革の手縫いに欠かせない菱錐 -Diamond awl-
わたしは革小物製作の際に、ヨーロッパ目打ちという道具と菱錐等を使って縫い穴を開けて行く…
ひとつひとつ穴を開ける、とても地道なことをやっている。ご苦労様…
最初の頃は道具の仕立て方を覚える、試すのに結構な時間がかかった。
道具の違いか? わたしの技術的な問題か? 理想とは違うことばかりで…
ちょいちょい… いや、定期的に途方に暮れていた。
知識も経験もない頃は、そんなことの連続ばかりだった。
そんな時は、よく見ていた番組"プロフェッショナル 仕事の流儀"での様々な職種のプロの人たちの姿、チャレンジ、苦悩、葛藤、ロジック、歩を止めずに進む… そんな物語と自分を無理やり重ね合わせ、検証しながら…
とりあえず、"あと一歩だけ、前に進もう♪" と口ずさんでいた。今もたまに。
道具に関して革包丁やヨーロッパ目打ち、その他材料のことをいくつか書いたが、あまりスポットを当てていなかった菱錐(Awlオウル)のことを主に書きたいと思う。
ここから先、画像で尖った金属の刃を見ることになるので…
先端恐怖症の方は、スゥ~っとスクロールして、スキをポチっと押して退出して下されば結構です。。。
革の手縫いに欠かせない菱錐 -Diamond awl-
革の手縫いに使う菱錐(ダイヤモンドオウル)は、主に木製などのハンドルに菱形をした鋼材が固定され、先端は研がれた刃、菱刃(Diamond blade)が付いている。フレンチオウル(French awl)という菱形でなく、平たい板状のモノもある。刃の巾(横巾)も種類があり、鋼材にも種類がある。
ハンドルの柄の形も丸いモノ、フラットなモノ、サイズや形状はメーカーによる。刃がハンドルと固定されているモノ、ハンドルから刃が外せ他の刃と交換できるモノもある。ただ交換可能な鋼材の軸径、規格や条件はある。
切れ味が悪い、ただの鋼材に…
菱錐… 完全なる素人の頃、こんなモノどう研げばいいのか…と。
確実に失敗するし失敗すれば研ぎ直し、どんどん短くなってしまう…
いや、短くてもいいのか…しかも短い方が安定するかも…とやってみるも、予想通りの最初以上に切れ味が悪い、ただの鋼材に成り下がった…
今度は値段の安い錐の刃だけ買って、刃を交換できるハンドルに取り付け、研ぎの練習してみたが、鋼材の硬度が柔らかく弱い…切れ味も含めダメダメ…
新たな菱錐を買っては、研ぐ練習を繰り返し… 繰り返し…
ひとり、リピート アフター ミー…
上手く行かない時は、何が良くないか? 検証の繰り返し…
心を燃やせ… 歯を食いしばって前を向け…
荒研ぎでしっかりと刃を付けた状態から、慎重に丁寧にサンドペーパーの番手を上げ研ぐを繰り返し、最後の方は研ぐより磨くという感じで金属磨きに使うピカールと青棒を塗り込んだ革砥で仕上げ、バフ研磨なども試した。
わたし向きの形状に仕上げられるようになるまで、何度やり直したことか…
その後も道具を変えたり、革を変えたりすることで研ぎ直しを続けて、今の形状に至る。長かった、無知からの脱出… 未だ修行中でもある。
刃物やオウルに使う鋼材の特徴
鋼材の専門家でなく奥深く知らないので、主観となる。
ほぼ鋼材は通称HSS /ハイス鋼と呼ぶハイスピード鋼(high-speed steel) が付いている。日本語だと高速度鋼… ハイス鋼でいいです。。。
刃物鋼や切削工具用として使われるハイス鋼には、粉末ハイスと溶解ハイスなどがあるらしい。
出汁の粉末タイプ、液体タイプぐらいしか… 何となくの、雑な理解力。。。
オウルは細く鋭い刃、研ぎも繊細である…わたしにとってはね。
先端は細いまたは薄いが、今まで欠けたり、折れたりは皆無である。
硬度が高い鋼材のおかげか、優しく扱っているからか…
オウルに使用される鋼材の条件を考えれば、元々は刃物に使う用途の鋼材でなくとも高硬度で切れ味良く、耐磨耗性に強く、靭性として粘りがあり、錆びに強ければ…とても好ましい。わがまま言いたい放題だが…
実際そういう鋼材で道具は作られていたりする。
久しぶりに道具販売のサイトをみたが、中国製オウルが増えているような…
そのまま使えるタイプだと思うが、使用する鋼材の違いもある。鋼材は良しとして、切れ味は仕立てられ方次第、買わないと絶対にわからない。。。
道具製作などに使われる鋼材をオウルのブレードに使用しているメーカーがあったが、それはそれで有りだろう。
条件を満たしたフレンチオウルなら、ひとつ買ってみても良いかと思ったが結構な値段だったので、そっとそのサイトを閉じた…
ヨーロッパ目打ちの場合、菱刃でなくていい、フラットなフレンチオウルでも良い。菱目打ち用に仕立てられた菱錐は、わたしには使えない。
安来鋼をルーツに持つ鋼材
次は、日本の歴史と伝統を持つ安来鋼(ヤスキハガネ)を使った革包丁。
個人的に、もののけ姫の"たたら場"を思い出すが、若い人は鬼滅の刃か…
玉鋼や刀ではなく、和鋼である安来鋼をルーツに持つ鋼材"青鋼"である。
青鋼、白鋼は料理包丁の鋼材によく使用されている。
安来鋼(YSSヤスキハガネ)の製造をしていた日立金属の日米ファンド連合への売却により、2023年1月に株式会社プロテリアルに社名変更した。
現在は株式会社プロテリアル安来工場で製造しているとのこと。日本の伝統はより進化して行くのだろうか…
わたしの使う革包丁は青鋼、通称青紙2号と一番硬い青紙スーパー。
いづれも硬い鋼だが20mm、30mm、36mmの刃巾、平たい形状で同じ角度にて前後に研ぐので、まだ研ぎやすい。スーパー…もっそ硬いけど。
最後に
日本や海外の鋼材会社も、世界の工場と呼ばれる中国で生産していることもあり、レザークラフトツールでも中国製はそんな鋼材の使用なのだろう。
単純に刃物はしっかり研げば切れる。研ぎ方は好みの形状、角度などもあり、技術的で繰り返しの練習で身に付いて行くことかと。
欠けやすい、欠けにくい、長持ちするかしないかは要となる鋼材の質の違いでもあるし、あまりにも鋭角に薄く研ぐと高硬度でも欠けやすい。
どこの革包丁が良いかわからないという人も多い。
わたしも使っていない所のモノまではわからない、画像だけでわからない。
国産の火造りと呼ばれるモノであったり、刃物の作り手の鍛冶職人さんや、道具を仕立てる職人さんの個性や腕の差も多少なりあるだろう。
1本買って使ってみる… としか言えない。
ではまた、¡Hasta luego!
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