてる!??」

 驚いたのはその会話中背景が大きく歪んだりカラフルな模様が現れたり、大都市の真上にいるような風景に切り替わったりするのだ。
「彼はどこにいるんでしょうね。」
「このレッドカーペットを辿って

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