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”スラムダンク”から学ぶ”言葉の力”

さて、今日は私の学生時代に本当に大きな影響を与えてくれた漫画
「スラムダンク」について、少しお話をしたいと思います。

当然のことながら、映画『THE FIRST SLAMDUNK』も観て、劇場でウルウルしながら見たことも記憶に新しいのですが(笑)
この漫画のおかげで、私も小学校・中学校とバスケを始めたのは言うまでもありません。それだけ憧れも持ちましたし、学ぶべきことも多かったと思います。
何よりも心理描写や一つ一つのセリフに込められた「想い」がいまだに私のなかでは引用したくなる…それだけたくさんの要素が詰まっているものだと思っています。

個人的には、あのシーンが!とかあの試合が!とかもたくさんの人と語りたいのですが(笑)あえて今回は”指導””教育”、あるいは”チームビルディング”の観点で、見てみたいと思います!
※でも一緒に語ってくれる人、大募集します(笑)

強みを活かす、絶妙なチームバランス

”スラムダンク”には、神奈川の県大会予選から、本当に様々なチームが登場してきます。
湘北高校・陵南高校・翔陽高校・海南大附属高校
※他にも三浦台高校・武里高校とかもありますが、ここは省きます。

それぞれが全て魅力的なチームではあるのですが、どのチームも絶妙なバランスのチームバランスを持っているというところが、この漫画の魅力でもあると思っています。
例えば、湘北高校であれば、本当に全員が個性的なメンバーであり、決して仲良しグループではありません。もっと言えばチーム内の信頼関係も最高のレベルとは言えません(笑)(かつて混乱もたくさんありましたし…)

しかし、これは指導者がなのか、もしくは一人一人自らが気づいたからなのかわかりませんが、「全員が役割を分かっている」
つまり全員がスーパーマンやオールマイティーではなく、自身が突き抜けている能力を最大限に活かしきっているというところに強みがあるのです。
「この時に何をすればいい」かを分かっている人は強いです。

個人的に、日本代表(現:千葉ジェッツ)の富樫選手は、どのタイミングで点数を取るか、試合の流れを変えられるかというところを本当に意識しながら、ブザービートのタイミングでスリーを決めたり、嫌な点の取られ方をした流れの時に、すぐ点を取り返しに行くということをしていると思います(個人的に大好きな選手なので(笑)

また少し昔の話になりますが、2009年のWBCの時にイチロー選手が、試合を決めたセンター前ヒットを打った時も後日談として、こう語っています。

「ダッグアウトを見ると、きっと日本チームみんなが喜んでくれている。だがら、見ちゃダメだと思ったんですよね。見たら、僕もそれに応えなきゃいけない」
そして、「相手にとって一番の屈辱は何かって考えた時、それは僕が喜ぶことじゃないと思った。いつも通りしていたら、それはもうこいつには適わないと思うとしたらそれだと思った」

感情を抑えるにはどうしたらいいですか?【おしえて!イチロー先生】より

別のインタビューでは、”見たら泣いてしまう”と思ったという、だいぶ感情的な部分からの話も言っていたような気もしますが、非常に参考になる話だと思います。

個人的に、「おしえて!イチロー先生」シリーズすごい面白いんですよね。
「役割を持つ」「役割が何かを知っている」
これは人が強くなる際に、本当に大事なことなのだと思います。


安西先生から学ぶ”指導”とは

少し話を戻します。”スラムダンク”における湘北高校の指導者は、安西光義先生。
数々の名言や、そのキャラクターから”スラムダンク”の中でも本当に人気の高い監督・指導者です。誰しも一つは、作中に登場してきた”名言”の一つはご存じではないでしょうか?

その中で、私は作中の最後で激戦となる”山王工業”戦の中で、指導者として本当に素晴らしいコメントがあるなぁと感じているものがあります。

桜木君がこのチームにリバウンドとガッツを加えてくれた
宮城君がスピードと感性
三井君はかつて混乱を ほっほっ… のちに知性ととっておきの飛び道具を 流川君は爆発力と勝利への意志
赤木君と小暮君がずっと支えてきた土台の上に 

