Nerhol 水平線を捲る(千葉市美術館)
Nerholというアーティストユニット、今回の千葉市美術館での展示で名前を知ったのだが、行ってみたらとても面白かった。
田中義久さん(1980年生まれ)と飯田竜太さん(1981年生まれ)の2人で、「時間を封入したハン立体の作品」を製作している。田中さんが紙と平面的構成によるグラフィックデザイン、飯田さんが紙や文字を素材とする彫刻を担当。トップ画像は2011年の「Circle」という作品で、真ん中に黒い丸を印刷したリソグラフの紙を何十枚(もっとかも)張り合わせ、それを削ってひとつひとつ違う立体にしている。削ったところの紙は薄いわけです。
何を想起したかと言うと、高校の学園祭とかで地理地学同好会の展示に、等高線に合わせて切った段ボールを、地形図通りに重ねて張り合わせてある立体地形図があったものだが、それをちょっと思い出させる感じ。但し、高さを付けて切り出したものを貼り重ねていくのではなく、先に四角い紙を何層にも重ねて貼ってあるものを彫っていくので、制作の向きは逆。
「水平線を捲る TURNING THE LEAVES OF HORIZONS」2024年9月11日~11月4日 千葉市美術館。あと1週間で終わってしまうが、機会があれば是非見て貰いたい展示だった。
入場してすぐの企画展示室4,3のみ撮影不可、その後企画展示室2からは撮影自由。しかし、下にある写真を見てもわかるように、拙いスマホの撮影では、作品が伝えたいものはなかなかわからない。
美術館に入る前に、まず1階のさや堂ホール(ここは入場無料)で、Nerholのインスタレーションを見る。
展示室にはキャプションはなく、入り口で貰った作品リストを参照しながら見ていく(内藤礼「生まれておいて、生きておいで」と似た形式)。一部作品には、丁寧な解説が付いている。撮影不可の企画展示室4には、アーティスト・イン・レジデンスとして滞在した大分県別府市での作品が展示されていて、企画展示室3には、第一生命ビルとマッカーサーをテーマにした作品群。
企画展示室2には「Circle」という作品群。鋭利な刃物で刻んだような感じで、その後の部屋の作品のような荒々しさはない。端正。
企画展示室1は、人物像や、雑草などの写真を重ね(シャドーボックスみたいに、同じ絵を、何層も重ねているのではなく、連写とか、時系列の写真を重ねているので、彫り出してみると、上と下の画像のずれが、不思議な効果を見せている)た作品が多い。会場に木の枝が立てかけられているのだが(これもサイズ感は違うが内藤礼っぽい)、よく見ると、木の枝は何センチかごとに輪切りにしてあり、それをつないであるのだ。重層的。
自分が撮ってきた写真を見たら、Nerhol作品は、殆どがCircleか、植物の写真だった。人物像はすごくインパクトがあったのだが、ちょっと怖いというか、魂がうつってきそうな気持になって、写真を撮るのに臆してしまった。
床に並べられた珪化木が石ころのように並んだインスタレーションも時の流れ、というNerholが追求してきたものの一つの象徴として、存在感があった。
他の作家の作品も含めると300点以上の展示で、それを作品一覧で確認しながら眺めるとかなり時間がかかった。面白かったけれど疲れた...。
Nerhol展は8階と7階で、5階の常設展では、「特集 田中一村と千葉」を開催していた(2024年10月9日~12月1日)。東京都美術館の田中一村展とのコラボレーション企画か。点数も結構あって、面白かったが、一村作品は全部撮影不可だったので、案内ハガキだけ紹介しておく。過去に複数回田中一村展を開催してきた千葉市美術館の矜持を感じさせる展示。初公開作品も何点もあった。一村作品の光学調査を紹介するパネル展示などもあり。
田中一村以外の収蔵品も色々紹介していたし、蔵真墨、Nerhol、金川晋吾のポートレート作品の展示もあり。Nerhol展に来た人は、常設展も忘れずに見て行ってほしい。
Nerhol展の図録はこれから刊行予定らしく、会場の椅子の上などに置いてあり、ミュージアムショップで販売していたのは、近作まで収録した画集。
予約受付中の図録はこちら
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