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小説「solec」

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#SF小説

(小説)solec 1-1「プロローグ」

(小説)solec 1-1「プロローグ」

一面の草原は絶えることを知らない。

どこまでも、どこまでも、うんざりするほど。

巨大な大陸と無限の空の間のわずかな隙間を疾走する2040トンの鋼鉄の塊。燦然と輝く太陽に照らされる一直線の糸は、地平線へ聳える。

平坦な大地と南の山脈。重厚な青空。無機質な潤沢。

雲はまばらに線路を横断するように北から南へ流れる。

地球の大気の循環、天球を巡る太陽や惑星、それらは100年も1000年も前、人類

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(小説)solec 3-3「ハバロフスク上空」

(小説)solec 3-3「ハバロフスク上空」

 「第一次攻撃は成功したようだ。」

国境線を超えて、ハバロフスクへ入る。シミュレーション通り、夜明けの空をいくつもの光の筋が・・・横切らなかった。

「おい、ヤシガニの再突入、まだかな。」

「時間的に、もうしてるんじゃないか?」

高度40,000フィートから当たりを見回すが、再突入時の光は見当たらない。

「朝日に隠れてるんじゃないか?」

それに、雲海が広がっていることも気になる。

予報

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(小説)solec 3-4「列島消失」

(小説)solec 3-4「列島消失」

 「日本列島、消えちゃいましたね。」

分析の結果、列島を包み込んだ雲はジャミングのような効果を持っているらしい。これにより、攻撃対象はおろか、列島の姿さえ確認できなくなっている。まるで日本列島全体が巨大な要塞のようだ。
(始めから閉じていたようなものだが。)

「ここで見る限り北京は大丈夫そうですよ。でも南がね・・・。全滅に近い。第四機甲師団って確か有人部隊でしたよね。しかも四川省の各地で市街地

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(小説)solec 3-7「補給」

(小説)solec 3-7「補給」

「敵の対空兵器が衛星攻撃によって無くなった今、制空権はこちらにある。ヤシガニが上陸した今、こちらの勝ちは決まりだろう。せいぜい3日かな。そうだろ、ロレンツォ君。」トゥラーティは聞く。

「僕がこいつら相手に三日もかけると?6時間で十分だ。それに、第2射のヤシガニはすべて物資輸送に使うつもりだから。戦闘では使えないんだよ。多脚戦車はさ。あんたらの考えた隠し兵器とやらはさ。」

「武士道ちゃん。ダイヤ

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(小説)solec 3-8「とどめ」

(小説)solec 3-8「とどめ」

 本丸、東京。すでに工作部隊により水門は破壊されている。江東ブロック、品川ブロック、墨田ブロック、港ブロック、新港ブロックの水攻めが完了している。さらに各地インフラを掌握し、都内各地でガス漏れによる火災を発生させた。これにはある一つの目的があった。

それは、どこかにあるはずの本丸を見つけるためだ。

「まぁこの程度の状況はおそらく敵も予想はされていたでしょうね。最悪の予想でしょうが。国費を軍備に

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(小説)solec 3-9「戦争の後始末」

(小説)solec 3-9「戦争の後始末」

「作戦コードSDCε–1だ。武士道ちゃん。」
「はぁ?そんなもんありませんよ。」
「今考えた。」
「で?」

「作戦コードSDCε–1」別名「不都合な真実」。あえて、残すということ。篭城させたままにするということ。そして世界中にその醜態を晒すということ。もう死んだ政権であるということを彼ら自信がその屍をもって証明する。論より証拠。不確定な歴史的事実よりも、腐った実体だ。政治の標本を見せ続けることで

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