これだけのものが加わった それが湘北だ

『スラムダンク』より

スポーツは、メンタル面と技術、いわゆる”心技体”がかみ合った時に本当に”強さ”が出てくるものなのだと思います。

この声掛けには、指導期間としては赤木・小暮以外の他の4人は、実質的には約半年間(桜木以外は、直接指導している描写はほとんどありませんが)の間で、「どれだけ選手(生徒)を見ていたか」という重みも感じます。
これ選手側はどう感じるでしょうね。
私は、ここに自身の”強み”と”役割”を言語化してくれた!ということから、更に何をすればよいかが明確になる、奮い立つ気持ちになるかと思います。

特にこの声掛けのうまさは、技術と精神の両方を必ず入れているところです。
桜木:リバウンド(技術) と ガッツ(精神)
宮城:スピード(技術) と 感性(精神)
三井:知性(精神) と とっておきの飛び道具(技術)
流川:爆発力(技術) と 勝利への意思(精神)
※個人的解釈ですが、
「とっておきの飛び道具」は、スリーポイントシューターとしての力。
「爆発力」は試合の流れを左右するほどの、得点力(ポイントゲッター)。
ということで技術としています。

ここに、私は安西先生の「言葉の指導」の力強さを感じています。
言葉には、人を動かす力がある。
※こうした台詞を考え抜ける作者の井上先生がすごいのだとは思いますが。

こうした観点で見たときに、実はあの名台詞にも意図があるのではという観点でもう一度改めて、読み直してみたのです。


名台詞「あきらめたら、そこで試合終了」を別の視点から

さて皆さん、ここで”スラムダンク”で一番といってもいい有名な名台詞
「あきらめたら、そこで試合終了」
は、作中のどこで登場するでしょうか?

作中で2回登場しています。

1つは、三井の中学時代の回想シーンで登場しています。舞台は中学の県大会決勝、三井が所属するチームが残り数秒でかなり不利な状況にあり、彼ももう勝てないとあきらめかけていました。そこで安西先生が声をかけているシーンです。

そして、もう1つは、先述した山王工業戦です。この試合で湘北高校は20点差という絶望的な状況になりますが、そんな中なんと安西先生はベンチに控えさせた桜木に「私だけかね…? まだ勝てると思ってるのは…」と投げかけ、台詞を発しているのです。

私は、ここに実は同じセリフでも
”使い方の違い”
そして、作者の井上先生がそのように考えていたかはわかりませんが、
”言葉の持つ力を追い求めた”
2回の登場だったのではないかと考えています。

※是非、原作をお持ちの方はご覧ください。

1回目のシーンと、2回目のシーンは、実は言葉が若干違います。
「あきらめたら、そこで試合終了だよ」

「あきらめたら、そこで試合終了ですよ…?」
なのです。

「…?」に込められた意味。そして使わなかった意味。
これが言葉を大事にするポイントなのだと思います。

1回目は、試合中の三井が諦めかけて、そしてもはや心が折れかけている状態。つまり今の彼には「激励」「奮い立たせる」、そして促したい思いは「諦めない気持ち」
ここで指導者は、確固たる想いをもって「メッセージ」を伝えるということが必要になるのだという意志が読み取れます。

しかし2回目は、試合中、絶望的な状況とはいえ、ベンチに控えさせた桜木に対して、まずは試合の状況を眺めさせ、まずは落ち着いて状況判断させています。その上で、彼に自身の想い「勝利に対する想い」を伝えたうえで、「…?」に相手に「考えてほしい」という想いを伝えています。


「あきらめたら、そこで試合終了ですよ…?」の後に、桜木は何を感じ取ったのでしょうか?例えば、
(そう思わないか?)
(だから、私はまだあきらめていないんだよ)
(だから、まだ試合は終わっていないんだよ)
(さて、君はどうおもう?)
も挙げられますかね?皆さんはどう思いますか?

何か色々感じ取れそうですが、私には「…?」だけで何を考えてほしいかというつまり「激励」ではなく、「成長を促す問いかけ」をしているように感じ取れるのです。

その後、桜木は”俺の出番はまだか、早く出せー”と奮起していますが、何をすべきかを「自身で見つけた」立ち振る舞いをしています。
ここのポイントは、あえて「…?」にしているところです。

言い切りの形にしていたら、果たしてどうでしょう?
逆に、三井のところで「…?」をつけていたらどうでしょう。

言葉・記号の持つ力。これを大事にしていきたい。
それを考えさせてくれる教材としても、これからも”スラムダンク”を愛し続けることと思います。

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