吉本ばななを読んで、ふわふわを形にする。
吉本ばなな「ミトンとふびん」
吉本ばななさんの作品は、ずいぶんたくさん読んできたように思います。
でも、時間が経っているせいもあってか、どれもふわふわとした朧気な記憶しかないのです。
久しぶりに手にとったこの本。
装丁の佇まいが、話の世界観をあらわしているようで、控えめで、静けさがあって、やわらかい。
「ミトンとふびん」を含む、6つの物語からなる作品です。
登場人物は皆、身近な人の死など、なにかしら傷を抱えて生きています。
そしてそれぞれ、どこか日常的ではないところでの出会いを通して、生きる光のようなものを見つける、という話でした。
よかった。
特に「SINSIN AND THE MOUSE」と「情け嶋」が好きでした。
ばななさんの文章の語りかた自体も、すごく心地よいので好き。
朧気な記憶しかない、と言いましたが、この作品に限らず共通して感じること。
澄んだ空気感、淡々としているようで一生懸命、ひっそりと冷たい空気を感じながらもやわらかくやさしい。
でも、私が救われない気がするのはなぜだろう?あたたかいけど、どこか純粋すぎて尊すぎて、入り込めない感じもしていたのです。
考えてみると、自分は、主人公たちに値する痛みや喪失感なんて持ち合わせていないからだ、と気付きました。
ばななさんは、あとがきで、
と書いてはいるけれど。
私から見ると、それはとても特別に思えることばかり。
「情け嶋」の主人公のこのことばで、あぁ、そのとおりだ、と自分の感情に納得がいきました。
まさにこれを、ばななさんの物語を読むときに感じでいたんだ、と思いました。
でも、本当にそうなのかな。
今回、少し違ったことは。
記録を残そう、と思いながら読むと、純粋に、たくさんのよいことばたちに出会えた、ということ。
まさに、「生きるとはこういうこと」というそれぞれの主人公の答えのようなものが、各物語の中で語られるのです。
哲学的でありながらわかりやすく、やさしい語り口で、じんわりと染み込んでくるような、そんな答えです。
その中からひとつ、好きなフレーズを紹介します。
読書を記録に残す、ということ
徒歩5分もかからないところに図書館があるので、たいていの本は、読みたいと思うとすぐに図書館で予約して借りて読みます。
手元に置いておきたいと思う本や、好きな作家の本だけは、買ってくりかえし読みます。
なので、よかった!と思って読み終えたはずなのに、時間がたって思い返すとあまり内容を詳しく覚えていない…ということもよくあります。
確かにそのとき読み終わっておもしろいと思えば、それでいいのかもしれません。
じっくり1冊1冊読んで記録を残そうとしていたら、今ほどたくさんの本を読めないかもしれません。
でも、読書が好きだと言いながら、読み終えた本のタイトルの数を増やしていくだけでは寂しいかも…と思ったりもします。
少しずつ、記録しながら、記憶に積み上げていきたいと思います。
読んでいただいてありがとうございます。
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