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【ぐるっとパス2024・3周目2】松濤美術館/空の発見

会期(2024年9月14日(土)~11月10日(日))の前期中、学芸員によるギャラリー・トーク(10/5(土))に合わせ行ってきた。


★浮世絵の典型的な空の表現「一文字ぼかし」
「冨嶽三十六景 山下白雨さんかはくう」葛飾北斎 19世紀・江戸時代

画像は「文化遺産オンライン」から、参考まで。
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/174914

実際に展示されていたのは、埼玉県立歴史と民俗の博物館所蔵の錦絵。
この展覧会で浮世絵の典型的な空の表現「一文字ぼかし」という技法を知った。
浮世絵版画の空の表現「一文字ぼかし」は、絵の上部に横一線に色をのせそれにグラデーションをつけるという簡素な表現。空があることを示す記号的、概念的な表現。
白雨はくう:夏の激しいにわか雨のこと。

★近代日本洋画の開拓者
「不忍池図」高橋由一ゆいち

「不忍池」高橋由一 1880(明治13)年頃 愛知県美術館蔵
画像は「文化遺産オンライン」から
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/41398


下野国しもつけのくに(現栃木県)の佐野藩士の嫡子として江戸に生まれた高橋由一は、初め狩野派に学ぶが、嘉永年間(1848-54)に洋製石版画を見たのを契機に洋画に転向した。この絵も素晴らしかったが、私が彼の作品でより強く心惹かれたのが、この作品、

★「中洲月夜なかすつきよの図」高橋由一 1878(明治11)年 宇都宮美術館蔵

フライヤーの裏面に掲載されている。
あの時代の「夜」の暗さ、深さがそれはそれは見事に描写されていた。夜の果てのその先の暗闇に、吸い込まれそうだった。
この絵も「文化遺産オンライン」に掲載されているが、絵画の素晴らしさって、やはり実物には叶わない。


★渇望を絵で表現すると「青の太陽」香月泰男かずきやすお 

「青の太陽」香月泰男かずきやすお 1969(昭和44)年 山口県立美術館

フライヤー表面に採用されているこの絵。何の前知識もないまま見て、キャプションを見て胸をつかれた。

匍匐ほふく訓練をさせられる演習のおり、地球に穴を穿ったという感じのアリの巣穴を見ていた。自分の穴に出入りするアリをうらやみ、アリになって穴の底から青空だけを見ていたい。そんな想いで描いたものである。深い穴から見ると、真昼の青空にも星が見えるそうだ。

松濤美術館

意思に反して戦争の訓練に駆り出されている自分。それとは対照的に、人間に比べれば小さな存在であるはずの蟻は、地面に穿たれた巣穴を自由に出入りし、生きることを謳歌しているように見えました。
いっそのこと蟻になって、地中深くにもぐっていたい。そうすれば、少なくとも、醜い人間同士の争いを見ずにすむではないか・・・。

山口県立美術館
青の太陽(シベリア・シリーズ) | 山口県立美術館 (y-pam.jp)


★会期前半なのに絵葉書が売り切れる理由があり過ぎた「ディスカバー」坂本トクロウ

「ディスカバー」坂本トクロウ 2005(平成17)年 山梨県立美術館蔵

この展覧会で絵として一番気に入ったのがこの絵。

手前に描かれた電信柱と小鳥。遠くの山並みの間には茫漠たる空間。

松濤美術館

空間を占める水色の静謐な美しさと、電信柱さえ芸術になり得る見事さ。心の内に広がる、「くう」と静かさを味わった。

絵葉書があるのなら欲しい!と思ったのに、この絵葉書だけが売り切れ!
そんなぁ~、とガッカリしたら、なんと後日、手に入れることが出来た!その顛末は、、、。

ぐるっとパス2024で3周目、行ったよ
1. 山種美術館 割引額200円(割引前の金額1,400円)
2. 出光美術館 割引額200円(割引前の金額1,200円)
3. 帆船日本丸/横浜みなと博物館 800円
4. 渋谷区立松濤美術館 1,000円

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