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16.アイデア大全・問題解決大全・独学大全(読書猿)

自分を叱咤激励するよりも、そしてやらなかったことを悔やみ自責の念にかられるよりも、行ったことをただ淡々と記録すること。

「勉強法」の最善策を知るためにインターネットの海を漂うと、いずれかのタイミングで「読書猿」に出会うと言われている。

ぼくがこのブログに出会ったのは10年くらい前、ちょうど頭が悪くて困っていた時にふと目にした。出会った当時は、あまりにも長い記事でそっ閉じしてしまっていたのだが、勉強はしなければならなかったのでぽつぽつと記事を眺めたり遠ざかったりを繰り返していた。今でも「Anki」を使っているのは、このブログの影響が大きいと思う。

当時から勉強法を謳った記事や本は多く出ていたけれど、そういう勉強に関して言えばこのブログにぶつかることができたのは幸いなのだと思う。もし、当時ここに当たることができなければ、今ごろ「テツガク(笑)」や「ハーバード(笑)」や「脳科学(笑)」や「メンタリズム(笑)」などに傾倒していたのかもしれない。

ブログののち、たまたま見ていたAmazonレビューで著者(kurubushi)がいたり、2014年ごろに「一行読書猿」というのでTwitterに現れたりした(ぼくがフォローしたのはそのあたり)。

なぜいまさら紹介するのか

ぼくが何か言わなくとも、知りたい人はいずれ辿り着くだろうと思っているし、時間の早い遅いは結局のところ当人に「その時」が来ているかどうかという、ある種の運命論的な考え方を持っているぼくが、わざわざ(意味がないだろうにも拘わらず)字数を割くのは、ぼく自身がネガティブだからなのだろう。

ビジネスにせよ、勉強にせよ、ぼくたちは気持ちが良い時に素晴らしいビジョンを打ち立てる。図書館の本を全て読み切ってやろうとか、1ヶ月でギリシア語やロシア語の原典を読めるようになろうとか、チーム予算目標を5倍で達成してやろうとか、とんでもないビジネスを興して初年度から黒字化させてやろうとか―まあこれはぼくが過去に少しでも思ったことがある内容な訳だが―を夢描く。そして、それらのビジョンは果たされないまま終わる。正確には、終わるというよりもそれに向かうことを諦めた自分を正当化し、忘れてしまう。

何が問題なのだろうか?

だって、『思考は現実化する』と言われているし、世の成功者を見ていれば夢はいつか叶うって言われている。巷の自己啓発本も、気持ちを盛り上げるためのノウハウが詰っている。

ぼくたちは気持ちのいい言葉や、資本や、都合の良い物語に回収されて自分の今を見失いがちである。このままでは相川七瀬はずっと夢見る少女になってしまう。ぼくたちは必ず失敗するし、挫折するし、膝を折った自分たちを認めたくない。ぼくたちは、再び自分が掲げた道に戻らないまま時間を進める、そして気持ち良くしてくれた物語たちはぼくたちを再びその道へ戻らせる手段を与えてくれない。過行く時間の中で、また甘い劇薬を無差別に散らすだけである。

ぼくたちは、生存者バイアスという夢物語から目を覚まし、いかにして情けなく自分の敷いた道に戻ってくるかというリスクヘッジを取らなければならない。それは、まったく楽しいものではないし、鬱々とした気分で最悪のケースを想定し続けることでもある。けれど、自分を凡人であると、努力し続けられる生存競争の勝者ではないと認められるのならば、ロジカルもアナロジーも用いたところで、他に手段はない。

ぼくらは諦めることを知っている。

もう一度自分の描いたビジョンに戻る術は、自分の中にしかない。でも、その術を知ろうとすることはできる。ゆえに、ぼくがやらなくても誰かがやってくれるだろう話を、あえてここでしておく。

今日諦めかけた自分への戒めでもある。




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