暮らしを楽しむ余裕。
今月の「絵を読み解く」は、ボッティチェリの「プリマヴェーラ」ですが、
8月の「絵を読み解く」は、歌川広重の「東海道五十三次 日本橋朝ノ景」です。
振り幅がすごいw
フィレンツェのルネサンス期の作品、1480年ころの作品と、
江戸時代の浮世絵、1830年ころの作品、
時代も400年くらい隔たっていますが、
西洋と東洋、
貴族に向けての作品と、庶民に向けての作品と。
(どちらも、常連の受講生さんのリクエストで決めた作品です。受講生さんのアンテナの高さがすごい)
今まで浮世絵をよく知らなったので、調べているのですが、
楽しいな浮世絵😆
「庶民」に売れる作品を作らなければならないので、テーマが「庶民受け」する必要はあったのだと思いますが、それでも、
庶民が好むもの
庶民が望むもの
庶民が理想とするもの
庶民が憧れるもの
庶民が心を揺さぶられるもの
庶民が、くすっと笑えるもの
そんな作品ばかりで、
とにかく楽しくて、とにかく自由。
(「写実」から抜け出したくてもがいていた西洋の先進的な画家さんたちが、浮世絵と出会ってジャポニズムのブームが起きたのも分かる気がします。「アカデミズム」「良い絵とはこういう絵」でガチガチに縛られていた彼らが、浮世絵から衝撃を受けたのはなんとなく理解できる。浮世絵って自由だもんなぁ)
版画で安かったとはいえ、
浮世絵を支えたのは庶民の購入なわけで、
庶民に、絵を買う余裕があったの、すごいな、と思います。
「花」とか「絵」とか、
なくても生きていけるものを買うのは、
お金の余裕というより、心の余裕なのですよね。
江戸は当時、世界的に見ても人口の多い大都市で、景気がよかったのもあると思いますが、
今と違って、保険制度や年金制度があるわけでもなく、終身雇用制や大企業の福利厚生があるわけでもなく、
「安全か危険か」でいったら、現代の私たちの基準からすれば、その日暮らしの危険な暮らしをしていたはずの彼ら彼女らが、
「安心か不安か」でいったら、現代の私たちよりも相当ゆったりと安心して、
日々の暮らしを楽しんでいた。
日々の暮らしを楽しむ余裕があった。
これ、すごいことだなぁ、と思います。
江戸のほうが、現代より助け合って生きていられたんだろうなぁ。
人々が安心しているから、宵越しの金は持たない、が美徳になるくらい、経済が回っていたんだろうし。
私たちはもう1回、
江戸時代の「安心感」や「暮らしを楽しむ余裕」を取り戻した方がよいのかもしれない、
と、浮世絵を調べて思っているところでありました。
人が安心するのって、
お金や社会制度やインフラじゃないみたいだなぁ。
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