Ichi

一縷の望み

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一縷の望み

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気になるアイツ

俺は基本的に、男の体毛を気にした事はあまりない。 とはいえ胸毛ギャランドゥなどの類人猿に近い人種に遭遇した事も無いが、精々すね毛や脇毛、陰毛が濃いなぁ……と思ったくらいである。 しかしそんな俺も体毛が気になってしまった事が、たった一度だけある。 それはM気質が垣間見える男性と遊んでいた時の事。 「舐めて」と言われたので焦らしながらも顔を胸に埋めたその時、舌先に柔らかくはあるが舌触りの悪いモノが触れたのを感じた。 そう、乳毛である。 特に気にせず続けよう

    • 願ったのは、

      俺には弟がいる。 半分血の繋がらない、歳の離れた大切な大切な愛し子。 俺の話をよく聞きに来てくれている人間ならば、必ず一度は「弟を溺愛している」という話を耳にするだろう。 事実俺は、弟の事を愛している。 ずっと傍にいる事が叶わなくても、もう二度と抱きしめる事ができなかったとして構わない。 俺が守れなかった「愛」を注がれながら、温かい陽の下で健やかに笑って生きていて欲しい。 ただそれだけを切に願い続ける優しい子。 だけどそれは、初めからそうだったワケじゃない。

      • おめでとう

        記憶なんて朧気で、時には何かにすり変わってる事もある案外信用できないモノだ。 それでも俺にとって「いつも通り」の方がよっぽど怖いのは、人は時に不都合なものを「無かった事」にしてしまえるからだろうか。 俺が4歳の頃。 祖母の家に移住してから母から殴られる事もほとんどなくなって生活も安定した。 祖母の家にはよく親戚の従兄妹達が家に来て、大人の代わりに遊んでくれる。 その中で1番よく遊んでくれたのは、母親の2番目の兄の子どもである従兄(15)とその妹である従姉(13)。

        • ロシア

          夏休みに入り、アルバイト三昧で荒稼ぎしていた頃。 俺の事を気にかけてくれる祖母が「帰ってこい」とあまりにしつこいので、仕方なく2泊3日ほど帰省することになった。 これは東京から東北行きの新幹線に乗っていた時の出来事である。 幸い平日で空いていた新幹線の自由席。 右側の窓際の席に座ることにした。 しばらくして窓の外を眺めていると、いくつかの駅でロシア人家族が俺の隣の席に座る。 けっこうな大荷物だったので、恐らく旅行だと思う。 左側にパパさんと3歳ほどの娘さん、俺の隣

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        気になるアイツ

          痛み

          世の中には知らない方が幸せでいられる事もある。 そんな俺は昔から、良くも悪くも「知り過ぎる」人間だった。 母は昔からヒステリー気味で、俺が3歳の頃に父に出ていかれてから離婚調停を終えるまでの間、育児ノイローゼだった。 怒鳴る殴る蹴るは当たり前として、包丁を向けられたり、物を投げられたり、髪を掴まれたり、引きずられたり、閉じ込められたり、外に投げ捨てられたり、水に沈められたり、ご飯を食べさせて貰えなかったり。 まぁいろいろとされた事に関しては許すつもりなど1ミリもないが

          Magic 後編

          着いたマンションは比較的新しく、家賃は大体8万ってところか。 部屋は物が多いThe 野郎の一人暮らし感。 案外勉強熱心なのか本も読むようでかなりの量があったが、少し専門的な本はともかくゴミくそ詐欺師のエッセイ本が見えた気がしてそっと目を逸らした。 机上に置かれた帽子の中には千円札が何枚か入っており、売上管理が不用心だなと思う。 ロフトの上に寝室があるらしく、下の空いてるところに荷物を置いて上に上がることに。 夏には少しばかり不便だろうが、少年心をくすぐられるロフトに

          Magic 後編

          Magic 前編

          緊急事態宣言が出て数日。 眠らない街もすっかり寂れて看板は暗く、道端にはキャッチの一人もない。 さて、どうしたものか。 その辺に腰をかけながら始発の電車までの暇潰しをぼんやり考えていると、大体20代後半の細身の男に話しかけられた。 彼は俺に「マジックを披露して、もし面白かったら一緒に飲みに行きませんか?」と持ちかけてくる。 「正気かコイツ?」とも思ったが、ナンパにしては斬新な誘いに退屈していた身としては都合が良かった。 一つだけ残念な点があるとするならば、それは俺

