エンパブリックが取り組む「参加型イベント」のつくり方
エンパブリックでは、東京都福祉局主催「東京ホームタウンプロジェクト」に9年間関わってきました。
最終年度となる2023年度は、「住民の参加を促すイベントを開催しよう」をテーマに公開講座と連続講座を行いました。
連続講座では11地域の生活支援コーディネーターの皆さまと共に学び合ってきました。
こんにちは!!エンパブリックスタッフの萩元直樹です。
ホームタウンプロジェクトを担当して2年目が終わろうとしています。
本事業を通して、たくさんの方と出会ってきました。
共通しているのは「地域づくりの当事者」としての姿勢でした。
私は、福祉からはじまる地域づくりは、まさに暮らしの「福=しあわせ」「祉=さいわい」を考え続ける活動だと考えています。
だから、本当はみんなが当事者。
でも、「困っているご高齢な方や障がいのある方のためだけの福祉」「私はまだ関係ない」などという偏見も少なくはありません。
地域福祉を担う専門職である「生活支援コーディネーター」の皆さんは、役場や社会福祉協議会、地域包括支援センターなどに配置されています。
「地域をより良くしていきましょう」「みんなで話し合いましょう」という気持ちで活動されています。
とはいえ、地域住民が協力し合う関係性を作っていくのはとても大変です。
そこで、話し合いや活動などをひっくるめて「イベント」として、それを「参加型」で実践するにはどのようにしたらよいか? そのポイントは? といったことを学び合う連続講座を2023年度に開講しました。
その情報量はとてもたくさんですので、本noteでは、私の視点で特に大切だと思ったポイントに絞ってお伝えしたいと思います。
連続講座からの学び
「参加型イベント開催のための講座」と題して全6回行いました。
チラシにもあるように
STEP1 イベントを企画する
STEP2 イベントを運営する
STEP3 実践のふりかえり
というプログラムです。
参加者の多くが、本講座の学びを活かしつつ、この期間中に参加型イベントを開催しました。
当初、参加者の多くがこのような問題を抱えていました。
足りないのは知識ではなく、できる!体験
地域住民の皆さんに対して「まちづくりへの参加」を促すために、あなただったらどうしますか?
❶まちづくりの知識を提供する
❷有名人の体験談の講演で意識を高める
・・・といった手段は良くあると思います。
大規模な集客もできるかもしれません。
しかし、こうなってはいませんか?
知識や意識を高めることは、もちろん大切。必要なことです。
しかし、「自分自身と結びつけて考える」体験がないと他人事のままとなってしまいます。
「自分にもできた」「自分にもできそう」と思えないと、行動につながりません。つまり、状態や行動の変化・変容につながらないのです。
でも、本当はイベントを通して、状態や行動の変化・変容を生み出すことはできます。だから、イベントを「参加型」にしていくことが欠かせないのです。
事例で考える「高齢者のサロンを広げる」
例えば、自治体が、地域のニーズ分析から「サロンを広げる」と決定しました。
生活支援コーディネーターが「自治体のニーズ分析」を伝え、住民に「サロンをしましょう」と声をかけましたが、参加者は動きませんでした。
参加者からは、こんな声があがりました。
「このまちでは難しいのではないか?」
「今の活動で忙しい」
「持ち帰っても反対が出そうで、うちでは無理」
この場合、共有していく必要があるのは、具体的な地域のケースや声の紹介を通して、「今、このまちで求められ、自分にとっても必要になる」ということです。
事例、見学や体験などを通して、「自分たちにできることがある」「自分たちならできそう」と自分で「できる」と認識し、自分で決めるから動き出します。
他人事から自分事へのプロセス
地域の課題や地域活動について、最初は多くの人が他人事です。
そのため、
❶ 何が起きているのか、現状を共有・理解し
❷ なぜ必要なのか、自分なりの理由で納得し(説得とは違います)
➌ 自分なりの考え、好み、工夫を話すことができ
❹ それを専門家・活動家が聴き、評価してくれ
❺ 「自分もできそう」と思うことができ
❻ するか・しないか、決定権を委ねられた時に
❼ 「自分で決めた」と思えて、初めて動き出せる!
というようなプロセスを一つ一つ共に経ていくことが大切です。
「サロンを広げる」という結論ありきで地域住民の行動を説得するのではなく、自分事として納得し、決定権も委ねられているからこそ、活動は持続します。たとえ説得して立上げを無理やり成功させたとしても、なかなか持続することはないと思います。
自ら気づくから、変化が起こります。
イベントを参加型にすることで、「なるほど、こうしたらいいのか」「こう考えたらいいのか」という気づきを得て、自分でも「やってみよう!」「続けてみよう!」「やり方を変えてみよう!」といった自分のプロアクティブなテーマを持ち帰って貰えます。
参加型イベント
では、そんな体験を生み出すことのできる「参加型のイベント」ってどう企画するのでしょうか?
連続講座では「ワークショップデザインシート」を使って、考え方を整理しました。
また、❶事前プログラム ❷コア・プログラム ❸ふりかえりプログラムの3STEPで「参加型プログラム」を考える練習を行いました。
多くの担当者が悩みを抱えている「広報」についても、広報の考え方、伝わる広報、チラシのつくり方、情報が届くルート等々について一緒に考え合いました。
特に大切なことは、案内を見た対象者が「私のこと言っている?」と思うように、参加者の共感を呼ぶ開催目的を主催者視点ではなく参加者視点で考えてみることです。
生活支援コーディネーターは、場づくりを担っています。そのときに、ファシリテーションのスキルも必要になってきます。そこで、ファシリテーターとして大切なことについても、多くの時間をかけて学び合いました。
ここでは、7つのコツを紹介します。
❶ 何のために行うのか、どう進めるのか、ルールは何か、最初に共有する
→途中で「反乱者」が出てきた時も、先にルールを伝えておくと対応しやすい
❷ 最初は「経験したこと」から話してもらう
❸ うなずく、書くなど、受けとめているサインを出す
❹ 各意見の言葉(内容)+なぜそう言うのか(文脈)を考える
❺ 紙などに書き、話の構造を確認・共有しながら進める
❻ 出ている意見を使って展開する
❼ 迷ったら、ゴールを思い起こす
少しでもご参考にしていただければ幸いです。
もっともっと向上!イベントの可能性
地域づくりにおける参加型イベントをより良くデザインしていくためには、たくさんの知識と体験が必要となります。
実際に、これからイベントを参加型にしていきたい想いのある担当者をエンパブリックでは熱くサポートしております。
● 現状、参加者は、どのような課題を抱えているか?
● 対話を通して、参加者にどう変化してほしいのか?
● 参加者は、なぜ日常で話し(参加し)にくいのか?
● 参加者の不安を解消し、知識・経験・立場の違いを補うために何が必要?
→ 事前プログラムに反映されているか?
● 対話に参加することで、参加者同士で、どのような相互作用(化学反応)を起こしたいのか?
● より深い相互作用を起こしやすくする工夫は?
● 気づきを持ち帰るために、どのようにふりかえるか?
このようなことを考え続けて、イベントにたくさんの可能性を作り出していきましょう!
「人がつながる、まちが変わる。東京ホームタウンプロジェクト