舟越桂 森へ行く日(箱根 彫刻の森美術館)
舟越桂さんの作品が見たいなー、どこかで展覧会とかやらないのかしら、と検索したら、箱根の彫刻の森美術館で「舟越桂 森へ行く日」展を開催しているではないか! 2024年7月26日ー11月4日。
舟越桂展やっているとは全然気づいておらず、ちょうど家族と箱根に行く計画を立てていたのであった。箱根で何するか決めていなかったが、いきなり彫刻の森一択になった。
チラシと入り口表示で、「樹の水の音」という作品が屋外に置かれているが、他の多くの舟越作品同様、楠に彩色された作品なので、屋外になんて置いておけません。チラシにも「この写真は所蔵者の許可を得て撮影しています。実際の展示とは異なります」と注意書きあり。勿論、屋内に展示されていた。
展覧会は撮影禁止。
55周年を迎える彫刻の森美術館が記念となる展覧会の企画を舟越桂氏に持ち込み、準備を進めていたが、2024年3月29日に舟越さんが逝去。結果的に追悼展のようになってしまった。
展覧会は、1階に舟越さんのアトリエを模した、工具やスケッチがちりばめられたスペースが作られ(いつまでも見ていたい興味深さ)、その中に「妻の肖像」などの木彫作品が配されていた。
また、「立てかけ風景画」(2023-2024)という最晩年の作品。病床で、ティッシュ等の紙箱の裏に、鉛筆で、草原と、そこに横たわる女性の絵を横長に描き、ヨーグルトのカップの足元を1センチくらい残した丸い台に切り込みを入れたものに挿して立てられるようにしたものが何点もあった。小さい作品だが、展示室の壁にプロジェクターで投影されていた。舟越さんが最後に残した風景。
昔(1980年代)、舟越さんが家族のために作った木のおもちゃ、これはすえもりブックスという、舟越さんのお姉さんがやっている出版社で出版した『おもちゃのいいわけ』という写真集で紹介されていて、絵はがきなども広く売られているので(わたしも何枚か買ったことがある)、初めて実物を見られて感動。本も今回の展覧会収蔵品を加えた増補新版が刊行されている。
新たに本に付け加えられる作品として、2007年に作られた「立ったまま寝ないの! ピノッキオ!!」という、首がバネで出来てて、木の頭部がだらんと下がっている彫刻作品とか、それに関連したピノッキオの絵巻物、そして「あの頃のオールをうら返した」(下記)などの展示もあり。
中2階の展示室は「人間とは何か」というテーマで、肩に山を持つ人の木像「山と水の間に」と、それにつながるドローイングなど。
広い2階展示室は「心象人物」というテーマで、スフィンクスシリーズの作品や、上記チラシの「樹の水の音」、頭に付けた分厚い青いガラス板が印象的な「青の書」、「海に届く手」(下の写真)など、沢山の木彫作品と、関連する絵が色々。これまでの舟越桂展で見てきた作品もあったし、初めて見るものもあった。「戦争をみるスフィンクス」の、苦渋に満ちた表情にあらためて胸を鷲掴みにされる。
今回の展示作品の中で、病床の「立てかけ風景画」を除くと一番新しかったのが、下記の<私は街を飛ぶ>のためのドローイング。
これはどこかで...と思ったら、丸の内仲通りに展示されている作品のためのドローイングだった。箱根から帰った翌日、出勤の途中で見てくる。
別棟のアートホールで、「名作コレクション+舟越桂選」を開催。荻原守衛、ブランクーシ、朝倉文夫、ジャコメッティなどオーソドックスな作品もあり、舟越保武「原の城(首B)」(舟越保武は、園内に屋外展示もあった)もあり。舟越桂と親交のあった作家の作品としては保井智貴、名和晃平、三木俊治、それに杉戸洋と三沢厚彦(三沢厚彦ANIMALS Multi-Dimensions展のために制作された巨大なキメラ像)、そして、2017年の「アニマルハウス謎の館」展で舟越さん、杉戸さん、小林正人さん、三沢さんが共同制作した「オカピのいる場所」も出展されていて狂喜乱舞。
彫刻の森美術館は、美術館であると同時に観光地でもあるので、じっくり美術鑑賞をするにはどうもドタバタした感じがあるが、舟越作品の静謐な瞳たちが見つめていると、そんなに大騒ぎはしてられないな、という空気が場に漂っているような感じもした。
舟越さんがもうこの世にいないなんて、未だに信じられない気もするが、彼の残してくれたものたちを眺め、しみじみ舟越さんのことを思い出したい。
これ↓は、1992年に刊行された作品集。今回の展覧会の図録ではない。
彫刻の森美術館のサイトによると、9月上旬に展覧会記録集が刊行されるらしい。買っちゃうかも…。
「芸術新潮」の舟越桂追悼号、ちょっと薄くてこなれた価格になっているので買いたいかも…。
「私の中のスフィンクス」展(2015-2016年)は群馬県の館林美術館に見に行った、この時に見たスフィンクスの何体かが今回の展覧会でも展示されていた。
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