          Magic 前編

          真実 編

          翌日、部活に顔を出すと何やらAとBがスマホを見て楽しげに笑っていた。 「どうした? 何か良い事でもあったか?」 「そうなの!ねぇ、見て見て! これ面白くない?」 AがBと見ていたであろう、スマホの画面を見せてくる。 そこに映っていたのは、Aが拾い画で作ったであろう別の女になりすましたTwitterのアカウントでDMのやり取りしてる画面。 「見てこれ!T君の写真欲しい❤って言ったら、ウチと撮ったプリクラを切り取って送ってんだよ?wヤバすぎw」 「こわw」

          真実 編

          計 画 通 り 編

          先に逃げた2人と校舎裏の片隅で合流してしばらく隠れていたが、何故かTは追いかけて来なかった。 おかしい。かと言って状況確認の為に今出るのは危険すぎる。 AとBは自転車の心配をしていたが、なんと先程一緒にいた男の先輩2人のうち1人から連絡が来て、自転車を校外に持ち出してくれる事になった。 必要なのは、状況確認だけ。 そこで目的がAである以上、最悪捕まっても何とかなるBか俺が偵察に行かなければならないワケだが、平和に生きてきた女の子にそれを求めるのは酷だろう。 その

          計 画 通 り 編

          止まるんじゃねぇぞ……編

          例のボイメ事件から数ヵ月後。 Tによる異常行動の愚痴を聴く度に、俺は「心配しているフリ」をしながら彼らの痴情を密かに愉しんでいた。 そしてある日ついに、事は動き出す。 Tは入部当初から2年生メインの男の先輩グループと仲が良く、一緒につるんでいるのは周知の事実だった。 そんなTが、本当に言っているかも分からない先輩たちによる1年disを間接的にAに言っていた事を知る。 「自分だけが認められている」と自慢したかったのかは知らないが、その陰口の中には実現できるかは

          止まるんじゃねぇぞ……編

          ボイメ編

          これは俺が高校1年生の時に巻き込まれた、メンヘラのメンヘラによるメンヘラな事件の話である。 入学して2週間が経った頃、幼馴染から軽音部の見学に誘われた俺は付き添いとして同行する事になる。 するとなんという事でしょう。 あーら、不思議🎶 当時部長のドラムの演奏に、一聴き惚れしちゃった❤ という事で、入部を即決して幼馴染と入部。 思い立ったが吉日である。 入部後、新入部員は全員で8人。 2ヶ月ほどそれぞれ先輩が付いてパート練習の基礎が始まり、もう一人のド

          ボイメ編

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          体の相性が良い三十路のリーマンとの、3回目。 フレンズと呼ぶにはあまりに薄情で、欲望のまま互いを求める名前のない関係が酷く心地良かった。 いつも仕事終わりか休憩中にスーツで会いに来た男が、珍しく休日に私服で会いに来て言われた言葉は「ネカフェでしてみたい」と。 なるほど。 偏見かもしれないが、世の金がない学生カップルがカラオケの次くらいに致す場所が「ネットカフェ」らしい。 ちなみに俺自身はネカフェでの経験は一度も無く、店員には申し訳ないと思いながらも「欲」に身

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          パシリLOVE

          近年、UberEATSが出てきてその業態から賛否両論意見されてきたものの、コロナによりデリバリー需要が急激に上がった事は知っていた。 知っていたが、自分には特に必要の無いものだと思っていた。 ……そう、あの日までは。 1ヶ月忙殺されてようやく帰宅できた日。 とうに限界を越えている体が求めたのは食。 しかし食事を用意するどころか、何かをする気力がもう残っていない俺には寝て空腹を誤魔化す事しか出来ない。 でも食べたい。 何でもいいから胃に固形物をぶち込みたい。

          パシリLOVE

          COLDSMASH!

          それは8月、まだまだ残暑が残る頃。 S気がある遊び相手の噛み癖に少しだけ悩まされつつも、その日もまた遊びに誘われて出掛けた。 待ち合わせ場所は住宅街。 「悪趣味だな」と思いつつも合流して一緒に歩いていると、プレイの一環のつもりなのか周囲を確認しつつ何度も身体を触られてとてもイライラした事を覚えている。 そうして人気のない公園に着いた後、二人でベンチに座って少し喋っていると、彼はあるモノを取り出してこう言った。 「これ、塗るとスースーして気持ち良いらしいよ?」

          COLDSMASH!