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ゴーガンかゴーギャンか考えてしまった「憧憬の地 ブルターニュ」@国立西洋美術館
上野の国立西洋美術館で「憧憬の地 ブルターニュ」を見てきました。
◆「しょうけい」か「どうけい」か
まず、展覧会のタイトルを見て、少し考えてしまいました。
「憧憬」。
読み方は、「しょうけい」も「どうけい」も、どっちもアリ。
本展公式サイトを見ると、「しょうけい」とルビが振ってありました。ちなみに、『広辞苑』には「しょうけい」が正しい、と書いてあります。
前置きが長くなりましたが、つまり本展は、芸術家たちの「あこがれの地」であるブルターニュをテーマにした展覧会です。
図録やポスターなどに使われているキーヴィジュアルのひとつは、モネの作品。
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モネはブルターニュの景色に魅了され、たくさんの作品を描いたそうです。
◆「ゴーガン」か「ゴーギャン」か
本展の副題は、「モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷」。
ここで、また読み方が気になるコトバが出てきました。
「ゴーガン」か「ゴーギャン」か。
先日訪れたSOMPO美術館の「ブルターニュの光と風」では、ゴーギャン表記でした。
独立行政法人国立美術館のサイトで検索をかけてみたところ、ゴーガンでは岡本神草の作品『「アダムとイヴ」習作(ポール・ゴーガン《蛇の誘い》)』がヒットしただけ。
いっぽうゴーギャンで検索すると、西洋美術館や近代美術館が所蔵するポール・ゴーギャンの作品全10点がヒットしました。
ちなみに、某新聞に載っていた本展紹介記事では、展覧会の副題は当然「ゴーガン」を使っていましたが、記事本文ではゴーギャン表記でした。
フランス語の発音に近いのは「ゴーガン」。
なので、最近はゴーガン表記が増えているようですが、美術館や媒体によって推奨表記が違うので、この不統一な感じが妙に気になります。
話がそれましたが、本展の大きな見どころは、12点のゴーガン作品。一部屋に彼の作品がまとめられていたので、なかなか圧巻でした。
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◆西洋画と洋画
本展の最後、第4章では、日本出身画家たちによるブルターニュ作品が展示されていました。
ここで、また気になるのが「洋画」と「西洋画」。
日本出身の画家が、西洋美術の技法を使って描いた作品を「洋画」と呼ぶらしいのですが、でも江戸時代に西洋の技法をまねて描いた「秋田蘭画」は洋画と呼ばれていないようですし、また遠近法など使った江戸後期の画家、亜欧堂田善も洋画家ではなく、洋風画家と呼ばれています。
この曖昧さが日本らしい「良さ」なのかもしれません。
でも、曖昧に細分化されているため、日本人でも難しくて理解できない。日本の芸術家について、海外の人に説明しづらい。だから、世界に日本のアート(特に近現代)を発信しづらい、という問題もありそうです。
またまた脱線しましたが、ブルターニュに魅了された洋画家たちの作品では、特に小杉未醒(放菴)の《楽人と踊子》がユニークでした。でも、この絵って、洋画? 日本画?
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◆アートで英語を学ぶ!
本展では、日本語の解説がある部分に英語も併記されていました。
先ほどご紹介したモネの作品解説から、引用します。
The expanse of calm water and the sunlit rock surfaces are expressed with countless, juxtaposed, and intensely colored brushstrokes.
辞書を引いた単語は、juxtaposed「並置された」。
モネのあの絵は、無数の筆触の並置で表されている、ということでした。
この展覧会は、いわゆるブルターニュ系の画家だけでなく、ターナーやミュシャの作品、さらに日本人画家のトランクも展示されていて、盛りだくさんの内容でした。
参考サイト:
・徳島県立近代美術館:ttps://art.bunmori.tokushima.jp/article/0007241.html
・千葉市美術館:https://www.ccma-net.jp/exhibitions/special/23-1-13-2-26/
・毎日ことば:https://salon.mainichi-kotoba.jp/archives/75853
・独立行政法人国立美術館・所蔵作品検索:https://search.artmuseums.go.jp/records.php?sakuhin=100200