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詩「負平等」

負平等
遠藤ヒツジ

以前、とある小さな画廊で見かけた
一幅の絵について ふと思い出す

その絵の構造はシンプル
数字の「1」がデフォルメされて
すらりとした姿で美しく立ちながらも
隣を気にするように首をもたげている
1が気にしている隣では
数字の「2」が椅子に腰かけている
2はフラミンゴのような曲線に哀愁を帯びて
どこか疲れた様子だと私には見えた

1は白抜きであり
2はベタ塗の黒一色

そんな1と2を描いた
絵の題名は「負平等」とあり
その奇妙な造語がふっと気にかかった

1と2の関係を
対立ととるか 融和ととるか
対話とみるか 闘争とみるか
風刺とも解さず 無関心で通り過ぎるか

「2は1より大きい」と3は言った
「1位は2位よりすごい」と4は言った
「2は座っているから1より偉い」と5は言った
「2は疲れて腰も曲がっているから1が素晴らしい」と6は言った
「1が右にあって2は左にある」と7は言った
「1は白い鳩で2は黒い鴉」と8は言った
9は無言を貫いた

平等は分銅のように
寸分たがわずつり合うことではなく
同じ場所に個性を持って描かれて
互いを見つめ認めあうことを指すのではないか

つりあう平等に負けるな
にぎにぎしくもかまびすしい
姿なき「不平等」の声に
どうか負けるな

どちらかに傾いていても
それが曖昧にして最善な時と場合があることを
見つめ続けてゆきたいと
一幅の絵を思い出して 私の視界が僅かに滲む

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