英語のこぼれ話⑤ 日本人には聞こえにくい音
みなさん、こんにちは。
英文法学び直しCafeへようこそ。
この note は、
英文法の解説がメインですが、
ときどき英語の雑学や
他言語の話も
お届けします。
英語だけでなく、
語学の楽しさを
伝えられたらと思います。
今回は、
発音についてのこぼれ話です。
日本人には聞こえにくい音がある
それぞれの言語には
それぞれの音の特徴があります。
ある言語を
母語とする人にとっては
当たり前に言ったり
聞き取ったりできる音でも、
別の言語を
母語とする人にとっては
言うのが難しい、
どうしても聞き取れない音が
あります。
今回は、
われわれ日本語ネイティブにとって
聞き取りにくい音について、
お話ししたいと思います。
聞き取りにくい英語の音
前回、wanted について、
という話をしましたね。
want(ほしい)という動詞は
よく to という前置詞とともに
使われます。
「 want to +動詞の原形」 で、
「~したい」という意味になります。
(詳しくは、
あとで不定詞を学ぶときに
説明しますね。)
want が過去形になって
「 wanted to +動詞の原形」になると、
「~したかった(過去形)」に
なるのですが……。
この「 wanted to 」の
「 d 」の発音が、
日本人にとっては
聞き取りにくい音なんです。
「 t 」とつながる「 d 」
「wanted 」の「 d 」が
うしろの「 to 」の「 t 」と
舌の位置が同じでダブるので、
「ワンティッ トゥー」と、
「 d 」はほとんど発音されずに
「 t 」とつながってしまうんです。
(早口な人だと、
「 wanted 」の「 t 」も消えて、
「ワニッ トゥー」となることも
多いです。)
この、消えた「 d 」の音は
英語ネイティブの方々には
聞こえているらしいのですが、
われわれ日本語ネイティブには
ほぼ聞き取れないんです。
この現象は、
「wanted to」のときだけではなく、
have の過去形 had に to が付いた、
「had to(~しなければならなかった)」
のときにも、起こります。
日本人の耳には
「ハッ トゥー」と
聞こえやすいんですね。
それにしても、
なぜ、弱い[ d ]の音は
日本語ネイティブにとって
聞き取りにくいのでしょう?
その理由を知るためには、
まず私たちの母語である、
日本語の音の特徴を
理解する必要があります。
この機会に、
日本語と英語の音を
比較してみましょう。
日本語の音の特徴
日本語は、
ひらがな・カタカナ・漢字から
成り立っていますよね。
そのうち、ひらがなとカタカナは
音を表しています。
50音表と、ローマ字表
みなさんは、
幼児の頃や小学校時代に
このような50音表を
習ったと思います。
また、
ローマ字表についても
習いましたよね。
※ローマ字には
「ヘボン式」と「訓令式」の
2種類の表記法がありますが、
ここでは
パスポートなどに用いる
ヘボン式のローマ字表を
引用しました。
ローマ字とはそもそも、
日本語の音を
アルファベットで表すために
生み出されたものです。
ローマ字表を見ると、
日本語の音の特徴が
わかります。
日本語は、ほぼ母音で終わる
日本語の音は、
大きく分けて
3種類の音でできています。
① 母音のみ
「愛( ai )」や「家( ie )」
のように、
母音(=あいうえお)だけで
できている語があります。
② 子音+母音
それから、
「空( sora )」や
「鳥( tori )」のように、
「子音+母音」でできている語も
ありますね。
③ 子音+半母音+母音
また、
「社長( shacho)」や
「牛乳( gyunyu)」のように、
子音と母音の間に
「 y 」や「 h 」が入る音も
ありますね。
いわゆる
小さい「ゃ」「ゅ」「ょ」を
使う音で、
「拗音(ようおん)」と
いいます。
※ここでは
長音記号(=のばす記号)は
省略しています。
さて、
ここで注目したいのは、
①~③のどのパターンでも、
必ず母音で終わっている
という事実です。
日本語は
母音で終わる語が
ほとんどなんです。
「ん」は例外
例外は、
「みかん( mikan )」のように
「ん」で終わる語です。
(「ん」のことを
「撥音(はつおん)」と
いいます。)
「ん」以外のひらがなには
母音が含まれているんですね。
日本人が英語の発音に苦戦する理由
ところが、英語には
子音で終わる単語が
たくさんあります。
私たちは
子音だけを発音することに
慣れていません。
get を「ゲット」と
「 t 」に「 o 」という母音を
つけて言ってしまうし、
like は「ライク」と
「 k 」に「 u 」という母音をつけて
言ってしまいます。
われわれ日本語ネイティブは、
「子音に母音をつけてしまうクセ」
があるために、
「子音だけで終わりがち」な
英語の発音に苦戦するんです。
そして、
母音が付いていない
子音で終わる英単語を
聞き取ることも、
日本語ネイティブにとっては
なかなか難しいです。
発音のしやすさでは、
日本語と同じように
母音で終わることの多い
イタリア語の方が、
英語よりも
学びやすいかもしれません。
ただ、
みなさんが今、
学び直したいのは、
英語ですよね。
それなら、
日本語の音の特徴と
英語の音の特徴の
両方を知ると良いです。
自分にとって
聞こえにくい音や
発音しにくい音が
あることを理解しましょう。
そして、たとえば
「子音だけの音」に
母音をくっつけないように
ちょっと意識して発音したり、
自分が聞き取れていない子音が
実は存在するのだと
意識して聞いたりすることで、
リスニングが得意になったり
つづりを覚えやすくなったり
英語の上達につながりますよ。
日本語力を鍛えることも必要
「母国語以上に
外国語がうまくなることはない」
と、よく言われます。
英語がうまくなりたいなら、
母国語である日本語への理解も
深めることをおすすめします。
日本語の本を読んだり、
日本語学のサイトを見たりして
日本語力も高めていきましょう。
みなさん、今回も
お疲れ様でした!
次回は、
不規則動詞の過去形について
解説します。
また読んでいただけたら嬉しいです。
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私の励みになっています。
最後まで読んでくださって、
ありがとうございました。
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