#45 Tokyo Walker 要急の街歩き
2021年、緊急事態宣言が出てから再び在宅勤務となった。2020年4月の緊急事態宣言時の在宅勤務は、人生のオアシスのような時間だった。はじめて、毎日自分で料理をし、掃除をし、自らの人生を生きていたような気がした。
そして、再び在宅勤務になり、そうしたオアシスが帰ってくるかとおもいきや、管理者側が謎のアップデートをし、より管理が厳しい就業スタイルになった。それこそ、朝から夕方までずっと椅子に座って画面とにらめっこして、ズームばかりやっている。
気づくと肩をいからしたまま、数時間動かずにいる。ある日、肩がかたまって息が出来なくなった。これはまずいと思って、それから、夕方になると外を歩くようになった。
もちろん、不要不急の外出は避けろとのお達しだが、誰もいない往来を歩いている分には特段問題はなかろう。
たしか、その日は神楽坂や新国立競技場だとか、そういったところまで歩いていったのだった。気づけば16キロほど歩いており、自分でもバカだと思ったが、そう苦にもならない。
どんどんと歩いていると、次々といろいろな街があらわれ、駅があらわれる。東京って歩いてどこまでもいけるんだなあと思う。
鉄道があちこちにはりめぐらされているから僕たちは鉄道の路線図でものを考えるようになるが、徒歩は縦横無尽だ。駅から駅へ、ではなく街から街へ。
駅で降りて、駅の周辺のことを知る。そういう点が無数にある。歩いていくと、知っている点に出くわして、点と点がつながって線になっていく。そして、縦横無尽に歩いているとそれがいつしか面になっていく。
さながらRPGのマップが更新されていくように。そういうアプリがあったらいいのにと最近思い始めた。おそらくポケモンGOなどをやっているといいのだろうけれども、画面を見ながら歩くのもなんだかもったいない。
そして、この歩く最中はデジタルデトックスをする。Googleマップは一切使わずに、路上の地図をたよりに歩いていくのが楽しい。街によって、地図の数も質も異なる場合がある。そういう気づきもまたおもしろい。
先週歩いたのは渋谷からレインボーブリッジ。渋谷から品川はそこそこあると思って歩いていたが、歩くとあっというまに高輪あたりに出た。ついでなので高輪ゲートウェイにも行ってみたが、ほとんど陸の孤島だった。
何か駅ビルにあるのかと思ったら、スターバックスが一件はいっているだけだった。そして、見渡すと、向こうにすぐ品川駅が見える。近い。なぜここに駅を作ったのだろうと考える。そういえば、新国立競技場を見に行ったときもそんな思いだった。
こんなに大きなものを作ってしまって……。こんな時期だからこそなおさら、何か大きな間違いを犯したような気持ちになる。人類として。
さて、高輪から品川に行き、そこからレインボーブリッジを目指したが、あんなに大きなものがなかなかあらわれない。そして、工場や倉庫群のなかを歩くことになるので本当に誰も歩いていないし、おそろしくなる。ようやく見つけたと思ったら、レインボーブリッジはただのブリッジだった。どうやら20時でライトが消えるらしい。
せっかくここまで歩いてきたのにと思うと残念だった。もう一度あそこを歩けと言われたら躊躇してしまうような場所だったので、またしばらくしたら行ってみようと思う。その近くにある塔はなかなか異様な存在感をしめしていたが。
この日は27000歩だった。18キロくらいの道のり。4時間近く歩いていたことになる。途中休んだりするとどんどんと歩いていける。この感じだと東京の横断や縦断は可能なのかもしれない。思えば、昔のひとは歩いて移動していたわけだから、歩けないわけがない。
不要不急の外出は控えるようにと言われるが、運動は必要であるし、閉じこもっていると精神衛生上もよくない。人のいないところくらい歩かせておくれ。
次は、どこに行こう。