歪みのはじまり5【完結】〜人間ピラミッド後編〜
卒業間際、僕はさくらちゃんにメールで告白をした。
『好きです。
付き合ってください。』
『ごめんなさい。
でもこれからも友達でいようね。』
あまり喋ったこともなかったので、当然の結果だった。
しかしあの日の放課後や、テストを踏み汚された日の彼女を思うと、メールの文章は優しく感じた。
テストを踏み汚されても、メールで振られても、彼女を嫌いになることは出来なかったー
大人になった今、卒業アルバムを見返した。
そこには運動会で行った全員ピラミッドの写真があった。
背が低いさくらちゃんは、上から二段目のところにいた。
それに比べて僕は、写真にも映らないところで彼女たちの土台になっていたのを思い出した。
『何もかも負けていたな』と、幼き自分を哀れんだー
前回までのあらすじ
行儀良く育った僕は、教室の椅子を踏みつける彼女たちを許せなかった。
椅子をはじめに踏み始めたなるみちゃん。
僕の椅子を踏みつけて、言い負かしてきたななみちゃん。
そして僕のテストを踏み汚したさくらちゃん。
『汚される側の気持ち』を分らせたかった僕は、彼女たちに必死に抗っていた。
ある日、体育の授業で『全員ピラミッド』の練習が行われた。
それは90人近い同級生全員でピラミッドを作るというものだった。
背が高かった僕は、最下段の中央(一番負担のかかる場所)に配置され、四つん這いで待機することを余儀無くされた。
その配置は最悪で、前を向くとななみちゃんにはお尻を向けられ、なるみちゃんには踏まれ続けてしまう位置だった。
よりによって彼女たちに屈辱を受けた僕は、本番まであと1回以上は同じ屈辱を受けることに絶望していた…
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